この記事では、走行(ランニング)の特徴について解説している。
走行に関して、歩行との違いも含めて整理してみてほしい。
走行と歩行の違い
走行は歩行とともに人間の移動手法の一つだが、歩行との違いは両脚支持期が消失し、同時遊脚期が出現することである。
また、地面への接地パターンは走行速度によって変化するが、高速時では前足部から接地し、踵が接地することなくそのまま蹴りだす場合もある。
※一方で長距離走のような低速時では、踵が接地して足底全体が接地する。
股関節や膝関節の矢状面上の運動の経時的な変化パターンは歩行と類似しているが、足関節では、歩行時は接地後に底屈するのに対して、歩行時は背屈して衝撃を吸収している。
走行の定義と用語の解説
走行における用語は以下などがある。
歩(ステップ)
片脚の足が地面から離れて反対側の足が接地するまでのこと。
重複歩(ストライド)
片脚の足が地面から離れ、その後接地して、再び地面から離れるまでのこと。
また、重複歩の距離を『重複歩長』と呼ぶ。
その他の用語
重複歩の時間当たりの頻度をピッチと呼ぶ。
重複歩とピッチの積が走行速度となる。
走行の用語は、歩行の用語ほど定義が確立されていない
スポーツの世界ではストライドは1歩の距離(ステップの距離)を指し、ピッチは時間あたりの歩数のことが一般的であるように、歩行の用語の定義は歩行の様に確立されていない。
例えば以下の用語が存在する。
一側下肢にフォーカスした用語
足部が接地している時期をサポートフェイズ、離地している時期をフォワードリカバリーフェイズと呼ぶ。
※それぞれの相をさらに3期に分類することもある。
両足が地面から離れている時期にフォーカスした用語
また、両足が離地している時期をノンサポートフェイズ(またはフライトピリオド)と呼ぶこともある。
ここから先は『サポートフェイズ+フォワードリカバリーフェイズ』『ノンサポートフェイズ』の用語を使って解説していく。
各フェイズにおける筋活動
短距離走の動作分析すると以下になる。
サポートフェイズ
サポートフェイズ(足部が接地している時期)は片脚の前足部の接地で始まり、踵が下がり足底全体で接地(踵が接地しない場合もある)する。
接地直後の足部は外返し運動がおこり、それに伴い下腿は内旋して膝関節は外反し、サポートフェイズ中期で足関節は最大背屈位となる。
その後、足先離地にかけて足部には内返し運動が起こり、それに伴い下腿は外旋して膝関節は内反し、足尖離地直後に足関節は最大底屈位となる。
フォワードリカバリーフェイズ
フォワードリカバリーフェイズ(両足が地上から離れている時期)では、股・膝関節が底屈して背後の足部は高く上がり、さらに股関節は屈曲を続けて膝関節も最大屈曲し、体幹より前法に位置して踵が臀部に近づく。
そこから膝関節が伸展し、再び同側の足部が接地する。
この間、上肢の動きは下肢に相反し、骨盤の回旋運動も歩行より大きい。
接地直後の足部は外返し運動がおこり、それに伴い下腿は内旋して膝関節は外反し、サポートフェイズ中期で足関節は最大背屈位となる。
ノンサポートフェイズ
次に蹴りだしに移行し、両足が地面から離れることでノンサポートフェイズ(両足が離地している時期)となる。
走行の筋活動
ここでは、走行時における筋活動として以下にフォーカスして解説していく。
大殿筋とハムストリングス
大殿筋とハムストリングスは、フォワードリカバリーフェイズの最後からサポートフェイズ初期にかけて、接地前の減速機能として活動する。
大腿四頭筋
大腿四頭筋は、歩行では遊脚終期からの活動だが、走行ではより早期のフォワードリカバリーフェイズ中間から働き、膝関節を伸展させる。
下腿三頭筋
下腿三頭筋は、歩行では衝撃吸収作用としては活動しないが、走行サポートフェイズでは遠心性収縮によって関節の背屈を制動し、サポートフェイズ後半には求心性収縮で足関節を底屈し、プッシュオフを行う。
走行時における動的アライメント
以下は走行(ランニング)時の下肢の動きとなる。
ランニング時には、上記ように距骨下関節は回外位で接地し、荷重につれて回内位となり、再び回外位となって蹴り出しを行い、衝撃の吸収と重心の移動に重要な役割を果たしている。
また、距骨下関節の回内に伴い、下腿の内旋や膝の外反が起こるため、距骨下関節の過度な回内は下肢全体のねじれの動きを強め、下腿や膝のランニング障害を生じる原因となる。
ランニング動作時の過度な回内は、脛骨の内旋運動や膝外反の応力が助長されて働き、膝へのストレスを増加させるため、いわゆる膝のランニング障害を引き起こす原因となる。
回内足は立位において、踵骨あるいは内果が内側に過度に傾いた足を指し、回外足
は逆に外側に傾いたものである。
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