『努力は裏切らない』という言葉は不正解。
『正しい場所』で、『正しい方向』で、『十分な量』でなされた努力であってこそ、
裏切らないのだ。
この言葉は、全力教室という番組の中で東進ハイスクールの林修先生が発した言葉で、最近までリンク先サイト「筋骨格系理学療法の世界」のトップページに掲載していたものです。
よく『努力は裏切らない』という言葉を耳にしますが、努力が実を結ぶためのキーワードとして「十分な量の努力」だけではなく、「正しい場所」「正しい方向」という点の重要性についても深く考えさせられました。
正しい場所での努力の重要性
「自分に見合った場所(正しい場所)に身を置かなければ、努力が実を結びにくい」というのは、確かにその通りだと思います。
また、そう考えると、最初の就職先を何処にするかは、今後の成長に大きく影響を及ぼす可能性があると言えます。
一般的によく言われる考えとしては「維持期ではなく、急性期・回復期で働いたほうが、クライアントの変化が十分認識できるので成長しやすい」というものがあります。
これは確かにその通りで、維持期のクライアントに対して「心身機能の改善」という点にのみに着目するなら、急性期・回復期に比べて結果をだすための難易度は高いと言えます。
そして、人間は自身へ報酬が高いほどモチベーションを維持しやすいことから考えると、「自身の努力によってクライアントが目に見えてよくなる」という報酬が得やすい急性期・回復期で働くほうが成長しやすいのではないでしょうか(あくまで心身機能のみに着目した話ではありますが)。
また、その他でよく言われる考えが「セラピストが多く在籍しており教育システムがしっかりしている場所で働いたほうが、成長しやすい」というものです。
ですが、この考えに関しては、必ずしもそうとは言えないのではと私は思っています。
確かに、大所帯であれば同期も多く、先輩たちにもフォローが受けれる体制であり、色んな意味で安心感があります。
真逆な例として、一人職場では誰からもフォローを受けれず、すべて一人で解決しなければなりません。
また、自分と同じ経験年数の人たちがどの様な成長を遂げているのかも把握しづらく、自身が他者と比べてどの程度成長できているのか不安を感じることもあるかも知れません。
しかし一方で、大所帯では「大勢の中の一人」として個性が奪われてしまうため、「自分がやりたいことにどんどん挑戦していきたい」と思っている人にはもどかしい環境だと言えるのではないでしょうか?
他のPTブログを拝見していると、「出る杭は打たれる」的な悩みであったり、「どんなに個人で素晴らしい考えを持っていて反映させようと思っても、組織が大きければ大きいほど所詮個人は歯車にすぎず、思いを反映できない」であったりが起こるようです。
私は、同期が就職する際に「大所帯で教育システムがしっかりしている」という要素を重要視している際にも、上記のように考え、少人数で自分が思うように挑戦させてもらい易い職場に就職しました。
その結果、苦労もありましたが、横一列で個性が奪われたりすることはなく、個人としての結果を出せば、個人として評価してもらえ、個人として学びたいことを学ばせてもらえる環境であることに幸運を感じています。
※最初の職場を選ぶ際は、多くは大所帯を選ぶ傾向にあります。それには上記を含めた様々なメリットを考えてのことであり、それ自体は悪いことではありません。
ですが、メリット、デメリットをあまり考えず「皆が大所帯を選んでいるから」といった安易な気持ちで選ぶ人も少なからず存在します。
これは心理学用語で『社会的証明(自分が迷ったり、自分で選択できない時に、周りの人がどう動くかで自分の行動を決めるということ。社会や世の中が証明している行動をすること)』、
経済学用語で『バンドワゴン効果(ある選択が多数に受け入れられている、流行しているという情報が流れることで、その選択への支持が一層強くなる効果)』と呼ばれています。
全てのセラピストに適した環境など存在しない
大切なのは「皆が選んでいるから自分も同じような選択をする」ではなく、だからといってこのブログに書かれている私の自由気ままな意見に耳を傾けるでもなく、「他人は他人、自分にとって成長しやすい環境とはどんな場所であろうか?」というのを冷静に考えることだと思います。
そのためには、次回掲載する「自分にとって正しい方向」とはどんな方向か、言い換えるなら「自分とはどの様な人間か」が分かっていなければなりません。
この様に自身を深く見つめ直したうえで、もしあなたが「新しい物事を始める際に、最初の一歩を踏み出しにくい性格」と感じたならば、大所帯の中に身を置いて「周囲と合わせざるをを得ない環境」を作るのは大正解かも知れません。
人は他者に簡単に感化されやすい一方で、それを現実のものとするために、「一歩踏み出す」という行為は非常にエネルギーが必要となり苦手です。
ですが、そういう性格が悪いというわけではなく、そいう性格を自身が理解しているかどうかが大切なのです。
最初の就職先だけがすべてではない
もちろん最初の就職先が全てではありません。
最初の就職先で成す目標を『短期目標』として、転職後の目標を『長期目標』として見据えるのも一つの考えと言えそうです。
ただし、本当に『短期目標』の延長上に『長期目標』がリンクされているかについては考えておいたほうが良いかもしれません。
就職したての頃、私の周囲に「介護分野で働きたいけど、まずは急性期・回復期で経験を積んでから」と考えている人が何人もいました。
確かに、急性期・回復期の経験を活かして介護分野で力を発揮する人は多いと思います。
しかし一方で、最終的な目標が介護分野での活躍であるならば、最初からその分野で切磋琢磨するほうが良いケースもあります。
「テニスで成功したいけど、最初は陸上で基礎体力をつけてから」よりも「最初からテニスしたほうが成長する」という考えが、理にかなっているのと同じです。
※事実、新人から首尾一貫と介護分野に携わっているからこその素晴らしい考えを持った人が多く存在します。
※最近は特に、医療・介護領域で目指すベクトルが違ってきており、医療分野での培われた治療的介入に固執してしまい、その人の能力が介護分野で役に立たないケースも出始めています
何度も重複した記載になってしまいますが、大切なのは全員に当てはまる正解は存在しないということです。
だからこそ周囲に流されたり、安易に一つの選択肢にとらわれるのではなく、様々な選択肢を並べてみて、自分に合った方法をじっくりと選んでいくことが大切になってきます。
転職・アルバイトのススメ
転職に話を戻すと、転職のメリットは、視野が広がることや、人生に深みが出る点だと思います。
また、「どんな場所が自分に合っているか」を知るには、今の職場と比較するものが必要です。
例えば、あたなたが「ラーメンの中で一番好きなのはトンコツ味」だとするならば、それが一番好きだと理解しているのは、「醤油ラーメン」「みそラーメン」など比較対象となるものを食べたからだと言えるでしょう。
つまり、比較対象となるものを増やすことも転職の目的になるかもしれません。
もちろん、「職場が気に食わないから」「自分には合わないから」などで何度も職を転々とするのは如何なものかと個人的には思いますが、仮にそうであったとしても「転職をしている人間にしか得られないもの」は必ずあるはずです。
ただ、転職して「こんなはずではなかった。前の職場のほうがまだマシだった」というケースも少なからず存在します。
最初に就職した職場は、比較する対象が無いため、転職して初めて前の職場の素晴らしさを再認識する場合もあるのです。
学生時代のバイト先の病院で、職場に対して愚痴ばかりこぼしていた看護師さん(資格を取って10年間同じ職場で働き続けていた)が、転職して一か月もたたないうちに元の病院へ戻ってきたのを目の当たりにしたことがあります。
どの面さげて戻れるのかと神経の図太さに驚愕したのを覚えていますが、おそらく転職して初めて10年間勤め続けた病院の良さに気づいたのだと思います。
なので、「転職を繰り返して経験を積む」という転職ありきな考えでないならば、リスクを減らす意味でも理学療法のアルバイトを副業として挑戦してみるのはどうでしょうか?
今の職場と比較する対象が見つかることで視野が広がりますし、バイト先の良い面を職場に反映させたり、バイト先での新たな人間関係に触発されて仕事に対するモチベーションが高まったりも期待できます。
上記の内容は、私自身がアルバイトをしていて実際に感じたことです。
本業をしつつ、副業にアルバイトを選択するのは大変だと思う人もいるかもしれませんが、得るものは大きいと思いますし、どうしても大変だったら辞めるという選択肢もあるため、本業を変えるよりは気が楽なのではないかと思います。
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この記事は『努力が実る3つの条件』としてシリーズで掲載しており、次の記事は以下になります。
『理学・作業療法士がするべき正しい方向での努力』とは!(あなたは 魔道士 or 武道家?)
※このシリーズの記事一覧は『「努力は裏切らない」は本当なのか? コラムにしました。』をご覧ください。