この記事では、『上腕二頭筋長頭腱炎』について記載していく。

 

上腕二頭筋長頭腱とは

 

上腕二頭筋は2つの起始をもち、長い方を長頭・短い方を短頭と呼ぶ。

 

でもって、両者とも橈骨粗面・前腕屈筋腱膜に停止するが、起始部は以下の通り異なる。

 

・上腕二頭筋長頭の起始部⇒肩甲骨関節上結節・上方関節唇

・上腕二頭筋短頭の起始部⇒肩甲骨烏口突起

 

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上腕二頭筋長頭腱の解剖学的区

 

上腕二頭筋腱長頭は以下の3つに区分される。

 

①関節内部分(滑膜被膜部)

②結節間溝部分(滑膜被膜部)

③関節外部分(滑膜非被膜部)

 

 

 

  1. 関節内部分:

    上腕二頭筋長頭は、肩甲骨の関節上結節・上方関節唇より始まり、関節内部分は腱板疎部と烏口上腕靭帯の下をくぐり抜け、90°方向を変えて大結節により形成される結節間溝を下降する(90°に折り曲がっているというのは機械的ストレスが加わり易いことを意味する)。

     

  2. 結節間溝部分:

    上腕二頭筋長頭腱は滑膜が折り返った筒状の滑膜に包まれ、この滑膜に包まれた腱が関節側の滑膜との間で滑走する。

    結節間溝内では横靭帯により固定され、さらにその上方を烏口上腕靭帯や肩甲下筋が結節間溝を覆い、長頭腱の固定をより強固なものにしている。

     

  3. 関節外部分:

    広背筋と大胸筋の間を走行し、上腕中央にて短頭と合流し筋腹となり、橈骨粗面に停止する。

 

 

上腕二頭筋長頭腱の機能

 

上腕二頭筋長頭腱の機能は以下の通り。

 

・肩関節90°外旋時 ⇒外転作用(外転力を発揮)

・肩関節外転・外旋時⇒上腕骨頭を押さえつける働き

 (=支持機能(『スキャプラプレーン』も参照)

 

 

また上腕二頭筋長頭は、上方関節唇を持ち上げることでも骨頭の上方移動を抑え、関節上腕関節の安定化に寄与している。

 

上腕二頭筋長頭は上腕骨の結節間溝(大結節と小結節の間の溝)が作るトンネルを滑走し、特に外旋位での緊張が増加する(内旋位で緩む)。

~画像引用:運動療法のための 機能解剖学的触診技術 上肢

 

この様な腱の緊張も骨頭の求心性を高め、関節上腕関節の安定化に寄与する。

 

一方で、肩の運動のたびにこのトンネルから摩擦や圧迫を受ける。

 

でもって、このくり返しが続くと長頭腱は炎症・変性に陥り、痛みや運動制限を生じることがある。

 

 

上腕二頭筋腱炎

 

上腕二頭筋長頭腱が結節間溝を通過する場所で炎症が生じ、それが肩の痛み症状として発症する。

 

これを『上腕二頭筋長頭腱炎』と呼ぶ。

 

 

上腕二頭筋長頭腱炎症の原因

 

上腕二頭筋長頭腱は他の筋肉や腱と協調して、肩関節における全ての運動に関与する。

そのため、上腕二頭筋長頭腱は絶えず上腕骨骨頭から機械的な摩擦や圧縮、伸張を受けている。

この様な解剖学的特徴から、上腕二頭筋長頭腱は慢性的にストレスを受けやすく、炎症を生じやすいと考えられている。

 

上腕二頭筋長頭腱炎の好発年齢は20~40最大に多く、比較的若年層に多い疾患である(例えば、スポーツなどで頻回に上肢を挙上するなど)。

 

上腕二頭筋長頭腱炎の症状

 

上腕二頭筋長頭腱炎症の症状は以下の通り。

 

・肩の痛み

・運動制限

・中には、スポーツ活動時に「コクコク」という雑音がすると訴える人もいる。

 

 

上腕二頭筋長頭腱炎の診断

 

上腕二頭筋長頭腱炎の診断には、以下などの情報が参考にされる。

 

  • 結節間溝(二頭筋腱が通るトンネル)に限局する圧痛。

 

  • 肩関節の内外旋で肩の全面い痛みや轢音を聞き取ることが出来る(滑膜が障害され滑走が悪くなる)。

 

  • 時に長頭腱の肥厚によりインピンジメント徴候(肩を挙上していくと、肥厚した長頭腱が烏口肩峰アーチに圧迫されて痛みを認める状態)が陽性になることもある。

 

 

上腕二頭筋腱炎の特殊テスト

 

上腕二頭筋腱炎における特殊テストとしては以下が有名である。

 

スピードテスト(Speed’s test):

患側上肢を肘関節伸展位で、(療法士の肩関節伸展方向の抵抗に逆らって)肩関節屈曲させるときに生じる結節間溝に疼痛が誘発されれば上腕二頭筋長頭腱炎を疑う。

 

ヤーガソンテスト(Yergason’s test):

上腕二頭筋長頭腱炎に対する疼痛誘発テスト。

肘関節90°屈曲位で、回外運動に抵抗を加える(セラピストは回内方向へ抵抗を加える)。結節間溝部に疼痛が誘発されれば陽性と判断し、上腕二頭筋長頭腱炎を疑う。

 

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上腕二頭筋長頭腱炎に対する治療・リハビリ(理学療法・作業療法)

 

上腕二頭筋長頭腱炎の治療として、「一般的な内容」としては以下が挙げられる。

 

  • 患側上肢の安静:

    特に上肢の挙上がストレスな場合が多く、90°以上の挙上活動を行わない(ただし、基本は症状が誘発される動作を控えるという事)

 

 

 

  • リハビリ(理学療法・作業療法):

    「瘢痕化⇒腱が癒着⇒滑走しない」という経過を辿らないためにストレッチングを実施する。ただし、上腕二頭筋長頭腱炎の急性期に実施することによる疼痛増悪(感作)には注意する(反応を見極めながら実施する)。

    筋力増強訓練としてインナーマッスルを強化する(カフワイエクササイズなど)

 

 

上腕二頭筋長頭腱炎との鑑別

 

「上腕二頭筋長頭腱炎と同様な症状を呈する疾患」として、以下などが挙げられる。

 

インピンジメント症候群(厳密には疾患ではないが。。)

・肩関節周囲炎

腱板損傷

・・・・・・など。

 

 

でもって、これらと十分な鑑別(見極め)をするためには以下などの検査が必要となる。

 

  • MRI・関節鏡など

    例えばMRIでは、結節間溝部の横断面で上腕二頭筋長頭腱周囲に炎症による液の貯留がみられることもある

 

  • 上腕二頭筋長頭腱内に局所麻酔を投与して痛みが軽快すれば確定される。

    ※これは『診断的治療』と呼ばれるものに該当する。

 

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