「理学療法士の現状と未来」というテーマで半田会長が講演をする中で、特に重点的に話しをしていたのが「急性期における理学療法の拡充」だった。
急性期における理学療法の実践(それこそ、入院直後からのリハビリ実践)は、「命に関わるチーム」に入ることを意味し、リクス管理も含めてかなりの特殊な知識・技術も必要となる。
ただ、これからは「急性期における理学療法の拡充」は需要があるし、必ず実現したいと述べていた。
急性期における理学療法の拡充
現在、急性期病院における在院日数は非常に短くなっており、「入院したと思ったら、すぐ退院(や転院)」ってのも珍しくない。
で、急性期病院への勤務に関しては「やりがい」の面から、ネガティブな発言をする理学療法士もいたりする。
ただ、(やりがいがを、どの程度の割合の理学療法士が持てるかは別として)早期離床の重要性は嫌と言うほど耳にしており、「命を扱う現場において、十分なリスク管理をしながらの、積極的なリハビリ」が重要な事は言うまでもない。
※需要はあるだろう。
でもって、半田会長は「急性期における理学療法の拡充」の一案として365日リハを挙げていた。
っというのも、前述したように急性期病院の在院日数は極端に短いため、
例えば入院を金曜日にしたとして、すると金曜日にリハビリをした後に、土曜・日曜(+最近は振替で月曜が祝日な事も多い)リハビリお休み、でリハビリを再開した矢先にもう退院
ってことも起こり得る。
※急性期病院の在院日数はこれからも短縮傾向になると予測されているため、この様なケースが今後はもっと多くなる可能性がある。
だから、祝日も含めて勤務する365日リハの導入を目指しているという。
しかし、病院がその様に動くためには、何らかのインセンティブ(病院がメリットと感じること⇒つまり、導入すれば収益が格段に上がるなど)が必要となる。
でもって、365日リハではないにしても、「急性期病院における理学療法の拡充」のために平成30年度も何らかの加算が導入されたらしいが、病院のインセンティブ、全国へのムーブメントを起こすほどの魅力は持っていなかったらしい。
その他:医療保険分野における、半田会長の思い
この記事では「急性期病院における理学療法の拡充」を中心に記載したが、おまけとして、医療分野に関して半田会長が述べていた「その他もろもろ」を列挙して終わりにする。
「1日多くの人数(単位)をこなせるかどうかで価値が決まる」ではなく、人員配置基準に理学療法士を必須にすることで価値を付ける。
この点に関してはH26年の医療報酬改定における「地域ケア病床」を例に挙げて解説いていた。地域ケア病床の人員基準として理学療法士が必須になっている。この様に「人員配置基準的に理学療法士が必要不可欠」というの多くのケースに浸透することで、「理学療法士は、数をこなしてなんぼ」だけでない価値を付けていきたいとのこと。
こういうのが、規模の小さな病院から大きな病院まで、「理学療法士を配置していなければ、それだけで報酬が落ちる」といった方向に持っていければ理想だ。
前述した急性期病院に関しても、「理学療法士が何単位リハビリをした」ではなく人員配置基準として必須になり、(リハビリ時間・リハビリ回数で評価されるのではなく)チームとして助言も含めた貢献により価値を認めてもらえるような存在になれれば働きやすくなるのではと感じる。
疾患別での報酬格差の是正。
脳血管リハだから報酬が高いとか、運動器リハだから報酬が低いとか、疾患別に報酬が異なっているという現状に整合性が無く、これを是正したいとしている。
人員配置基準によるリハビリ料の是正。
現在、例えば脳血管リハⅠとⅢでは「同じ内容のリハビリを実施した」としても、以下の様に報酬に雲泥の差がある。
①脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅰ)(1単位)245点
②脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅱ)(1単位)200点
③脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅲ)(1単位)100点
これは、スペース要件(リハスペースが広いかどうか)・人員要件(人員が多いか)・機械要件(機械がそろっているか)などによって異なるが、この中で「人員要件」を例に挙げて以下の様に半田会長は言っていた。
加えて余談として、経験年数だけでなく、頑張っている理学療法士が評価されるような仕組みも作っていきたいと話す。
例えば「勉強し努力し結果が出せる理学療法士」と「単に惰性で働いている理学療法士」、(個人的には、生き方は個人の自由なので、人様の人生に対して良し悪しを説こうとは思わないが、)前者が報われるような仕組みが作られたとしても、それを批判する理学療法士はいないだろう。
でもって、その構想の一つに認定理学療法士があるのかもしれない。
もちろん「認定理学療法士であるかどうか=努力しているかどうか」ではないにしても、これくらいしか協会が客観的に「理学療法士が努力しているかどうかを把握できる指標」って無いと思うので、何らかの形で認定理学療法士をアピール、活用していくことで、頑張っている理学療法士に報いたいという思いがあるのではないだろうか?
そういう事もあってか、国にアピールできるレベルの資格にすべく、新人教育プログラムも含めて生涯学習制度を根本的に変えようとしているのだろう(もし国にアピールする必要が無く、内々だけの自己満足的な資格に留めておきたいなら、このままでも良いはずなので)。
⇒『衝撃的!! 理学療法士の「生涯学習制度」がH33年より大幅に変わる件(研修理学療法士プログラム/登録理学療法士)』
ただし、「努力している理学療法士に報いたい」という協会の思いを、「診療報酬による差別化」として国にアピールするのはリスキーだと思う。
っというのも講演の中で、半田会長は以下の様な発言をしていた。
この発言は、認定理学療法士とは関係の無い「理学療法士数の増大や報酬変化を述べていた際に使ったフレーズ」だ。
⇒『④理学療法士の給料は上がるのか? | 【半田会長の講演】学会参加で分かった「理学療法士の現状と未来」について』
とはいっても、この厚生労働省お得意の「ハシゴ外し」は、医療業界のみならず他の業界でも使ている常套手段だ。
なので、この厚生労働省の悪どさが、ここでも発揮される可能性がある。
関連記事⇒『「インセンティブ」を解説! 国の政策の裏を読め!』
具体的には、この会長の思いが逆手に取られて利用されて、理学療法士自体の報酬をワンランク下げてしまう可能性があると考えている。
※「認定理学療法士を有していて、初めてまっとうな報酬が得られる。有していなければ半人前」と言う発想に最終的に行き着いた報酬設定がなされる可能性がある。
この点に関して、数年前に作った以下の記事の中でも解説している。
⇒『メリットは?専門・認定理学療法士(作業療法士)を考察する』
ただし、私は認定理学療法士を有していることが診療報酬・介護報酬に反映されること自体、有り得ないと思っている派だ。
⇒『⑤理学療法士の開業権について | 【半田会長の講演】学会参加で分かった「理学療法士の現状と未来」について』
もし、差をつけたいのであれば、以下など「理学療法士教会内+αで完結できるメリット」の方が実現しやすいし、国にも利用されにくいので良いのではと感じる。
・理学療法士協会の年会費無料
・認定でなければ協会公認(受講者に理学療法士協会のポイントが付与される)の講習会が開催できない(しかも開催するにあたって補助が受けれる)
・認定理学療法士を有していなければ学生の教育実習をしてはならない。
また、教育実習を引き受けた際は、理学療法士協会からも報酬が出る(現在は学校側から病院へ報酬が支払われる仕組みとなっており、その中の一部が担当した理学療法士にも流れてくることもあるといった仕組みになっているが、協会から直接指導した理学療法士に報酬が支払われる)
・・・・などなど。
ちろん、あまりに度が過ぎると一般の理学療法士会員から、「なんで認定理学療法士達のために、俺たちが会費を払わなくちゃならないんだ」となってしまうので、会費の使い道に関してバランス感覚は必要だとは思う(ちゃんと一般の理学療法士に対しても会費を払って良かったと思われるような仕組みは構築し続けなければいけないと思う)が。。
※それでも(重複するが)国を相手にするよりはよっぽど現実味があり、リスクも少ないと思う。
関連記事
以下は「第34回東海北陸学術大会」における半田会長の講演で、気になった項目をまとめた記事になる。
⇒『①厚労省は激怒している | 半田会長の講演(テーマ:理学療法士の現状と未来について)』
⇒『②医療保険分野における今後のビジョン(「急性期病棟の理学療法を拡充」を中心に) | 半田会長の講演(テーマ:理学療法士の現状と未来について) 』
⇒『③介護保険分野における今後のビジョン(「看護師協会とのパワーバランスで敗北」を中心に) | 半田会長の講演(テーマ:理学療法士の現状と未来について)』
⇒『④理学療法士の給料は上がるのか? | 半田会長の講演(テーマ:理学療法士の現状と未来について)』