この記事では、脊柱の痛み(腰痛・頸部痛など)の関連した専門用語である『セントラライゼーション』と『ペリフェラライゼーション』について記載していく。

 

セントラライゼーション・ペリフェラライゼーションとは

 

まずは、各用語の意味について記載していく。

 

セントラライゼーション(Centralization)とは

 

セントラライゼーションとは『(痛みの)中央化』とも呼ばれ、以下を指す。

 

負荷を加えた結果として、痛みの分布が体幹正中部に向かって収束してくる現象。

 

※腰痛や腰椎由来の下肢痛、頚部痛や頚椎由来の上肢痛、背部痛や胸椎由来の胸部痛において観察される現象

 

 

Centralizatonとは理学療法士のロビンマッケンジーによって発見されたと言われており、(後述するように)この現象を引き出す負荷は痛みや活動障害を改善させるものであることを示唆する

 

Centralisationとは、メカニカルな負荷を加えた結果として、痛みの部位や範囲が、末梢から脊柱に向かって移動、収束された現象をいう。

 

この現象をMcKenzieが発見したのは1956年であった。

 

1ヶ月半ほど前から坐骨神経痛ということで腰部から下肢にかけて痛みが続いており、当時の常識的治療(物理療法やマッサージ)を3週間行っていたにもかかわらず改善していなかった患者が、全くの偶然で腰椎持続伸展を行った結果、2日で痛みが解消してしまった。この僅か2日で痛みが解消したプロセスは次のようであった。

 

腰部から下肢まで出ていた痛みが、腰椎持続伸展によって、下肢痛が消失をした。

 

ただし、腰部の痛みは増強していた。

 

翌日、同じように腰椎持続伸展を行ったところ、残っていた腰部の痛みもすっかり解消した。

つまり腰椎の持続伸展負荷を行った結果として、腰部から下肢にかけて出ていた痛みがまるで腰部に収束し、最終的には全ての痛みが消失をしたのである。

 

このように、メカニカルな負荷を加えた結果として、痛みの部位や分布が脊柱方向に収束する現象をCentralizationと呼ぶ。

 

~『徒手理学療法 第14巻 第2号』より引用~

 

 

ペリフェラライゼーション(Peripheralization)とは

 

ペリフェラライゼーションとは『(痛みの)遠位化』とも呼ばれ、セントラライゼーションとは逆の現象で以下を指す。

 

負荷を加えた結果として、痛みの分布が体幹正中部からより末梢に向かって広がる現象。

 

※Centralizationと同様に、Peripheralizationも脊椎由来の痛みで観察される。

 

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セントラライゼーション・ペリフェラライゼーションの意義

 

各現象の意義は以下になる。

 

セントラライゼーション(Centralisation)の意義:

セントラライゼーションを引き出す負荷は、痛みや活動障害を改善させるものであることを示唆する。

また、この現象が起こせる対象者は、起こせない対象者よりも予後が良い。

 

 

ペリフェラライゼーション(Peripheralisation)の意義:

ペリフェラライゼーションを引き起こす負荷は、そのタイミングでは、それ以上続けてはならない。

 

画像引用:腰痛がなかなかよくならない時の体操メニュー

 

体操については以下も参照

⇒『腰痛に効く?!マッケンジー体操を紹介!!

 

 

痛みの程度のみならず、痛みの分布や移動にも注視する

 

セントラライゼーション、ペリフェラライゼーションともに、「痛みの程度」ではなく「痛み分布の変化」に着目している。

 

でもって脊柱における痛みの評価において、(痛みの程度のみならず)痛みの分布や部位を把握することは極めて重要であることを示している。

 

また、前述したように「セントラライゼーションが起こる=予後が良い」とも言われていることから、脊柱原性疼痛に関して以下の様に指摘されることもある。

 

痛みの程度の変化よりも痛みの分布や部位の変化の方が、状態の把握、方針の決定により重要。

 

また、「セントラライゼーションが起こる=痛みの程度も低下する」ではない点は、誤解しやすい部分なので注意する。

 

例えば、前述した「マッケンジーさんがセントラライゼーションを発見した際のエピソード」を読み返してみてほしい。

 

セントラライゼーション(症状分布の中央への収束)が起こった一方で、(一時的にではあるが)腰痛自体は増悪したことが記載されている(その部分を赤色で示してあるので読み返してみてほしい)。

 

つまり、(最終的には腰痛自体も改善するが)「セントラライゼーションが起こる=痛みの程度も低下する」では必ずしもない。

 

でもって、話を整理するために極論を以下に提示してみる。

 

  • ケース①:

    腰部から足趾までの症状が、脊柱への刺激によって腰部へ収束した。しかし、腰部の痛みは刺激を加える前よりも増悪していた。

 

  • ケース②:

    腰部から足指までの症状分布は、脊柱への刺激によっても変化は起こらなかった。しかし、腰部の痛みは刺激を加える前よりも大幅に改善した。

 

上記を比較した場合、ケース②の方が良い反応な気がする人もいるかもしれない。

ただし、セントラライゼーションの観点から言えば、ケース②よりも①のほうが良い反応であり、予後も良い可能性があるという事になる。

 

 

セントラライゼーションが起こったほうが予後が良いとされる根拠となっている文献

 

この記事では何度か「セントラライゼーションが起こったほうが予後が良いと言われている」と記載したが、その根拠として使用されることの多い文献を以下に記載しておく。

 

  • Aina S, May S, Clare H: The centralization phenomenon of spinal symptoms- a systematic review.Manual therapy 9(3):134-43,2004

 

  • Al-Obaidi SM, Al-Sayegh NA, Nakhi HB, et al: Effectiveness of McKenzie intervention in chronic low back pain: a comparison based on the centralization phenomenon utilizingin selected bio-behavioral and physical measures. Int J Phys Med & Rehab 1(4): 128. doi:10.4172/jpmr.1000128,2013

 

  • May S, Aina A: Centralization and directional preference: a systematic review. Manual Therapy 17(6): 497-506,2012

 

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何でCentralization・Peripheralizationが起こるのか

 

なぜ、Centralization・Peripheralizationが起こるのか、完全に解明されている訳ではない。

 

脊柱(頚部・胸部・腰部)の刺激によって、四肢の症状が脊柱に収束していることから、四肢症状が脊柱から生じた『関連痛』だということが分かっているだけである。

 

ただ、椎間板機能障害との因果関係があるっぽかったり、それをイメージして刺激を加えた際に良い反応を示しやすかったりする。

 

※そもそもマッケンジー法自体は反応重視であり、病理へ言及することは少ないのだが、椎間板(の髄核)の動きをイメージすると分かり易いので、対象者に説明するときにも、椎間板がキーワードとして用いられることは多々あり、これは(マッケンジー氏が最初に発見した)Centralization・Peripheralization同様である。

 

※ちなみに以下の「東京大学の東大病院のHP」にもセントラライゼーションは登場するが、体操自体に関しては椎間板の動きも含めて解説されていたりする。

外部リンク⇒『東京大学 東大病院 これだけ体操

 

また、東大病院の以下の記事には非特異的腰痛に対する包括的なアドバイスも記載されており、表現も分かり易く参考になる(椎間板機能障害と心理的ストレスを前面に出した表現には賛否あるかもしれないが、日常生活の工夫なども含めてイラストで分かり易く解説されていると感じる。)

外部リンク⇒『東京大学 東大病院 非特異的腰痛に関して

 

 

話を、「Centralization・Peripheralization」と「椎間板機能障害」に話を戻すと、これらの現象が椎間板機能障害に起因すると必ずしも断言は出来ない。

 

※他の軟部組織に由来した関連痛も確認されているし、であるならばそれが疼痛分布を拡大させている可能性も否定はできない。

⇒『関連痛(内臓+仙腸関節などの運動器)

 

1956年McKenziが初めて述べたのが疼痛の中心化である。

椎間板障害により生じた疼痛は状態が悪化するにつれ、疼痛の程度が増し、疼痛の範囲は臀部・大腿部へ広がり、最後には下腿に達する。

疼痛の中心化とは、その逆の現象が生じることで、疼痛が中枢へ戻っていくことである。

さらにMckenziにより椎間板の突出が減少することも示唆された。

しかし、Mckenziの伸展運動により疼痛が軽減する現象は、先に述べた関節包に存在するI型・Ⅱ型受容器が刺激され、Ⅳ型受容器である侵害受容器から伝えられる刺激を軽減しているもの、つまり関門制御説機構の働きで起こる現象であると考えられる。

 

近年、マニピュレーションによる疼痛軽減効果は、関門制御機構によるものだけでなく、セロトニン・ノルアドレナリン系に作用して下降性疼痛抑制系を働かせていることも報告されている。

 

~『パリス・アプローチ 腰,骨盤編』より引用~

 

まぁ、これらの現象が起こる原因は何であれ、クリニカルリーズニングに活用する一つの情報として、この様な現象を追ってみるのも良いという程度に覚えておいてほしい。

 

 

Centralization・peripheralizationもリハビリで考慮しよう

 

ここまで記載してきたように、Centralization・Peripheralizationともに、評価にも治療にも予後予測にも活用することができる。

 

腰痛に関しては様々な評価指標・治療方法・予後予測方法が存在するが、ここで述べた指標もぜひ活用してみてほしい。

 

最後に、ここまで述べてきた内容と重複するが、『書籍:この動きを習慣にすれば腰痛は自分で治せる! 』の一部を引用して終わりにする。

 

痛みの中央化という現象は、ある決まった動作を繰り返し行ったり、ある決まった姿勢をしばらくとり続けた結果、当初は、太ももやふくらはぎなどにまで広がっていた痛みが腰の真ん中に向かって上がってきた、集まってきたという現象を指します。

 

一方で、痛みの末梢化という現象は、痛みの中央化と逆に痛みが変化することを指します。

たとえば、当初は腰だけだった痛みの分布が、ある決まった動作を繰り返したり、ある姿勢をしばらくとり続けた結果、太ももやふくらはぎまで痛みが広がった、下がったという現象を指します。

 

痛みの中央化はマッケンジー法では、腰痛改善にとって好ましい反応です。

当然、痛みの中央化を引き出した動作や姿勢は、治療のプログラム、普段の生活において積極的に取り入れなければならないと指示することになります。

 

痛みの末梢化は、これとは逆です。この痛みの末梢化を引き起こす動作や姿勢は一時的にしないようにしなければなりません。

 

 

関連記事

 

マッケンジー法に関しては以下の記事も参考にしてみてほしい。

 

(HP)マッケンジー法とは? 分かり易く解説!

 

 

また、以下の『椎間板ヘルニアのリハビリ』でもセントラライゼーション・ペリフェラライゼーションに言及しているので合わせて観覧すると理解が深まるかもしれない。

 

椎間板ヘルニアの対処方法 |「マッケンジー法」や「腰部屈伸の長所・短所」も紹介