この記事では、頸部・体幹のROMテスト(関節可動域テスト)について解説していく。
参考可動域・代償運動・制限因子などの解説しているので参考にしてみて欲しい。
※画像引用+参考文献:日本整形外科学会および日本リハビリテーション医学会による関節可動域の表示ならびに測定法〔平成7(1995)年4月改訂〕
目次
頸部屈曲のROMテスト(関節可動域検査)
頸部屈曲は、下方視野の確保において重要な機能である。
頸部屈曲のROMテスト(関節可動域検査)
頸部屈曲のROMテスト(可動域検査)について記載していく。
可動域検査における基本ポイントは以下の通り。
検査肢位:座位
基本軸:肩峰を通る床への垂直線
移動軸:耳孔と頭頂を結ぶ線
参考可動域:60°
頸部屈曲の代償動作
頸部屈曲の代償動作は以下などが挙げられる。
・体幹の前傾や屈曲
体幹が曲がっていると測定結果に影響を及ぼす。
したがって、頭・頸部を動かす際は、体をまっすぐに伸ばし(体幹を伸展させ)、頭部はまっすぐ前を見た(外耳孔と頭頂、肩峰を結ぶ線が直線になる)状態から開始する。
しかし、高齢者である場合、脊柱に構築性の変形が生じている場合も少なくなく、その場合は「外耳孔と頭頂を結ぶ線」と「肩峰を通る床への垂直線」が一致しないことも多々あり、その場合は正確な測定は難しい。
ただし、「一見すると脊柱に構築性変形が生じていそうな対象者」であっても、背臥位になってみると「外耳孔と頭頂を結ぶ線」と「肩峰を通る床への垂直線」が一致することもありる(単なる不良姿勢が自身で矯正できないだけだったケースなど)。
従って、別法として背臥位での測定が採用される場合もある(前述した、「前屈の代償」も起こりにくい)。
背臥位で行う際の基本軸は「肩峰を通る水平線」となる。
「背臥位で他動的に頸部を屈曲しつつゴニオメーターで角度を測る」というのは長めな角度計を使用したり、ある程度の技術も要するので、可能であればアシスタントに手伝ってもらうほうが良い。
頸部屈曲の最終域における緊張及び制限因子
頸部屈曲の最終域における緊張及び制限因子には以下などが挙げられる。
・頸椎椎間関節関節包
・後環椎後頭膜
・後縦靭帯、項靭帯、棘上靭帯、棘間靭帯、黄色靭帯
・頭・頸板状靭帯
・頸・胸・腰腸肋筋
・頭・頸・胸最長筋
・頭・胸棘筋
・大・小後頭直筋
・上・下頭斜筋
・頭・頸半棘筋
・多裂筋
・頸回旋筋
・頸棘間筋
・横突間筋
・・・・・などなど。
余談:ROMテストは基本的に他動運動である
脊柱に限らず、全てのROMテストは、基本的に他動運動による関節角度を評価する。
更に厳密にいうと、まずは対象者に自動運動を指示して可動域を確認しておき、そこからさらに(あるいは代償が出ないように改めて)他動運動によって測定を行う。
※他動運動の前に自動運動を実施する理由は、自動運動によってある程度ROMのあたりを付けておく(他動運動でこの程度であれば可動しても問題ないなという基準を作っておく)などのリスク管理の側面がある(もちろん、リスク管理が出来ているのであれば、最初から愛護的に他動運動で測定しても良いとはお思う)
※臨床的には、この際に最終域における『エンドフィール』や『疼痛の評価』も行う。
でもって、このまで述べてきた点が一般論なのだが、「体幹のROMテスト」は「四肢のROMテスト」よりも自動運動(対象者の協力)を得ながら進めていくことが多い。
例えば頸部屈曲であっても、端坐位で測定する場合は「療法士の他動運動による屈曲」というよりは「対象者に屈曲してもらう」といった場合が多い。
頸部伸展のROMテスト(関節可動域検査)
頸部伸展は、情報視野の確保において重要な機能である。
ただし頚部は、体幹部と比べて形態的な脆弱性があるため、とくに椎間関節への圧迫刺激、脊柱管や椎間孔の狭窄を招きやすい「伸展」を評価する際には注意したほうが良い。
※頸部神経障害の既往がある場合は、症状を増悪させてしまう可能性がるため特に注意する。
頸部伸展のROMテスト(関節可動域検査)
頸部伸展のROMテスト(可動域検査)について記載していく。
可動域検査における基本ポイントは以下の通り。
検査肢位:座位
基本軸:肩峰を通る床への垂直線
移動軸:耳孔と頭頂を結ぶ線
参考可動域:50°
頸部伸展の代償動作
頸部伸展の代償動作は以下などが挙げられる。
・体幹の後傾
・腰部前彎を伴う体幹上部の伸展
代償を抑制する別法として「背もたれ付の椅子を使用する方法」がある。
頸部伸展の最終域における緊張及び制限因子
頸部伸展の最終域における緊張及び制限因子には以下などが挙げられる。
・頸椎椎間関節関節包
・前縦靭帯
・前環椎後頭膜
・歯尖靭帯
・蓋膜
・胸鎖乳突筋
・頭・頸長筋
・前頭直筋・外側頭直筋
・舌骨筋群
・前・中・後斜角筋
・・・・・などなど。
頸部回旋のROMテスト(関節可動域検査)
頸部回旋は、側方視野の確保において重要な機能である。
頸部回旋のROMテスト(関節可動域検査)
頸部回旋のROMテスト(可動域検査)について記載していく。
可動域検査における基本ポイントは以下の通り。
検査肢位:座位
基本軸:両肩の肩峰を結ぶ線への垂直線
移動軸:鼻梁と後頭結節を結ぶ線
参考可動域:60°
体が曲がっていると測定結果に影響を及ぼす。
頭部を動かす際は、体をまつすぐに伸ばし(体幹を伸展させ)、頭部はまっすぐ前を見た(鼻梁と後頭結節を結ぶ線と、肩峰を結ぶ線が直線になる)状態から開始する。
頸部回旋の代償動作
頸部回旋の代償動作は以下などが挙げられる。
・頸部の側屈(例:頸部右回旋時の頸部右側屈)
・体幹の傾斜や側屈(例:頸部右回旋時の体幹右傾斜や右側屈)
・体幹回旋(例:頸部右回旋時の体幹右回旋)
別法として背もたれ付の椅子を使用したり、背臥位で測定することもある。
別法で測定することで、体幹におる代償を抑制した測定が可能とな理易い。
※背臥位で測定する際の基本軸は「両側の肩峰を通る水平線」となる。
頭部関節・頸椎におけるカップリングモーション(組み合わせ運動)
頚部の側屈と回旋の組み合わせ運動について補足しておく。
脊柱にはカップリングモーション(組み合わせ運動)が存在し、頸椎の側屈運動には「同側の回旋」が伴う。同様に、頸椎の回旋運動にも「同側の側屈」が伴う。
しかし一方で、上記カップリングモーションは中部・下部頸椎の話であり、上部頸椎(C0/1/2)=頭部関節におけるカップリングモーションは、反対側の組み合わせ運動が起こる。
つまり、頸部回旋の代償運動として「頸部の側屈」を挙げたが、これは「中部頸椎で過剰に代償しているのであれば同側側屈が起こる」可能性がある一方で、「頭部関節で過剰に代償しているのであれば反対側側屈が起こる」可能性がある。
※腰椎にも組み合わせ運動は存在するが、頸椎と異なり文献によって一致していない。
頸部回旋の最終域における緊張及び制限因子
頸部回旋の最終域における緊張及び制限因子には以下などが挙げられる。
・頸椎椎間関節関節包
・翼状靭帯
・前環椎後頭膜
・歯尖靭帯
・蓋膜
・黄色靭帯
・横突間靭帯
・頭・頸長筋
・前頭直筋・外側頭直筋
・前・中・後斜角筋
・胸鎖乳突筋
・頭・頸板状筋
・大・小後頭直筋
・上・下頭斜筋
・頸・胸腸肋筋
・頭・頸最長筋
・頭・頸棘筋
・頭・頸半棘筋
・多裂筋
・頸回旋筋
・頸棘間筋
・横突間筋
頸部側屈のROMテスト(関節可動域検査)
頚部は質量の大きな頭部を支持し、複数の頸椎による自由度の高い運動を発現する。
一方で、体幹部と比較して形態的な脆弱さがあり、障害発生の頻度が高い。
従って、例えば頸部神経障害の既往があるなどは場合は、症状を悪化させないためにも慎重に測定を進める必要がある。
頸部側屈のROMテスト(関節可動域検査)
頸部側屈のROMテスト(可動域検査)について記載していく。
可動域検査における基本ポイントは以下の通り。
検査肢位:座位
基本軸:第7頸椎棘突起と第1仙椎棘突起を結ぶ線
移動軸:頭頂と第7頸椎を結ぶ線
参考可動域:50°
体が曲がっていると測定結果に影響を及ぼす。
頭部を動かす際は、体をまつすぐに伸ばし(体幹を伸展させ)、頭部はまっすぐ前を見た(頭頂と第7頸椎棘突起、第1仙椎棘突起を結ぶ線が直線になる)状態から開始する。
頸部側屈の代償動作
頸部側屈の代償動作は以下などが挙げられる。
・体幹の側屈
・体幹の同側への傾斜
別法として背もたれ付の椅子を使用したり、背臥位で測定することもある。
別法で測定することで、体幹におる代償を抑制した測定が可能とな理易い。
頸部側屈の最終域における緊張及び制限因子
頸部側屈の最終域における緊張及び制限因子には以下などが挙げられる。
・頸椎椎間関節関節包
・翼状靭帯
・前縦靭帯
・前環椎後頭膜
・歯尖靭帯
・蓋膜
・黄色靭帯
・横突間靭帯
・頭長筋、頸長筋
・前頭直筋・外側頭直筋
・前・中・後斜角筋
・胸鎖乳突筋
・肩甲挙筋
・頭・頸板状筋
・大・小後頭直筋
・上・下頭斜筋
・頸腸肋筋
・頭・頸最長筋
・頭・頸棘筋
・胸腸肋筋
・頭・頸半棘筋
・多裂筋
・頸回旋筋
・頸棘間筋
・横突間筋
体幹(胸腰部)屈曲のROMテスト(関節可動域検査)
胸腰部屈曲は姿勢調節のみならず足先(床方)へのリーチにおいても重要な機能である。
体幹(胸腰部)屈曲のROMテスト(関節可動域検査)
体幹屈曲のROMテスト(可動域検査)について記載していく。
可動域検査における基本ポイントは以下の通り。
検査肢位:座位・立位または側臥位
基本軸:仙骨後面
移動軸:第1胸椎棘突起と第5腰椎棘突起を結ぶ線
参考可動域:45°
胸腰部が後湾するため、対象者の側方から「各測定軸の投影線(特にTh1とL5を結んだ投影線)」をとらえた上でゴニオメーターをセットしたうえで測定していく。
体幹(胸腰部)屈曲の代償動作
体幹屈曲の代償動作は以下などが挙げられる。
・股関節の屈曲
意外とオススメ? 側臥位での測定
※頸椎ROMテストの基本肢位が全て「座位」であったのに対して、体幹屈曲・伸展は基本肢位として側臥位もある。
側臥位での測定は、以下の様に進めていく。
①対象者には「膝を抱え込むように体を丸めて」と伝え、(頚部・下肢屈曲のも含めて)胸腰部を最大屈曲してもらう(療法士は自動介助でそれをアシストする⇒特に最終域)。
②基本軸(仙骨後面)と移動軸(Th1とL5を結んだ線)にゴニオメーターをセットして測定する。
※基本軸をしっかり確認することで、股関節屈曲による錯覚に注意する(これは側臥位のみならず、座位・立位でもいえることではあるが)。
別法:FFD(finger-floor distance)
別法としては、「立位にて床指間距離(FFD:finger-floor distance)を測定する」が挙げられる。
立位にて、体幹(胸椎部)の屈曲(前屈)していき、指先(中指先端)と床との間の距離(cm)で表示する方法だ。
測定時は以下の点に注意する。
・閉脚立位(ようは足を閉じた状態)
・指尖から降ろしたメジャーは床と垂直になるように
・測定する指尖を統一する(中指で測定するのが一般的)
「閉脚立位で測定する」という点は、記載されていない文献もあるが、測定の都度開脚幅や足尖の向きが異なっていれば測定結果にも影響が出るので「閉脚立位」に統一しておいた方が良いのではと感じる。
※メジャーを用意するのが面倒であれば、「握り拳2個文・3横指分のすき間がある」などといった感じでベースラインを引いても良い。
※とにかく、患者に現状が認識可能な指標であることが重要(筋緊張がどうのとか、関節が少し柔らかくなったとか、患者自身がピンと来ない指標は極力避ける)。
※すると『プラセボ効果(期待感)』が高まったり、能動的な指導へも傾聴してくれたり、『自己効力感の向上』に繋がったりと、好循環が生まれやすい。
FFDを「胸腰部のROM検査」として考えた場合は、「FFDが股関節の可動域も含む検査(純粋な胸腰部の検査ではない)」という点には注意しておこう。
※とくに「膝伸展位での股関節屈曲」で伸張する『ハムストリングス』の影響を受けやすいため、ハムストリングスの短縮している場合、結果に大きく反映してしまう。
※一方で、胸腰部の可動性が乏しくても、ハムストリングス(や下腿三頭筋)に問題なく股関節の可動性が十分であれば、FFDの結果も良好となってしまう。
上記のようなデメリットはあるが、胸腰部の可動性がFFDに影響を与えるのは確かなため、「腰部へのアプローチ後に、FFDに変化があるか」などと、治療の効果判定をしたい場合に一つのベースラインにはなり得る。
FFDは、徒手療法などの自己研鑽の結果を(療法士同士で)試すうえでも簡便だし重宝する。
っというのもFFDに影響を与える方法は、例えば以下なども含め無数にあり、検証をしていて楽しいと思う。
・軟部組織へのダイレクトな徒手療法(『ストレッチ』『筋膜リリース』など)
・腰部への関節モビライゼーション
・伸張される皮膚・筋膜へへキネシオテープを貼り刺激を入れる。
・AKA博田法・関節ファシリテーションなどによる(仙腸関節・L5/1などへの刺激)。
・腹筋を数回実施する(相反抑制による効果で背筋群が緩む)
・・・・・・などなど。
上記は単なるお遊びレベルの検証ではあるが(例えば腹筋などはTVで嵐の二宮さんが検証して、会場が驚いたりしていた)、身体に対する様々な見識を深めるための良い実験材料になる。
少し真面目な話に戻すと、「立位体前屈した肢位」を視診することで、股関節の硬さ、脊柱で過剰に動いている部分・逆に動きが悪い部分をザックリと把握することが出来るため、これらの情報を臨床推論に活かすことも可能である。
あるいは、腰痛治療の際の評価にも活用できる指標ではある。
例えば「腰をかがめると痛い」と訴える患者がいる場合、それが、前屈の最終域で出現するのか、前屈位から伸展方向へ戻す途中に出現するのか、といった詳細を確認することが出来る。
※座位で前屈することでも確認できるが、立位体前屈のほうが疼痛を再現しやすい(特に後者の痛みを再現しやすい)。
※いずれの痛みなのかといった情報も、臨床推論に非常に役立つ。
ROMテスト自体に話を戻すと、「立位体前屈時にテープメジャーを背部に当てて距離を測定する(椎間距離の測定)」という方法もあり、こちらはオススメできる方法である。
テープを当てるのは「第7頸椎棘突起から第1仙椎棘突起」となる。
他のROMテストのように「参考可動域」といった指標が無いのはデメリットではあるが、立位時と立位体前屈時の椎間距離を測定しておけば治療効果の判定に活用できるので、臨床的にはオススメという事になる(症例発表などでの効果判定の指標に使っている人も多い)。
体幹(胸腰部)屈曲の最終域における緊張及び制限因子
体幹屈曲の最終域における緊張及び制限因子には以下などが挙げられる。
・胸椎椎間関節関節包
・腰椎椎間関節関節包
・黄色靭帯
・後縦靭帯
・棘間靭帯
・棘状靭帯
・胸・腰腸肋筋
・胸最長筋
・多裂筋
modified schober test を補足!
体幹伸展のROMテストに移る前に、『modified schober test』を紹介しておく。
これも前述した「テープメジャーを使って関節可動域を評価する方法」なのだが以下の点が異なる。
ちなみに、腰部の屈曲のみならず伸展の測定も可能とされている。
以下は実際に測定している動画なので、こちらを観覧してもらうとイメージがわきやすい。
体幹(胸椎部)伸展のROMテスト(関節可動域検査)
体幹伸展を含めた「胸・腰部の機能」は姿勢調節や動作の根幹であるため、十分な可動域を有しているかも重要な指標となり得る。
ROMテストをする際は、腰椎伸展が「椎間関節への圧迫刺激」、「脊柱管や椎間孔の狭窄」を招きやすい点には注意する。
関連記事⇒『椎間板ヘルニアの対処方法 | 「マッケンジー法」や「腰部屈伸それぞれの長・短所」も紹介』
※要は、腰部由来の神経障害を有する(あるいは既往がある)場合は、症状を増悪させてしまう可能性がるため特に注意するということ。
関連記事⇒『脊柱管狭窄症のリハビリ(運動療法)を解説!(イラスト付き)』
体幹伸展のROMテスト(関節可動域検査)
体幹伸展のROMテスト(可動域検査)について記載していく。
可動域検査における基本ポイントは以下の通り。
検査肢位:座位・立位または側臥位
基本軸:仙骨後面
移動軸:第1胸椎棘突起と第5腰椎棘突起を結ぶ線
参考可動域:30°
腰部の前湾が増強するため、対象者の側方から「各測定軸の投影線(特にTh1とL5を結んだ投影線)」をとらえた上でゴニオメーターをセットしたうえで測定していく。
検査肢位に「座位」とあるが、実際は測定しにくい(立位と異なり腰椎伸展により後方へバランスを崩しやすく、バランスを制御するために体幹屈筋群が脱力できず最終域まで可動できない(立位であれば、屈筋群を脱力しつつの伸展が可能。)
※ただし、高齢者である場合、脊柱に構築性の変形が生じている場合も少なくなく、その場合は腰椎の前彎は消失しており、伸展方向へ最終域まで可動させるのに(本人も療法士も)努力を伴う。
※そうなってくると、高齢者では側臥位での計測の方がリラックスして測定できてよいかもしれない。
※側臥位での体幹伸展ROMテストでは、まず「なるべく体を反らすように」と指示する。次に、療法士も股関節伸展の操作に伴う連鎖を利用して骨盤・腰部への伸展させていく(高齢者では、若年者のようにキビキビと動けない人も多い)。
体幹伸展の代償動作
体幹伸展の代償動作は以下などが挙げられる。
・股関節の伸展(特に立位でのROMテスト時)
体幹伸展ROMテストの別法
ROMテストの統一見解である『日本整形外科学会および日本リハビリテーション医学会による関節可動域の表示ならびに測定法』には、「体幹屈曲におけるFFD」のような別法は体幹伸展には存在しない。
しかし、『ROM測定法−代償運動のとらえ方と制動法の理解と実践』には腹臥位によるROM検査が別法として紹介されている。
・肘を完全伸展させ(つっかえ棒の様にした状態で)腰部の緊張を抜きリラックスた状態で腰部を伸展していく(腹部を床へ落とし込んでいく)。
・腰部の伸展を伴う『骨盤前面の浮き上がり』が代償運動になるので注意する(腰背部を緊張させて伸展しようとすると、この代償が起こり易い。
・骨盤が傾左右に傾斜していないか注意する。
・純粋な『ROM検査』として考えるのではなく、『治療前後の効果判定』として考えるなら、この別法は重宝する。
・腹臥位による腰部伸展が不可能(例えば腰痛など)で「腹臥位を保つのがやっとな患者」が治療後に「腰部伸展がある程度可能となた」などといった、治療の効果判定としてのベースラインの一つに活用出来る。
・一方で、冒頭でも前述したように腰椎伸展が「椎間関節への圧迫刺激」、「脊柱管や椎間孔の狭窄」を招きやすい点には注意する。
・また、そもそも構築性な脊椎変形によって腰部の生理的前彎が消失している高齢者など、この別法が不向きな人も多い。
体幹伸展の最終域における緊張及び制限因子
体幹伸展の最終域における緊張及び制限因子には以下などが挙げられる。
・胸椎椎間関節関節包
・腰椎椎間関節関節包
・前縦靭帯
・腹直筋
・外腹斜筋
・内腹斜筋
・外肋間筋
・内肋間筋
体幹(胸椎部)回旋のROMテスト(関節可動域検査)
体幹回旋はを含めた「胸・腰部の機能」は姿勢調節や動作の根幹であるため、十分な可動域を有しているかも重要な指標となり得る。
体幹回旋のROMテスト(関節可動域検査)
体幹回旋のROMテスト(可動域検査)について記載していく。
可動域検査における基本ポイントは以下の通り。
検査肢位:座位・立位または側臥位
基本軸:仙骨後面
移動軸:第1胸椎棘突起と第5腰椎棘突起を結ぶ線
参考可動域:30°
基本軸の仙骨後面は、体幹の後傾に伴って変化するため注意する。
体が曲がっていると測定結果に影響を及ぼす。
なので、体幹を回旋する際は、体をまつすぐに伸ばした状態で、基本軸である両側の後上腸骨棘を結ぶ線と、移動軸である両側の肩峰を結ぶ線が重なる位置から開始するよう心掛ける。
体幹回旋の代償動作
体幹回旋の代償動作は以下などが挙げられる。
・座位で評価する際は、骨盤の回旋(例:体幹右回旋時に、骨盤右回旋⇒右膝より左膝の方が前方に出ているなど)
※立位で評価する際は、股関節や膝関節による代償運動にも注意する。
体幹回旋の最終域における緊張及び制限因子
体幹回旋の最終域における緊張及び制限因子には以下などが挙げられる。
・胸椎椎間関節包
・腰椎椎間関節包
・横色靭帯
・横突間靭帯
・棘間靭帯
・棘上靭帯
・外腹斜筋
・内腹斜筋
・腰方形筋
・胸腸肋筋
・腰腸肋筋
・胸最長筋
・多裂筋
・横突間筋
・内肋間筋
・外肋間筋
・・・・・など。
体幹(胸椎部)側屈のROMテスト(関節可動域検査)
体幹側屈を含めた「胸・腰部の機能」は姿勢調節や動作の根幹であるため、十分な可動域を有しているかも重要な指標となり得る。。
体幹側屈のROMテスト(関節可動域検査)
体幹側屈のROMテスト(可動域検査)について記載していく。
可動域検査における基本ポイントは以下の通り。
検査肢位:座位または立位
基本軸:
ヤコビー(Jacoby)線の中点に立てた垂直線(ヤコビー(Jacoby)線とは、左右の腸骨陵の最高点を結ぶ線のこと。第4腰椎棘突起の位置に相当することが多い。)
移動軸:第1胸椎棘突起と第5腰椎棘突起を結ぶ線
参考可動域:50°
体が曲がっていると測定結果に影響を及ぼす。
なので、体幹を回旋する際は、体をまつすぐに伸ばした状態で開始する。
体幹側屈の代償動作
「座位で体幹側屈」の代償運動は以下などが挙げられる:
・骨盤が浮く(例:体幹右側屈時に、左の骨盤が浮く)
・屈曲や伸展を伴った回旋との組み合わせも起こる。
「立位での体幹側屈」の代償運動は以下などが挙げられる:
・股関節や膝関節による代償
・屈曲や伸展を伴った回旋との組み合わせも起こる。
余談だが、「頭頸部の側屈・回旋に組み合わせ運動(カップリングモーション)が起こる」と同様に、腰椎にもカップリングモーションが起こると言われているが、頸椎と異なり統一した見解が得られていない。
※一番多い説としては「腰椎の側屈+反対側への回旋」なので、覚えたいならこれを覚えておこう。
関連記事⇒『脊柱のカップリングモーション(組み合わせ運動)について』
別法:FFD(finger-floor distance)
「体幹前屈のROMテスト」の項目でも、別法として「立位での指床間距離(FFD: finger-floor-distance)」を紹介したが、側屈の別法として採用されることもある。
別法が採用されるのは以下の理由からである。
「基本軸がJacoby線の中点に立てた垂直線であり、基本軸があいまいになりやすいため」
しかしFFD測定時は、体幹の屈曲や伸展などの代償が入りやすいため注意する。
立位体前屈のFFDと同様に、側屈のFFDも、指尖から降ろしたメジャーは床と垂直になるようにする。
体幹側屈の最終域における緊張及び制限因子
体幹側屈の最終域における緊張及び制限因子には以下などが挙げられる。
・胸椎椎間関節関節包
・腰椎椎間関節関節包
・横色靭帯
・横突間靭帯
・内腹斜筋
・腰方形筋
・肋間筋
頸部・体幹のROMテストでオススメなゴニオメーター
頚部・体幹のROMテストをする際には、基本軸・移動軸ともに長めに合わせたほうが正確なため、ゴニオメーターは長めなものを選択したほうが便利である。
ROMテスト(関節可動域検査)の関連記事
以下は、ROMテスト(関節可動域検査)の基本事項や、上肢・下肢・体幹の評価一覧を掲載した「まとめ記事」である。
各関節における詳細なROMテストへもリンクが張っているので、合わせて感らすると理解が深まると思う。