この記事では、手関節・手指のROMテスト(関節可動域テスト)について解説していく。
参考可動域・代償運動・制限因子などの解説をしているので参考にしてみて欲しい。
※画像引用+参考文献:日本整形外科学会および日本リハビリテーション医学会による関節可動域の表示ならびに測定法〔平成7(1995)年4月改訂〕
目次
手関節背屈のROMテスト(関節可動域検査)
(背屈を含めた)手関節の運動は、手指機能の「調整」における重要な機能を有する。
手関節背屈のROMテスト(関節可動域検査)
手関節背屈(=伸展)のROMテスト(関節可動域検査)について記載していく。
関節可動域検査における基本ポイントは以下の通り。
検査肢位:
座位または背臥位にて前腕回内・回外中間位・手関節軽度屈曲位(手関節の背屈時は浅指屈筋・深指屈筋・長母指屈筋などの緊張が生じるので、手指軽度屈曲位にて測定する。)
基本軸:橈骨
移動軸:第2中手骨
参考可動域:70°
※端坐位での措定の場合は、測定側の前腕を適当な高さの椅子に置くと測定しやすく、前腕回内・回外中間位を保ちやすい。
※椅子が無い場合は、上肢を体側に垂らした状態から、肘関節90°屈曲位で測定すると良い(療法士は前腕部を支持することで安定させると代償が起こりにくい)。
手関節背屈の代償動作
手関節背屈の代償動作は以下などが挙げられる。
・手関節の橈屈
・前腕の回外
※背臥位での測定であれば、肩関節の外旋も。
※前述したように「測定時に前腕を適当な高さの机などに置く方法」であれば、肩や肘、前腕を固定しやすくなる。
手関節背屈の最終域における筋緊張及び制限因子
手関節背屈の最終域における緊張及び制限因子は以下の通り。
・橈骨と手根骨の接触
・掌側の手根靭帯
・関節包掌側
・橈側手根屈筋
・尺側手根屈筋
手関節掌屈のROMテスト(関節可動域検査)
(掌屈を含めた)手関節の運動は、手指機能の「調整」における重要な機能を有する。
手関節掌屈のROMテスト(関節可動域検査)
手関節掌屈(=屈曲)のROMテスト(関節可動域検査)について記載していく。
関節可動域検査における基本ポイントは以下の通り。
検査肢位:
座位または背臥位にて前腕回内・回外中間位・手指伸展位(手関節の掌屈時は総指伸筋・長母指伸筋・示指伸筋・小指伸筋・の緊張が生じるので、手指伸展位にて測定する。)
基本軸:橈骨
移動軸:第2中手骨
参考可動域:90°
※端坐位での措定の場合は、測定側の前腕を適当な高さの椅子に置くと測定しやすく、前腕回内・回外中間位を保ちやすい。
※椅子が無い場合は、上肢を体側に垂らした状態から、肘関節90°屈曲位で測定すると良い(療法士は前腕部を支持することで安定させると代償が起こりにくい)。
手関節掌屈の代償動作
手関節掌屈の代償動作は以下などが挙げられる。
・手関節の尺屈
・前腕の回内
※背臥位での測定であれば、肩関節の内旋も。
※前述したように「測定時に前腕を適当な高さの机などに置く方法」であれば、肩や肘、前腕を固定しやすくなる。
手関節掌曲の最終域における筋緊張及び制限因子
手関節掌屈の最終域における緊張及び制限因子は以下などが挙げられる。
・背側の手根靭帯
・関節包背側
・橈側手根伸筋
・尺側手根伸筋
手関節橈屈のROMテスト(関節可動域検査)
(橈屈を含めた)手関節の運動は、手指機能の「調整」における重要な機能を有する。
手関節橈屈のROMテスト(関節可動域検査)
手関節橈屈のROMテスト(関節可動域検査)について記載していく。
関節可動域検査における基本ポイントは以下の通り。
検査肢位:座位または背臥位にて前腕回内位
基本軸:前腕中央線
移動軸:第3中手骨
参考可動域:25°
※測定前腕を適当な高さの椅子に置くと測定しやすく、前腕回内・外といった代償が伴いにくくなる。
※椅子が無い場合は、上肢を体側に垂らした状態から、肘関節90°屈曲位(+前腕回内位)で測定すると良い(療法士は前腕部を支持することで安定させると代償が起こりにくい)。
手関節橈屈の代償動作
手関節橈屈の代償動作は以下などが挙げられる。
・手関節の背屈
手関節橈屈の最終域における筋緊張及び制限因子
手関節橈屈の最終域における緊張及び制限因子は以下などが挙げられる。
・橈骨茎状突起と舟状骨の接触
・関節包尺側
・尺側側副靭帯
・尺骨手根靭帯
・背側橈骨手根靭帯
・関節包背側の緊張
手関節尺屈のROMテスト(関節可動域検査)
(尺屈を含めた)手関節の運動は、手指機能の「調整」における重要な機能を有する。
手関節尺屈のROMテスト(関節可動域検査)
手関節尺屈のROMテスト(関節可動域検査)について記載していく。
関節可動域検査における基本ポイントは以下の通り。
検査肢位:座位または背臥位にて前腕回内位
基本軸:前腕の中央線
移動軸:第3中手骨
参考可動域:55°
※測定前腕を適当な高さの椅子に置くと測定しやすく、前腕回内・外といった代償が伴いにくくなる。
※椅子が無い場合は、上肢を体側に垂らした状態から、肘関節90°屈曲位(+前腕回内位)で測定すると良い(療法士は前腕部を支持することで安定させると代償が起こりにくい)。
手関節尺屈の代償動作
手関節尺屈の代償動作は以下などが挙げられる。
・手関節の掌屈
手関節尺曲の最終域における筋緊張及び制限因子
手関節尺屈の最終域における緊張及び制限因子は以下などが挙げられる。
・橈側側副靭帯
・関節包橈側の緊張
母指の橈側外転と掌側外転
『母指の橈側外転』と『母指の掌側外転』のROMテスト(関節可動域検査)について記載していく。
そもそも橈側外転・掌側外転とはどんな運動?
母指の橈側外転(+尺側内転)と掌側外転(掌側内転)は、それぞれ以下の運動を指す。
橈側外転(+尺側内転):
手指を伸ばした状態で、頭側(水平面)からみて、手掌を尾側に向けた状態(前腕回内位)で、体軸(正中線)に向かって母指を示指から離すことを橈側外転(元に戻すことを尺側内転)と言う。
掌側外転(+掌側内転):
手指を伸ばした状態で、頭側(水平面)からみて、手掌を体側に向けた状態(前腕中間位)で、体軸(正中線)に向かって母指を示指から離すことを掌側外転(元に戻すことを掌側内転)と言う。
もう少し別の表現で記載すると以下の様になる。
母指を手掌面で示指から離す動きを橈側外転という
※示指に揃える動きを尺側内転という。
※イラストでは、示指に揃えず更に尺側へ母指が動いているが、本来の尺側内転は示指に揃える(つまり尺側内転の参考可動域は0°)。
母指を手掌から離す動きを掌側外転という。
※手掌に揃えるのを掌側内転という。
※母指の掌側内転は、単に「母指の内転」と表現されることもある。
母指の橈側外転と掌側外転のROMテスト(関節可動域検査)
母指の『橈側外転』も『掌側外転』も検査肢位・基本軸・移動軸は同様である。
・検査肢位:座位または背臥位
・基本軸:第2指
・移動軸:母指
ただし参考可動域に関しては以下の通り異なる。
・母指橈側外転⇒60°(尺側内転0°)
・母指掌側外転⇒90°(掌側内転0°)
母指の橈側外転と掌側外転の最終域における筋緊張及び制限因子
母指の橈側外転と掌側外転の最終域における筋緊張及び制限因子には以下などが挙げられる。
橈側外転における「最終域での緊張及び制限因子」:
・関節包の前部
・短母指屈筋
・母指内転筋
・母指対立筋
・第1背側骨間筋
掌側外転における「最終域での緊張及び制限因子」:
・母指と第2間にある指間腔の筋膜と皮膚の緊張
・母指内転筋
・第1背側骨間筋
母指の「MCP関節」における屈曲・伸展のROMテスト
母指の「中手指節関節(MCP)」の屈曲・伸展におけるROMテスト(関節可動域検査)について記載していく。
母指「MCP関節」のROMテストの基本ポイント
検査肢位:座位または背臥位
基本軸:第1中手骨
移動軸:第1基節骨
参考可動域:
・母指MCP屈曲⇒60°
・母指MCP伸展⇒10°
※測定時に前腕、手を適当な高さの机などに置くと、固定しやすくなる。
測定時の注意点
測定時の注意点は以下になる。
- 母指のMCP関節屈曲:
⇒母指IP関節は伸展位に保持する(深い屈曲位では長母指伸筋により制限を受ける)
⇒手関関節は中間位に保持する(深い尺屈位では、長母指伸筋や短母指伸筋により制限を受ける)
- 母指のMCP関節伸展:
⇒母指CM関節は内転位に保持する(深い外転位では長母指屈筋や短母指伸筋により制限を受ける)
⇒母指IP関節は屈曲位にする(長母指屈筋により制限を受ける)
⇒手関節は中間位に保持する(深い橈屈位では、長母指伸筋や短母指伸筋により制限を受ける)
母指「中手指節関節(MCP)」屈曲・伸展の最終域における筋緊張及び制限因子
母指の「中手指節関節(MCP)」の屈曲・伸展の最終域における筋緊張及び制限因子は以下などが挙げられる。
母指MCP『屈曲』における「最終域での緊張及び制限因子」:
・基節骨と第1中手骨掌側面の接触による骨性のもの
・関節包背側
・短母指伸筋
母指MCP『伸展』における「最終域での緊張及び制限因子」:
・関節包掌側
・掌側線維軟骨板
・短母指屈筋
母指「IP関節」における屈曲・伸展のROMテスト
母指「近位指節関関節(IP関節)」における屈曲・伸展のROMテスト(関節可動域検査)について記載していく。
母指「近位指節関関節(IP関節)」のROMテストにおける基本ポイント
検査肢位:座位または背臥位
基本軸:第1基節骨
移動軸:第1末節骨
参考可動域:
・母指IP屈曲⇒80°
・母指IP伸展⇒10°
※測定時に前腕、手を適当な高さの机などに置くと、固定しやすくなる。
測定時の注意点
測定時の注意点は以下になる。
- 母指IP関節の屈曲:
⇒手関節は中間位に保持する(深い尺屈位では、長母指伸筋により制限を受ける)
- 母指IP関節の伸展:
⇒手関節は中間位に保持する(深い橈屈位では、長母指屈筋により制限を受ける)
⇒母指関節は軽度屈曲位に保持する(強い伸展位では、長母指屈筋により制限を受ける)
母指の「IP関節」における屈曲・伸展の最終域における筋緊張及び制限因子
母指の「近位指節関関節(IP)」における屈曲・伸展の最終域における筋緊張及び制限因子は以下などが挙げられる。
母指IP『屈曲』における「最終域での緊張及び制限因子」:
・側副靭帯
・関節包背側の緊張
母指IP『伸展』における「最終域での緊張及び制限因子」:
・関節包掌側
・掌側線維軟骨版
手指(第2~5指)の屈曲・伸展
手指関節には以下の3つがある。
- 中手指節関節(MP関節)
- 近位指節関節(PIP関節)
- 遠位指節関節(DIP関節)
でもって、それぞれの手指関節(第2~5指)屈曲・伸展のROMテスト(関節可動域検査)について記載していく。
手指(第2~5指)の屈曲・伸展におけるROMテストの基本ポイント
検査肢位:
立位・座位もしくは背臥位
基本軸と移動軸:
・(第2~5指)中手指節関節(MP):屈曲・伸展の基本軸は中手骨、移動軸は基節骨。
・(第2~5指)近位指節関節(PIP):屈曲・伸展の基本軸は基節骨、移動軸は中節骨。
・(第2~5指)遠位指節関節(DIP):屈曲・伸展の基本軸は中節骨、移動軸は末節骨。
参考(正常)可動域:
・(第2~5指)中手指節関節(MP):屈曲90° 伸展45°
・(第2~5指)近位指節関節(PIP):屈曲100° 伸展0°
・(第2~5指)遠位指節関節(DIP):屈曲80° 伸展0°
測定時の注意点
測定時の注意点は以下の通り。
- (第2~5指)中手指節関節(MCP)の屈曲:
⇒手関節は中間位に保持する(深い掌屈位では、総指伸筋や示指・小指伸筋により制限を受ける)
⇒手指PIP関節・DIP関節は伸展位または軽度屈曲位に保持する(深い屈曲位では、総指伸筋や示指・小指伸筋により制限を受ける)
- (第2~5指)中手指節関節(MCP)の伸展:
⇒手関節は中間位に保持する(深い背屈位では、深指屈筋や浅指屈筋により制限を受ける)
⇒手指PIP関節・DIP関節は軽度屈曲位に保持する(深い伸展位では深指屈筋や浅指屈筋により制限を受ける)
- (第2~5指)近位指節関節(PIP)の屈曲:
⇒手関節は中間いに保持する(深い掌屈位では、総指伸筋や示指・小指伸筋により制限を受ける)
⇒手指MCP関節・DIP関節は中間位もしくは軽度軽度屈曲位に保持する(ある程度屈曲した状態だと、総指伸筋や示指・小指伸筋により制限を受ける)
- (第2~5指)近位指節関節(PIP)の伸展:
⇒手関節は中間位に保持する(深い背屈位では、深指屈筋や浅屈筋により制限を受ける)
⇒手指MCP関節・DIP関節は中間位もしくは軽度屈曲位に保持する(強い伸展位では深指屈筋や浅指屈筋により制限を受ける)
- (第2~5指)遠位指節関節(DIP)の屈曲:
⇒手関節は中間位に保持する(深い掌屈では、総指伸筋や示指・小指伸筋により制限を受ける)
⇒手指MCP関節・PIP関節は軽度屈曲位に保持する(屈曲位では、総指伸筋や示指・小指伸筋により制限を受ける)
- (第2~5指)遠位指節関節(DIP)の伸展:
⇒手関節は中間位に保持する(深い背屈では、深指屈筋や浅指屈筋により制限を受ける)
⇒手指MCP関節・PIP関節は中間位もしくは軽度屈曲位に保持する(深い伸展位では深指屈筋や浅指屈筋により制限を受ける)
※測定時に前腕、手を適当な高さの机などに置くと、固定しやすくなる。
手指(第2~5指)の屈曲・伸展 最終域における筋緊張及び制限因子
手指(第2~5指)の屈曲・伸展 最終域における筋緊張及び制限因子は以下などが挙げられる。
- 手指MCP屈曲:
⇒基節骨と中手骨掌側面の接触による骨性のもの
⇒関節包背側・側副靭帯の緊張
- 手指MCP伸展:
⇒関節包掌側・掌側線維軟骨板の緊張
- 手指PIP屈曲:
⇒中手骨と基節骨掌側面尾接触による骨性のもの
⇒関節包背側・側副靭帯の緊張
- 手指DIP屈曲:
⇒関節包背側・側副靭帯・斜支帯靭帯の緊張
手指の「外転」と「内転」
手指の「外転」と「内転」のROMテスト(関節可動域検査)について記載していく。
そもそも手指の「外転」・「内転」とはどんな運動?
手指の外転・内転は、それぞれ以下の運動を指す。
手指の外転:
手指の外転とは、第3指から遠のくような2・4・5指の動きである。
手指の内転:
手指の内転とは、第3指へ近づくような2・4・5指の動きである。
手指の「外転」と「内転」におけるROMテストの基本ポイント
手指の「外転」も「内転」も基本肢位・基本軸・移動軸は共通して以下になる。
検査肢位:座位または背臥位
基本軸:第3中手骨延線
移動軸:第2指軸・第4指軸・第5指軸
原則として手指の背側にゴニオメーターをあてる。
従って、前腕を回内して机の上に手を置くこと測定しやすい(手のひらを机に乗せる)。
「手指の外転」を評価する際は、MCP関節を伸展位に保持する(屈曲位ではMCP関節側副靭帯により制限を受ける)。
別法(ゴニオメーターによる測定以外の方法)として、「中指先端と第2・第4・第5指尖端との距離をcmで表示する」という方法もある。
ちなみに、第3指の運動(可動性)を評価したければ、橈側外転および尺側外転を行う。
関節の制限因子の補足
手関節・手指(母指も含む)関節は靭帯、筋・腱、皮膚性の要素が制限因子となり得るが、
それ以外に「関節面の破壊や変形、アライメントの不整」などの『(病的・あるいは退行変性による)骨性要素』も制限因子となり易い。
※これはほかの四肢・体幹における関節にも言えることではあるが、念のため補足しておく。
ROMテスト(関節可動域検査)の関連記事
以下は、ROMテスト(関節可動域検査)の基本事項や、上肢・下肢・体幹の評価一覧を掲載した「まとめ記事」である。
各関節における詳細なROMテストへもリンクが張っているので、合わせて感らすると理解が深まると思う。