この記事は、腰椎を例にして『マッケンジー法(MDT:Mechanical Diagnosis and Therapy)』の概略を解説していく。

 

マッケンジー法の評価・治療の流れ

 

マッケンジー法ににおける評価・治療は以下の流れで進めていく。

 

これは、姉妹サイトで紹介している「徒手理学療法における評価・治療の流れ」と類似しているが、以下の2点に相当な比重を置いて臨床推論し、分類・治療につなげるのが特徴と言える。

 

  • 問診
  • メカニカルな負荷を利用した理学検査から得られる反応

 

でもって、上記を記入する評価用紙が以下であり、この評価用紙の書き方・活用方法について講習会ではかなりの時間を割いて勉強していく。

 

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マッケンジー法の評価用紙(腰痛版)

 

マッケンジー法の評価用紙は腰部・頸胸椎・四肢版が存在するが、ここでは腰部版を紹介しておく。

 

 

 

 

ではでは、評価用紙に記載している問診・理学検査についてザックリと解説していく。

 

マッケンジー法における問診について

 

マッケンジー法は問診を非常に重要視する。

 

※マッケンジー法の講習会では実際の患者さんの治療を(勉強の一環として)見学する時間が多く設けられているのだが、問診を非常に丁寧にしていく場面をまざまざと見せつけられる。

 

 

マッケンジー法における問診では以下の点について聴取していく。

  • 仕事での負荷
  • 趣味での負荷
  • 今回のエピソード(例えば腰痛)で制限されている動作
  • 今現在の症状
  • いつから発症したのか(その症状は今現在、改善傾向・変化なし・悪化のどれか)。
  • 発症のきっかけ
  • 発症時の症状(腰部・大腿・下腿)
  • 現在の症状は 持続的か or 間欠的か(持続的な部位・間欠的な部位)
  • どの様な時に症状が起こるか(あるいはどのような時に悪化するか)
  • どの様な時に症状が改善するか
  • 睡眠障害はあるか
  • 熱時の姿勢について(マットの硬さについて)
  • 以前に何回症状が出たか(再発であれば、その回数を効くという事)
  • 以前の病歴
  • 以前・今回行った治療は?

 

上記の問診にはそれぞれ意味があり、臨床推論や評価・治療の選択に役立つ情報が満載となる。

 

また、スペシャルクエスチョンとして以下も聴取する。

 

  • 咳・くやみ・いきみの影響はあるか
  • 膀胱直腸障害はあるか
  • 薬は服用しているか(服用しているのであれば、その種類:NSID、ステロイドなど)
  • 歩行状態はどうか(これは問診というより、実際に動作分析で確認したほうが良いケースも多い)
  • 健康状態
  • 画像検査をしたのであれば、その結果
  • 最近、手術を受けたことはあるか?
  • 夜間痛はあるか
  • 事故の経験はあるか
  • 原因不明の体重減少はあるか

 

でもって回答次第ではレッドフラッグと解釈し、医師の受診(あるいは精密検査)を勧める。

このスペシャルクエスチョンは、ダイレクトアクセスが可能な海外では当たり前な問診項目と言える。

 

関連記事

⇒『レッドフラッグのチェックが腰痛治療に必須な件

⇒『(HP)理学療法士にとって必須なスキル!問診について!

 

 

マッケンジー法における理学検査について

 

問診の次は、機械的な刺激を活用した理学検査を実施し、具体的には以下の2つを評価する。

  • 反復運動
  • 姿勢保持

 

腰痛の理学検査の場合では、例えば「立位での腰部反復伸展」や「背臥位での腰部伸展位保持」など様々な理学検査を実施し、その反応を評価していく。

 

でもってその際の「リスク管理」や「反応を吟味」に活用されるのが「フォースプログレッション・フォースオルタナティブ」「トラフィックライトガイド」である。

 

関連記事

⇒『フォースプログレッション・フォースオルタナティブとは

⇒『トラフィックライトガイド(Traific light guide)とは

 

 

理学検査時の反応としては、反復して刺激を入れていくに当たって「ある刺激を少し入れる場合、と沢山入れる場合では、得られる反応が逆転する」という『パラドックスオブムーブメント(Paradox of Movement)』を理解ておく必要がある。

例えば、腰部を反復伸展する場合、「最初の1~2回で得られる反応」と「10回で得られる反応」は異なる場合があるということ。

 

関連記事

⇒『パラドックスオブムーブメント(Paradox of Movement)って何だ? 

 

 

あるいは腰痛に下肢症状を伴う場合「1~2回の刺激では何も起こらない」が「10回の反復では下肢症状が腰部に集約する」など「症状の範囲」にも影響を及ぼす可能性があり、この点にも着目する必要がある。

この様に「症状の範囲」が腰部へ集約したり、逆に腰部から遠位へ拡大してしまう現象をセントラライゼーション・ペリフェラライゼーションと呼び、マッケンジー法の理学検査として着目すべき重要な指標となり得るため覚えておく必要がある。

 

関連記事

⇒『脊柱原性の疼痛リハビリで知っておきたいCentralizationとPeripheralization

 

 

また、理学検査を実施する際には「関節を最終域(end range)まで可動出来ているか」で反応は大きく異なってくるので、この点も理学検査時に注意すべきポイントとなる(この点に注意できていないと誤った判断で分類をしてしまうことになる)。

関連記事

⇒『痛みには、誘発させても構わない種類もあるって知ってた?

 

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マッケンジー法の特徴:腰痛を複数のシンドロームに分類する

 

問診及び理学検査によって得られた所見を評価用紙に記載するとともに、腰痛を以下のシンドロームに分類していくことになる。

 

  • ディレンジメントシンドローム(Derangement syndrome)
  • ディスファンクションシンドローム(Dysfunction syndrome)
  • ポスチャルシンドローム(Postural syndrome)
  • アザー(Other)

 

それぞれのシンドロームの特徴をザックリと解説した一覧表は以下になる。

 

 

 

特にDerangement syndromeの場合は、前述したCentralisationが起きるなど、短時間で良い反応が得られる運動方向(Directional preference:DP)が見つかる点がポイントとなる。

 

関連記事

⇒『Directional Preference(DP)とは

 

 

下肢痛から各種分類を考える

 

下肢痛を有した患者に関しては、マッケンジー法では以下の様な特徴を鑑別・治療の参考にしていく。

 

 

整復可能な

Derangement

整復不能な

Derangement

神経根癒着
病期(stage) 急性期から慢性期まで 慢性期 慢性期

状態(Status)

改善/悪化

変化なし/波がある

変化なし 変化なし
症状 持続的/間欠的 持続的 間欠的
症状の様態(Symptom behacior)

一定/一定でない

様々

Better/worse/

Centralising/Peripheralising

一定

動作で increase, no worse

一定

テンションがかかる肢位で

Produce,no wrse

悪化因子 屈曲動作あるいは屈曲と伸展動作 大体の動作で一時的に悪化 つま先さわり、長座位、運転、歩行
屈曲から伸展への移動動作での問題 あり/なし なし なし
改善因子

伸展あるいは側方動作

臥位

動作なし。動作中にいくらか軽減 悪化因子をしなければ
再発(Episodic) あり/なし なし なし
屈曲時の横方向へのぶれ 反対方向>同方向 反対方向/同方向 同じ方向
屈曲可動域制限

様々

軽度屈曲まで

中等度制限 中等度から重度制限
伸展可動域制限

中等度から重度まで 

中等度から重度まで 様々
反復屈曲 ーーーー ーーーー ーーーー
立位での屈曲

Worsenあるいは

Periperalise

PDM/ERP

可動域悪化

 

※上記のケースが多いという意味

INcrease,no worse or Decrease, no better

PDM

直後5-10分は可動域改善するが、その後はものと状態に戻る

Produce, no worse

ERP

可動域変わらず

立位での伸展

BetterないしCentralise

可動域改善

 

もしくはWorseないしPhriperaise

(この場合は側方負荷も調べる)

 

※上記のケースが多いという意味

 

Increase, no worse

可動域変わらず

No effectあるいは腰部痛がProduce, no worse

可動域変わらず 

臥位での屈曲 立位での屈曲の反対に似ているが、悪化の程度は軽めが多い。

Increase, no worse

可動域変わらず

No effectあるいは腰痛がProduce, no worse

可動域変わらず

臥位での伸展

BetterないしCentralise

ROM改善

 

もしくはWorseないしPheripheralise

(この場合は側方負荷も調べる)

Increase, no worse

可動域変わらず

No effectあるいは腰痛がProduce, no worse

可動域変わらず

 

この表に関しては専門的な表現も入っているのでマッケンジー法を学んでいない人には意味が分かりにくいかもしれない(ただ、それも解説していたら大変なので割愛する)。

(あくまでザックリと)概要を理解するために参考にしてみてほしい。

 

 

マッケンジー法(腰痛編)のまとめ:フローチャートを紹介

 

ここまでの評価から分類、更にはマネージメント方法までをザックリと解説したフローチャートが以下の図になる。

 

 

 

関連記事

 

以下のサイトでは、マッケンジー法をもう少し簡潔に表現しているので、この記事と合わせて観覧してみてほしい。

 

⇒『(HP)マッケンジー法を認定セラピストの理学療法士が解説!特徴/効果/誤解

 

 

この記事で散りばめたリンク記事の一覧は以下からも観覧できるので、興味があればアクセスしてみてほしい。

 

⇒『マッケンジー法の関連記事はこちらから

 

 

また、マッケンジー法を(若干ではあるが)疾患とからめて記事にしたものとしては以下がある。

 

⇒『急性腰椎捻挫(ぎっくり腰)の激痛(急性腰痛)対処法とは?

 

⇒『椎間板ヘルニアの対処方法 | 「マッケンジー法」や「腰部屈伸の長所・短所」も紹介

 

⇒『仙腸関節テスト(検査)の精度を上げる方法