この記事では『貧血』について解説している。
貧血とは
貧血とは以下を指す。
日本は、国際的に見ても、貧血が多いという調査もある。
日本人の成人女性の約10人に1人に貧血があるとされている。
※月経のある女性に限ると約5人に1人が貧血といわれている。
でもって、貧血のなかで最も多ぃタイプは、体内の鉄が不足することによって起こる『鉄欠乏性貧血』である。
鉄欠乏性貧血の原因
赤血球は、肺で酸素と結合し、全身へ酸素を送り届ける大切な役割を担っている。
※赤血球が酸素と結合できるのは、赤血球に含まれるヘモグロビンの働きによるもの
そんな「ヘモグロビン」をつくるために不可欠なのが鉄である。
つまり、体内の鉄が不足すると、ヘモグロビンがうまくつくられなくなるということになる。
その結果、赤血球が減少したり、小さくなったりする。
この状態に陥ると、体内に十分な酸素を送り届けることができず、全身が酸素不足の状態になる。
体内の「鉄」が不足する原因
体内には、ヘモグロビンをつくるのに使われる鉄のほかに、貯蔵鉄と呼ばれる予備の鉄が肝臓などに蓄えられている。
でもってヘモグロビンに使われる鉄や貯蔵鉄のほとんどは、繰り返し体内で再利用される。
鉄は、汗や尿、便として体外へ排出されるが、わずかな量なので、通常であれば、排出された分は食事で十分に補える。
しかし、以下の様な原因によって、体内の鉄が不足することがある。
食べ物から十分に鉄を摂取できていない:
偏食やダイエットなどの食生活の偏りが影響すると考えられている。
日本人の1日当たりの鉄の摂取量は、30〜69歳の成人男性で7.5mg、15歳以上の月経のある女性で10.5mgが推奨されている。
それに対して日本人の鉄の平均摂取量は、成人男性で8.1mg、成人女性で7.3mg。
一般に男性は推奨量より多くとっているので、鉄不足の心配はほとんど無いが、月経のある女性では鉄不足の傾向がみられるということが分かる。
鉄の需要が増加する:
妊娠中や授乳中は鉄が必要になるので、鉄が不足しやすくなる。
また、成長期の子どもは成長に伴い、スポーツ選手は大量の汗や筋肉量の増大などで、鉄を多く必要とするため、鉄不足になりやすくなる。
出血で鉄が失われる:
月経のある女性では、経血によって鉄が多く失われる。
鉄欠乏性貧血の症状が強い場合は、子宮筋腫や子宮内膜症などの病気の可能性もある。
また、男性や閉経後の女性では、胃腸の潰瘍やポリープ、痔などの病気による慢性的な出血が起こり、鉄が不足している場合がある。
さらに、子宮がんや胃がん、大腸がんなどがあると、がんが発生している部位からの慢性的な出血によって、鉄欠乏性貧血が起こる場合がある。
欠乏性貧血の症状
鉄欠乏性貧血になると体が酸素不足になるため、駅の階段を上るような軽い動作でも動悸や息切れがします。
ほかにも、以下など様々な症状が生じる。
- 顔色が悪くなる
- 頭が重い
- 疲れやすい
・・・など
また鉄不足が、以下などの(貧血の症状以外の)症状を引き起こすこともある。
爪の変形など:
鉄はヘモグロビンをつくるだけでなく、体の細胞の増殖にも欠かせない。
爪や髪の毛、口の粘膜は細胞分裂が盛んな部位のため、爪が薄くなったり、反り返ったり、抜け毛が多くなったり、口内炎になったりすることもある。
よく「薄毛にミネラルが効く」などと言われているが、多少は関係あるのかもしれない。
就寝時に脚がむずむずして寝つけない:
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)を引き起こすことがある。
鉄は神経伝達物質をつくるのにも必要なため、鉄が不足すると神経伝達物質がうまくつくれず、脚の感覚を脳にうまく伝えられないため、脚がむずむずするという感覚異常が起こると考えられている。
鉄欠乏性貧血の検査と治療
ここから先は、鉄欠乏貧血の検査と治療について解説していく。
鉄欠乏性貧血の検査
鉄欠乏性貧血の検査では、血液検査でへモグロビンの値を調べる。
ヘモグロビン値が以下だと貧血と診断される。
- 成人男性では13g/dl未満
- 成人女性では12g/dl未満
- 80歳以上では11g/dl未満
健康診断などで貧血と指摘された場合は、鉄欠乏性貧血だけでなく、胃腸の潰瘍などほかの病気が潜んでいることもあるので、内科を受診することをお勧めする。
鉄欠乏貧血の治療
鉄欠乏性貧血の原因となっているほかの病気がある場合は、その病気の治療を行うと同時に、鉄欠乏性貧血の治療を行っていく。
鉄欠乏性貧血の治療は、不足している鉄を補うために鉄剤を使用するのが基本となる。
※主に内服薬が処方される。
治療で鉄剤を使用すると、まずはヘモグロビンをつくるための鉄が補われ、通常は2〜3週間でヘモグロビン値が改善してくる。
ただし、この段階で鉄剤の使用を中止すると、貯蔵鉄はまだ十分に満たされていないので、すぐに鉄欠乏性貧血に戻ってしまう。
なので、貯蔵鉄がたまるまで数か月間は鉄剤を使い続ける必要がある。
※服用を続ける期間には個人差があります。
副作用への対処法
鉄剤の副作用には、吐き気や胃痛、下痢などの胃腸障害や、まれに発疹がみられる。
これらの副作用が現れた場合は、服用する鉄剤の種類を替える。
また、服用するタイミングを変更するなどで対処する。
このような対処をしても、副作用が現れる場合には、注射で鉄剤を補ったり、鉄の量が少なめで比較的のみやすい小児用のシロップに変更する場合もある。
鉄欠乏性貧血の予防
月経のある女性や成長期の子どもなどでは、ヘモグロビン値に異常はなく鉄欠乏性貧血には至っていないものの、貯蔵鉄が減っている状態である潜在性鉄欠乏がみられることがある。
潜在性鉄欠乏から鉄欠乏性貧血になることを予防するには、食生活を改善することが大切だ。
以下などの鉄を多く含む食材を積極的に摂取しよう。
- レバー
- 赤身の肉や魚
- 小松菜などの緑黄色野菜
- 大豆製品
・・・・など
肉に含まれる鉄は吸収率がよく、効率よく鉄をとることができるとされている。
鉄を摂取する際のポイント
その他のポイントとしては以下などがある。
- また、ビタミンCを多く含む食材を一緒にとると、鉄の吸収がよくなるので、野菜や果物などビタミンCを多く含む食材と組み合わせてとる
- 鉄欠乏性貧血の治療中や症状が改善してからも、鉄を多く含む食材をとることが大切。
- 鉄は一度に大量にとるよりも、毎日欠かさずとることを意識する。
- 通常の食事だけでは鉄が十分とれていない場合は、鉄のサプリメントを使用量を守って利用するのも良い。ただし、サプリメントに頼るのではなく、バランスのよい食事を心がけ、食材から鉄を積極的にとることが大切。