この記事では、肩甲帯のROMテスト(関節可動域テスト)について解説していく。
参考可動域・代償運動・制限因子などの解説をしているので参考にしてみて欲しい。
※画像引用+参考文献:日本整形外科学会および日本リハビリテーション医学会による関節可動域の表示ならびに測定法〔平成7(1995)年4月改訂〕
目次
肩甲帯伸展のROMテスト(関節可動域検査)
肩甲帯の屈曲は、上肢の前方へのリーチングや、前方での操作において重要な機能である。
肩甲帯屈曲のROMテスト(関節可動域検査)
肩甲帯屈曲の関節可動域検査(ROMテスト)について記載していく。
関節可動域検査における基本ポイントは以下の通り。
検査肢位:座位
基本軸:両側の肩峰を結ぶ線
移動軸:頭頂と肩峰を結ぶ線
参考可動域:20°
肩甲帯屈曲の代償運動
肩甲帯屈曲の代償運動は以下などが挙げられる。
・体幹の同側前方への回旋(例:右肩甲帯屈曲時の体幹左回旋)
・体幹(特に上部体幹)の前傾
前述したように、肩甲帯屈曲のROMテスト肢位は「座位」であるが、背臥位のほうが代償が限定的となる。
ただし、背臥位で他動的に肩甲帯屈曲位を保持しつつゴニオメーターを当てるのは難しい。
従って、背臥位でのROMテストでは、肩甲帯を他動的に屈曲した状態で丸めたタオルなどを隙間に挟み込むことで肩甲帯屈曲位を保持させる。
これにより、療法士はROM測定のみに専念できる。
背臥位であっても体幹回旋の代償は起こり得るし、療法士が他動的に操作する際に体幹対側側屈(右肩甲帯の屈曲であれば、体幹左回旋)が起こる場合もあるので注意する。
肩甲帯屈曲の最終域における緊張及び制限因子
肩甲帯屈曲の最終域における緊張および制限因子は以下の通り。
・胸鎖関節関節包(胸鎖関節の機能障害)
・肩鎖関節関節包(肩鎖関節の機能障害)
・肋鎖靭帯(肋鎖関節の機能障害)
・僧帽筋中部線維
・大・小菱形筋
・・・・・・・・・などなど。
肩甲帯伸展のROMテスト(関節可動域検査)
肩甲帯伸展は、後方へのリーチングや、後方での操作において重要な機能である。
肩甲帯伸展の関節可動域検査(ROMテスト)
『肩甲帯の伸展』の関節可動域について記載していく。
関節可動域検査における基本ポイントは以下の通り。
検査肢位:座位
基本軸:両側の肩峰を結ぶ線
移動軸:頭頂と肩峰を結ぶ線
参考可動域:20°
肩甲帯伸展の代償運動
肩甲帯伸展の代償運動は以下などが挙げられる。
・体幹の同側後方への回旋(例:右肩甲帯伸展時の、体幹右回旋)
・体幹(特に上部体幹)の伸展
前述したように、肩甲帯伸展のROMテスト肢位は「座位」であるが、腹臥位のほうが代償が限定的となる(この方法は、肩甲帯伸展位で隙間にタオルを挟み込むなど、肩甲帯屈曲ROMテストで紹介した方法と同じ)。
ただし、腹臥位での測定では頸部をどちらかに回旋させておかなければ苦しいこともあり、だからといって頸部回旋は頸胸移行部への回旋(つまり代償)も起こしてしまうため、あまりお勧めできない。
※例えば左肩甲帯の伸展ROMを測定する際、頸部を左回旋させた腹臥位であれば代償によって可動域は大きくなり、右回旋では可動域が小さくなる可能性がある。
従って、臨床では「背もたれ付きの椅子に腰かけてもらう」+「療法士が後方から体を押し付けること」により上部体幹伸展や回旋による代償を予防するなどの工夫がなされる。
肩甲帯伸展の最終域における制限因子
肩甲帯伸展の最終域における緊張及び制限因子は以下などが挙げられる。
・胸鎖関節関節包(胸鎖関節の機能障害)
・肩鎖関節関節包(肩鎖関関節の機能障害)
・肋鎖靭帯(肋鎖関節の機能障害)
・前鋸筋
・小胸筋
・大胸筋
・・・・・などなど。
肩甲帯の挙上のROMテスト(関節可動域検査)
肩甲帯の挙上は、上方へのリーチングや頭上での操作において重要な機能である。
肩甲帯挙上のROMテスト(関節可動域検査)
『肩甲帯の挙上』の関節可動域について記載していく。
関節可動域検査のポイントは以下の通り。
検査肢位:座位(測定は背面から行う)
基本軸:両側の肩峰を結ぶ線
移動軸:肩峰と胸骨上縁を結ぶ線
参考可動域:20°
※肩甲帯挙上における関節運動の中心軸は解剖学的には胸骨上縁ではないが、測定上の容易さから胸骨上縁が軸心となっている。
肩甲帯挙上の代償運動
肩甲帯挙上の代償運動は以下などが挙げられる。
・体幹(特に上部体幹)の反対側への側屈(例:右肩甲帯挙上時の体幹左側屈)
・体幹の同側後方への回旋(例:右肩甲帯挙上時の体幹右回旋)
前述したように、肩甲帯挙上のROMテスト肢位は「座位」であるが、背臥位のほうが代償が限定的となる(特に回旋による代償)。
背臥位で他動的に肩甲帯を挙上していき、体幹側屈が起こる時点が最大可動域と判断する。
移動軸である胸骨上縁が確認しにくく曖昧だと感じる場合はも、「背臥位で前面から測定する場合」と正確に測定し易い。
肩甲帯挙上の最終域における緊張及び制限因子
肩甲帯挙上の最終域における緊張及び制限因子は以下の通り。
・胸鎖関節関節包(胸鎖関節の機能障害)
・肩鎖関節関節包(肩鎖関節の機能障害)
・肋鎖関節(肋鎖関節の機能障害)
・僧帽筋下部線維
・前鋸筋下部線維
・広背筋
・・・・・・・などなど。
肩甲帯の下制(引き下げ)のROMテスト(関節可動域検査)
肩甲帯の下制は、下方へのリーチングや下方の身体支持ににおいて重要な機能である。
肩甲帯下制(引き下げ)のROMテスト(関節可動域検査)
『肩甲帯の下制(引き下げ)』の関節可動域について記載していく。
関節可動域検査のポイントは以下の通り。
検査肢位:座位
基本軸:両側の肩峰を結ぶ線
移動軸:肩峰と胸骨上縁を結ぶ線
参考可動域:10°
※肩甲帯挙上における関節運動の中心軸は解剖学的には胸骨上縁ではないが、測定上の容易さから胸骨上縁が軸心となっている。
肩甲帯下制(引き下げ)の代償運動
肩甲帯下制の代償運動は以下などが挙げられる。
・体幹(特に上部体幹)の同側への側屈(例:右肩甲帯下制時の体幹右側屈)
・体幹の同側前方への回旋(例:右肩甲帯下制時の体幹左回旋)
前述したように、肩甲帯下制のROMテスト肢位は「座位」であるが、背臥位のほうが代償が限定的となる(特に回旋による代償)。
背臥位で他動的に肩甲帯を下制していき、体幹側屈が起こる時点が最大可動域と判断する。
移動軸である胸骨上縁が確認しにくく曖昧だと感じる場合はも、「背臥位で前面から測定する場合」と正確に測定し易い。
肩甲帯下制(引き下げ)の最終域における緊張及び制限因子
肩甲帯下制の最終域における緊張及び制限因子は以下の通り。
・胸鎖関節関節包(胸鎖関節の機能障害)
・肩鎖関節関節包(肩鎖関節の機能障害)
・僧帽筋上部線維
・肩甲挙筋
・大・小菱形筋
・前鋸筋上部線維
・・・・・・・などなど。
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以下は、ROMテスト(関節可動域検査)の基本事項や、上肢・下肢・体幹の評価一覧を掲載した「まとめ記事」である。
各関節における詳細なROMテストへもリンクが張っているので、合わせて感らすると理解が深まると思う。