この記事では、マッケンジー用語の一つである『DP(Directional Preference)』について記載していく。

 

DP(Directional Preference)とは?

 

DP(Directional Preference)とは以下を指す。

 

短時間・短期間(長くて3~4日)にクライアントの状態を改善させる特定の負荷方向

 

でもってDPは、筋骨格系疾患で、主に侵害受容性要素の強い疼痛に関して示される所見である。

 

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2つの意義をDP(Directional Preference)は持っている

 

DPは以下の2つの意義がある。

 

  • DPが存在することは、Derangement syndromeであることを意味する。

 

  • DPをリハビリ(運動療法・徒手療法・日常生活指導)に活用することで、活用しないよりもはるかに高い効果が期待できる。

 

 

DPが検出できるかはリハビリ(理学療法・作業療法)で非常に重要

 

「マッケンジー法=脊柱(の中でも腰部)」なイメージが強いかもしれないが、四肢もマッケンジー法の対象である。

 

でもって、筋骨格系の問題を抱えた多くのクライアントでは、DP(状態を短時間・短期間で改善させる特定の負荷方向)が存在すると言われている。

 

例えば腰痛・頸部痛であれば70%ほどのクライアントがこの特定方向を有していると言われており、この情報は私たちに以下の点を教えてくれる。

 

  • DPが検出されれば、状態を短時間・短期間で改善させることが出来き、尚且つ長期的にもセルフマネジメントに活用できる可能性がある。

 

  • (MDTなどにより)DPの有無に着目しなければ、いつまでたっても見当違いなアプローチ、場当たり的なアプローチから抜け出せない可能性がある。

 

  • 全ての人にDPが検出される訳ではない(万能ではない)

 

重複するが、クライアントがDPを持っているかを見極めることが出来るかどうかは、リハビリ(理学療法・作業療法)を成功させるために非常に重要という事が分かる。

 

 

ちなみに、マッケンジー会報52号には以下の様な記述がある。

 

腰痛患者におけるDPとCentralisationとの関連性:

 

本研究では、DPの検出率は、Centralisationのに比べると高い検出率であった。

DPもCentralisationもどちらも比較的高い割合で認められた。

 

特に、若年者、発症から間もない患者においてはそうであった。

これらにおいては、痛み、および機能面で、短期的な予後予測因子としては有用な因子であろう。ただし、この2つは同一のものではなく分けて捉えるべきものと考えられる。

一方で高齢になるほど、発症からの期間が長い(慢性的)であるほど、DPとCentralisationの検出率は低下した。

この所見は、それまでの研究結果と同様(Werneke他2008、Aina他2004)であり、維持期に関わるセラピストは念頭に入れておく必要がある。

 

初診時に検出されたDPとCentralisationの2つの因子が、どちらのほうが、通院終了時の痛み、機能の予後因子としてより有用かを比較検証。

 

Centralisationは、これまでの研究でも示されたように、本研究においても重要な予後予測因子として認められた。

 

一方、DPは、Centralisationを伴っていなければ、機能の予後予測因子としてはあまり有用ではなかった。

 

ただし、痛みの予後因子としてはCentralisationを伴っていなくても、有用であることが示された。

 

 

マッケンジー会報52号にも興味深い記述があるので引用しておく。

 

この研究の主要テーマは、高齢者におけるcentralisationとdirectional preferenceの検出率を調査することであった。

Centralisationが重要な臨床現象であるのはこれまでの文献で十分に示されている通りである。

ただし、高齢者ではその検出率が低下する(Werneke2008)。一方で、directional preferenceは高齢者でも多く認められ、それに基づいて効果的なマネージメントを提供できる。

 

今回の研究の初期データは、それまでの研究データと一致していた。

高齢者ではcentralisationの検出率は若年者よりも低く21%であった。

ただ、directional preferenceは、多くの高齢者(87%)で検出された。

65才以上でpostural syndromeは0%であった。

興味深いことに、dysfunction syndromeも0%であった。

私個人も高齢者のdysfunctionは出会ったことは無い。

このデータは、MDTの経験が浅い臨床家にとって参考になるであろう。これまでよりずっとderangementを検出して対応できる可能性を示唆している。

 

今回の研究でメカニカルな分類は全てderangementであった。

DPは、大半は伸展方向で、少数が屈曲や側方であった。

 

我々の研究では、その他にも被験者の画像データを収集し、画像所見と分類の関連性を検証した。

これまでの知見と同様に、患者のマネージメントと画像所見との間に定量的な関連性は殆ど見いだされなかった。むしろ、画像所見は、患者の評価と治療を行うにあたって臨床家にマイナスの影響(バイアス)を与える恐れがある。

 

例えば、今回の研究の中で画像上で狭窄症と判定された患者が47人もいた。

もし、理学療法士がこの診断名がついた患者を担当したとすれば、屈曲主体のプログラムを組んで、伸展負荷を試すことは避けるであろう。

しかし、今回の47名中、38%はderangementと分類され、33名(70%)は伸展がDPであった。

私や同僚の臨床経験では、伸展がDPの患者で屈曲エクササイズでは状態が悪化しない高齢者は珍しくない。

このことは臨床化をミスリードしている可能性がある。

 

上記の引用で『centralisation』という用語が多く登場したが、この用語に関しては以下の記事で深堀解説している。

※この用語は、マッケンジー用語ではあるものの(DP:directional preference)よりは他のセラピストにも浸透している用語なので、合わせて観覧することをお勧めする。

 

⇒『セントラライゼーションとペリフェラライゼーションを解説!

 

 

DPを検出する際のポイント

 

DPのザックリとした例を出すと、以下になる。

 

  • 腰痛が「腰椎屈曲」という刺激によって改善されれば「DPは腰部屈曲である」ということになる

 

 

 

マッケンジー法でDPを見極める際のポイント

 

重複するが、クライアントがDPを有しているか、有していないかを見極めていくことになる。

 

でもって、DPを検出する上で重要なポイントは以下になる。

 

  • 最終域(ER:end rang)まで十分に動かせているかという考え

    ※ERまで十分動かせているかどうかで得られる反応に差が出てしまう。

    ※したがって、負荷の方向が正しかったとしてもERまで動かせていないためにDPが検出されない場合がある。

 

  • 刺激を入れた際に、痛みが出現する方向であってもDPな可能性があるという『パラドックス オブ ムーブメント』の考え。

    関連記事⇒『パラドックス オブ ムーブメント』

 

 

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DPが検出されたなら、その方向に従ってのマネージメントが大切

 

わざわざ記載する必要はないかもしれないが、もし仮にDP(短時間・短期間にクライアントの状態を改善させる特定の負荷方向)が検出されたなら、その負荷方向(DP)に従ってマネージメントをすることが大切である。

 

この様に、「加えた刺激によって良い反応が得られたらその情報を活用する(得られなければ活用しない)」といった考えは『反応重視型な学派(マッケンジー法・マリガンコンセプト・メイトランドなど)』の特徴である。

 

また、これらの学派の特徴は、クリニカルリーズニング(臨床推論)をするにあたって、「原因となっている組織を特定すること」には重きを置かず、あくまで「クライアントから得られた情報を頼りにリハビリ(理学療法・作業療法)を組み立てていく」という点が特徴的となる。

関連記事⇒『海外における反応重視型な学派の特徴

 

なので、例えばDPが検出されたとして、では何が痛み(や可動域制限)の原因だったのかなどを細かく推論したりせず、(重複するが)「得られた反応をシンプルに活用する」というスタンスを取っている。

 

※ちなみに、反応重視型とは異なったスタンスをとり、単純に痛みや可動域制限を負う事を批判的に捉える学派も存在する。

関連記事⇒『海外における総合型な学派の特徴

 

 

DPに従ってマネージメントしたほうが良いという説がある

 

前述したように様々な考えがあるのだが、この記事はマッケンジー法によるクライアントから返ってきた藩王を重視して治療を組み立てていくコンセプト」なため、重要な反応である『DP』に従ってマネージメントしたほうが良いというスタンスで記載している。

 

でもって、DPに従ってマネージメントした場合は、そうしなかった場合に比べて痛みと機能の改善が劇的に優れているとされており、例えば『書籍:この動きを習慣にすれば腰痛は自分で治せる! 』には以下のような記述がある。

 

この研究は、アメリカ、カナダ、ドイツ、クエート、イギリスの理学療法クリニックが参加して行われた治験です。

 

クリニックに来院した腰痛患者(三一二名)をマッケンジー法の診断で検査を行いました。

そのうち、症状を短時間で改善させる運動方向(DP)があった患者さんは二三○名(七四パーセント)でした。

 

その二三○名を三つのグループにくじ引きで分けました。

 

第一グループは、DPと同じ方向へのエクササイズと姿勢を実行してもらいました。

第二グループは、DPとは逆のエクササイズと姿勢を指導しました。

第三グループは、DPとは無関係のエクササイズを行ってもらいました。

 

二週間後の結果は、第一グループが、ほかの二グループを圧倒していました。

二週間前よりも改善している割合が、第一グループが九五パーセント、第二グループが二三パーセント、第三グループが四二パーセントでした。

 

しかも、第一グループでは、処方されたプログラムを行って悪化した人は一人もいませんでした。

 

一方の二グループは、悪化した人がそれぞれ二○パーセントほどいました。

 

動きの方向と痛みとの関連性についてきちんと検査をして、DPを持っている人は、そのDPの方向にしっかりとエクササイズと姿勢を行ってもらうことが非常に重要であることが示された治験です。

 

当たり前と言ってしまえば、それまでだが、評価の段階で好反応を示す刺激が見つかった場合は、その刺激をリハビリ(理学療法・作業療法)に活用していくほうが良い。

 

※当然『リハビリ(理学療法・作業療法)にはセルフエクササイズや日常生活指導も含まれている。

 

 

終わりに

 

DPに従ってマネージメントした場合は、そうしなかった場合に比べて、痛みと機能の改善が劇的に優れている。

 

でもって、この情報は、DPの見極めがいかに重要であるかを示しており、リハビリ(理学療法・作業療法)における評価や、そこから導き出される臨床推論(この情報をどう活用するか)の重要性も示している。