消費者庁が、頭蓋骨をイジっての小顔矯正に関して、警鐘を鳴らしている。
目次
ターゲットにされたのは一般社団法人美容整体協会
消費者庁にターゲットにされたのは「一般社団法人美容整体協会」という協会で、消費者庁のNews Releaseでは以下の様に記載されている。
消費者庁は、本日、一般社団法人美容整体協会(以下「美容整体協会」という。)に対し、景品表示法第6条の規定に基づき、措置命令(別添参照)を行いました。
美容整体協会自らが運営するウェブサイトにおいて行った「小顔矯正」と称する役務に関する表示について、景品表示法に違反する行為(表示を裏付ける合理的根拠が示されず、優良誤認に該当)が認められました。
※リンク先は記事の最後に記載
また、日本経済新聞電子版でも、この件を取り上げ、以下の様に記述している。
「矯正施術で骨格に働きかけて、小顔になれる」とホームページ(HP)で広告したのは景品表示法違反(優良誤認)にあたるとして、消費者庁は23日、一般社団法人「美容整体協会」(東京・中央)に再発防止などを求める措置命令を出した。
消費者庁によると、同協会は2011年10月ごろから、自社HPで「小顔矯正」の施術により頭蓋骨のつなぎ目を詰めれば顔を小さくできると説明。「えらの骨やほお骨に力を加え内側に入れていく」「持続性に優れた施術」などと表示した。
消費者庁は協会に表示の根拠を示すよう要請。協会は施術の前後の顔の大きさの計測データなどを提出した。これに対し同庁は「マッサージで瞬間的に小顔になることは考えられるが、骨が詰められる、持続するといった表示には合理的根拠がない」と判断した。
消費者庁のNews Releaseでは、美容整体協会が自ら運営するウェブサイトの以下の様な表現が不適切として、修正を勧告している。
- 「小顔矯正」という表現
- 「即効性と持続性に優れた施術です。」という、即自的効果のみならず持続的効果も強調したアピール
- 「小顔矯正施術は骨に働きかけて、ほうごう線を詰めるだけでなく、主にえらの骨や頬骨に優しく力を加え内側に入れていきます。いくらダイエットをしても骨格が変わらなければ小顔にも限界があります。その限界をなくして理想の輪郭を手に入れることがでるのです。」という、骨格自体が変えられることが可能だとする表現。
これらの表現に関する問題点を、消費者庁は以下の様に記載している。
例えば、以下のとおり記載し、あたかも、対象役務を受けることで頭蓋骨の縫合線が詰まるとともに、頬骨等の位置が矯正されることによって、直ちに小顔になり、かつ、それが持続するかのように示す表示をしていた
ちなみに、美容整体協会は、上記の表現における裏付けを提出する機会を設けてもらえたものの、「小顔矯正」を科学的に証明することは出来ないかったようだ。
当庁は、景品表示法第4条第2項の規定に基づき、美容整体協会に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、美容整体協会から資料が提出された。
しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。
ここでいう「科学的根拠」というのは、「何となく小顔になった気がするという、クライアントや施術者の漠然とした主観」や「施術前後の写真を撮って比較して、顔の大きさに多少の変化が起こっている」では示せたことにはならない。
広告で『いくらダイエットをしても骨格が変わらなければ小顔にも限界があります。その限界をなくして理想の輪郭を手に入れることがでるのです』などと謳っている以上は、施術前後の骨格に変化があるか、すなわちレントゲンなどの画像所見で骨格に変化が起こっているかで証明しなければならない。
理学療法における治療手技の優位性を検証するのは非常に難しい側面があるが、骨格に変化が起こせているかが証明できればよいのであれば、画像所見で簡単に証明できる。
にも関わらず、証明できなかったことを考えれば、インチキと言われていも仕方がないのかもしれない。
また、広告で小顔矯正の即効性のみならず、持続性も謳っているが、これも証明は簡単だ。
治療前後の写真のみならず、治療直後と数週間後の写真を撮影して比較すれば良いだけの話だ。
簡単に根拠を証明できる。
しかし、「持続性」の表現も不適切と指摘されている以上は、これも証明できなかったことになる。
つまりは、その場だけの効果しかなかったと言わざるを得ない。
小顔矯正を謳っている他の民間療法士にも激震か?
小顔矯正を謳って施術をしていた民間療法士(整体師など)にも、このニュースは衝撃を与えており、様々な反応が見受けられる。
小顔矯正を施術メニューから外す者もいるし、表現を多少変えて施術を継続する者もいる。
あるいは、小顔矯正自体は否定しつつも、同様な根拠に基づく自身の施術は「もっともらしい理屈」をつけて正当化させ続けようとする者もいる。
とにもかくにも、小顔矯正(あるいは頭蓋骨に過剰なほど着目した施術)をしていた民間療法士達に激震が走ったのは事実だと言える。
我々、理学療法士・作業療法士も他人ごとではない
我々、理学療法士、作業療法士も他人ごとではない。
私たちは病院で勤務している以上、これらの誇大広告を謳うなどはあり得ない。
また、クライアントと接する際に、これらの誇大広告を謳うこともあり得ない。
ただし、心の中で、今回の小顔矯正と(ブッとんだ理屈と言う意味で)類似した信念を抱きつつ施術を行っている者は存在する。
そして、これらの理学療法士・作業療法士にブッとんだ信念を植え付けてマインドコントロールしてきたセミナーでは、これら誇大広告と同様な文言が飛び交っていたりする。
少し話は前後するが、小顔矯正を謳って施術をしていた人物は、「自身は、骨格の矯正を試みている」という信念に基づく施術と「実際に施術前後で顔が多少小さくなる」という事実から、「骨格の矯正によって小顔が小さくなった」という思考に結びついてしまった可能性がある。
そうなると、実際に触診し、その人物の触診能力がいかに高度であろうと、「骨格が施術によって矯正される」という強い信念に基づく前提条件がある以上、客観的な評価が不可能となる可能性がある。
しかし、実際に骨格が矯正されているかどうかに関わらず、結果が出せている場合は、「骨格の矯正による小顔」という理屈を受講生に押し売りしてしまうこととなる。
そして受講生も高額の受講料を支払って、講師の言う事を信じて猿まねをしてしまう事となる。
「実際に効果がある」という事実のもとで、そのようなブッとんだ主張をするのは構わないが、それと並行して科学的根拠も積み上げていってほしいものである。
すると、(今回の小顔矯正と同様に)実はそれらの理屈と実際は異なるかもしれない。
しかし、その事実は治療概念を「良い方向に」軌道修正するためのきっかけになるため歓迎すべきことである。
にもかかわらず、それら都合が悪そうな検証はしたがらないのであれば、単に金儲け主義になっていると言わざるを得ない。
重複するが、今回の小顔矯正の件に関して、実際に施術前後で顔の大きさが多少変わるのであれば「もしかすると骨格が矯正されたのかもしれない」と仮説立てるのは、何ら不思議ではない。
ただし問題なのは、そこで思考停止してしまい、以降にメタ認知を働かせようとしないことだと思われる。
つまりは、自分の都合の良い解釈だけでに頼らず、「本当に骨格が矯正されたのか白黒つけたい!」「この効果は持続するのか?持続しないのだとすれば、それは何を意味しているのか?」といった点にしっかりと向き合えるかどうかが重要となってくる。
おわりに:理学療法士・作業療法士セミナーの注意点
「効果が出る」「結果出せる」などの名の下で、即自的効果のみを謳ったセミナーを開催するのは結構なことだ。
そして、その即自的効果に関して、ブッとんだ理屈を展開するのも構わない。
ただし、今回の小顔矯正の件と同様に、どれだけその理屈に科学的な裏付けが取れているのかは重要だ。
もちろん、そう簡単に裏付けが取れるものばかりではないだろう。
一方で、持続性の検証やレントゲン撮影によって容易に証明できそうなものも含まれていたりする(今回の小顔矯正のように)。
即自的効果のみをアピールし、尚且つその即自的効果が「クライアントの悩んでいる訴えとは何の関係もない変化」であるとするならば、単なる手品・パフォーマンスにすぎない。
また、クライアントの主観的症状の改善に関しては、プラシーボ効果との因果関係も検証に値すると思われる。
お金をボッたくる事ばかり考えず、徒手療法の発展のためにも、科学的な裏付けを積極的に行ってもらいたいものである。
※重複するが、それがどの様な結果を招こうとも、裏付けを行ったことによって証明された事実は貴重な情報となるはずだ
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