逆転裁判! 病院敗訴の鍵は『診断的治療』にあった!

日本の医療訴訟における患者側の勝訴率はわずか20%と言われています。

 

そんな医療訴訟で、「(行列の出来る法律相談所でお馴染みの)北村弁護士が一つの家族と3年にわたって繰り広げた裁判」を金スマで放送していて、興味深かったので記事にします。

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依頼者である女性の話

 

一人の女性が「病院を相手に裁判を起こしたい」と北村弁護士の事務所へ訪れました。

その女性の話は以下になります。

 

ある日、夫が呼吸困難に陥り、救急搬送された。

 

※夫は救急搬送される半年前に喘息と診断されて、喘息の薬を飲んでいた。

 

※しかし、一向に(薬の)効果がなかったことや、そもそも症状が軽度であった事から薬を飲むのを止めており、病院にも通わず症状を放置していた。

 

救急隊員に上記の既往を話したところ、それを搬送先の主治医にも伝えてくれた。

 

主治医は「気管支喘息」と診断し、女性(妻)には「2-3日入院すれば良くなる」との説明がなされた。

 

しかし、入院した翌日に容体が急変し、入院から3日後に呼吸不全による心肺停止、その後一命は取り留めたものの「遷延性意識障害」と診断され、二度と意識を取り戻すことはなかった。

 

そして、その後に以下の事実が判明したことが医師より告げられた。

 

症状の原因は気管支喘息ではかった。

実は、良性の腫瘍が気道を塞いでいたことで症状が起こっていた

 

※後述する裁判では、腫瘍が原因で呼吸苦、更には気道を塞いでしまうことで脳への酸素供給が不足が起こり、これが遅延性意識障害に繋がったと解釈された。

 

良性の腫瘍なため、切除すれば夫は遅延性意識障害を起こすことはありませんでした。

 

にもかかわらず、腫瘍の事実を見逃し、気管支喘息の治療に終始したことが死亡の原因であり、つまりは病院の医療ミスだと妻は考えたのです。

 

これが、北村弁護士のもとに女性(妻)が訪れた理由になります。

 

 

医師も最善は尽くしたはずでは?

 

なぜ医師は良性腫瘍だと気付かなかったのでしょう?

 

あるいは、なぜ早々と気管支喘息と診断してしまったのでしょうか?

 

もしかすると皆さんは、医師が気管支喘息と診断した理由を、以下のように考えたかもしれません。

 

主治医は、救急隊員より気管支喘息の既往を告げられていた。

 

しかも、症状(呼吸困難)は喘息の発作としてあり得る話だ。

 

だから、気管支喘息と思いこんでしまったのではないか。

 

確かに、「問診」と「症状の確認」によって「この症状は気管支喘息が原因が可能性が高い」と臨床推論した可能性は大いにあります。

 

しかも、主治医はそれだけで気管支喘息と診断したわけではないようです。

 

つまりは、以下の検査も実施していたことが番組で示されました。

  • 胸部のX線検査
  • CTスキャン

 

そして、これらの検査でも「喘息以外が原因な可能性」を発見するに至らず、これも「気管支喘息」という診断を後押ししたとされています。

 

ここまでの話を聞いて皆さんはどう思いましたか?

 

私は以下の様に思いました。

 

『医師は誤診をしてしまった。
しかし、最善は尽くしたのではないだろうか?』

 

 

病院との対決

 

北村弁護士が病院と争うにあたって争点にしたのは以下の点です。

 

「なぜ原因は喘息ではないのに、喘息と診断したのか。
喘息と診断した根拠はなんだったのか?」

 

そして、実際に裁判が始まってみると、医師の撮影したCT画像に「かすかに腫瘍が映っていたこと」が判明しました。

 

つまり、医師がCT画像の腫瘍に気づいていれば、この悲劇は起こらなかったということになり、この情報は北村弁護士にとって追い風となりそうに思われました。

 

一般論として良性の腫瘍で呼吸苦であれば、その腫瘍を切除すれば良いだけであり、単純明快な治療で事足りる病気であったといえます。

 

従って、家族が「なぜ、夫の死を未然に防げなかったのか!」と憤る気持ちは当然と言えます。

 

ですが結局この事実は、以下の理由でと追及材料にとはなり得ませんでした。

 

  • 腫瘍が小さすぎて見落としていても仕方がないとの解釈もできるレベルであった。
  • この腫瘍自体が珍しいものであり、発見できなくても無理はないと解釈できるレベルであった。

 

 

つまり、画像所見を見落としていたことを医療ミスに繋げるには無理があるということが分かってきました。

 

そして、私も医療従事者として病院で働く人間として、100%ミスのない人間がおらず、「人を救いたい」という気持ちで患者と向き合っていたにもかかわらず患者に訴えられるというケースも「よくある話だ」と思い同情してしまう側面もあります(もちろんご家族の気持ちも痛いほどわかりますし、同じ立場なら物凄く憤っているとは思いますが・・・)。

 

そして、病院側も「適正な検査をした」「異常には気付くことができなかったが医療ミスと呼べる類のものではない」という事で北村弁護士と徹底抗戦の構えを見せていくこととなります。

 

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主治医の見落とし

 

ここまで読んできて、あなたが弁護士であれば裁判に勝てると思うでしょうか?

 

重複しますが、私は家族の気持ちも重々分かる反面、見落としなく100%確実な診断を下し続けることを至上命題とされる医師に同情する気持ちもあったりします。

 

医師も人間なので見落とすこともあり得ます。

 

それが、今回のようなマニアックな症例で、尚且つ画像所見もハッキリとしていないとすれば尚更です。

 

そして北村弁護士は悩み続けることとなり、そのまま敗訴の一歩手前まで追いやられてしまいます。

 

ですが最後の最後に、「主治医が犯していた重大なミス」に気付き、優勢・劣性の立場は逆転することとなります。

 

そして、「主治医が犯した重大なミス」のキーワードこそが、以前の記事で記載した『診断的治療』となります。

 

以下を読み進める前に、是非こちらを参照ください。

 

診断的治療と試験的治療

 

 

逆転裁判! 主治医が見落とした重大なミスとは?

 

・・・・話は、夫が救急搬送された日に遡ります。

 

主治医は既往歴を含めた問診、画像所見などから「気管支喘息」と診断しました。

 

そして、当然のことながら「気管支喘息の治療」を開始します。

 

つまりは「気管支拡張薬」を投与したということになります。

 

そして投与し、ての経過は克明にカルテに記述されてあり、そのカルテからは薬物投与により改善されるはずのSPO2が何ら改善されていなかったことが読み取れるものでした。

 

つまり主治医は、「気管支拡張薬」を治療として用いただけで、診断的治療としては活用していなかった(あるいは治療の効果判定を怠っていた)と表現することができます。

 

誰でもミスは起こすものです。

 

しかし、この際に医師が犯してしまったミスは「気管支喘息に特異的反応を示すはずの治療に、何ら反応を示さなかった」という研修医でも見落とすはずのない事実を見落としてしまった点にあります。

 

そして、「効果を示さない治療を、何の疑問も持たずに続けた結果である」として、北村弁護士は見事に勝利をつかむことになります。

 

 

おわりに:鑑別診断

 

この記事のおわりに、鑑別診断について記載してみます。

 

鑑別診断には2種類の方法があります。

 

①様々な情報を総合的に判断して診断を下す方法

 

②何らかの刺激を加えて、その反応で診断を下す方法

 

 

どちらが正しい、間違っているとは言えませんが、①が自身の主観や思い込みによって見当はずれな診断を下し易いのに対して、②の診断方法は①を補ってくれる非常に優秀な診断方法だと言われています。

 

そして、私たちも理学療法士・作業療法士がリハビリを提供する際は、①と②をバランス良く評価に活用していくことが求められているのではないでしょうか?

 

 

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