「理学療法士の現状と未来」というテーマで半田会長が講演をする中で、介護保険分野の話題で特に重点的に話しをしていたのが「訪問看護ステーションについて」だった。
この記事では、そんな「訪問看護ステーションにおける理学療法」を含めた介護保険分野の「現状と今後」についての話題をまとめた記事になる。
今回は、看護師協会とのパワーバランスで負けた
先ほども述べたが介護保険分野に関しては、訪問看護ステーションにおけるリハビリへの言及があった。
もともと訪問看護ステーションからのリハビリに関しては議論があり、この点に関しては以下の記事も参照してみてほしい。
⇒『訪問リハビリとは?制度的側面を解説するよ(訪問看護との違いも含む)』」
上記の記事でもお分かりなように、個人的には訪問看護ステーションからの訪問リハビリと言うのは、あまり肯定的ではないというスタンスだ。
ただ半田会長は、私とは真逆な意見のようだ。
でもって、以下の様に述べていた。
これは、看護師協会と理学療法士協会のパワーバランスの問題で、それに負けたということだ。
ただ、いずれは勝ちたいと思っている。
訪問看護における理学療法士の存在は重要だ。
つまり、今回は看護師協会とのせめぎあいに負けてしまったが、
今後は「看護師協会とのせめぎあい」に打ち勝ち、訪問看護における理学療法士の位置付けを重要なものにしていきたいと考えているようだ。
まぁ、「医療保険の話」の流れからして、「理学療法士が(直接的にリハビリをして報酬を稼ぐという発想以外に)、人員配置基準として理学療法士の存在感を高める(理学療法士を雇わなければ経営できないような方向に持って行く)ってのが一つのアイデアとして有ったので、訪問看護においても同様な意味で譲れない部分はあるのかもしれない。
※現実問題として、(訪問看護ステーションで理学療法士が直接的にリハビリを行わなかったとしても)看護師からの様々な相談にのったりする「マネジメント的な役割」という発想を持たせるのは大切なことだとは思う。
※ただ、現状ではやはり度が過ぎていて、看護をする事業所なのか、看護とは名ばかりでリハビリをする事業所なのか分からないものが多すぎる気がするが。。
訪問リハビリステーションの確立を諦めた訳ではない
ここまでの訪問看護ステーションにおける理学療法の話を聞いて、以下の様に思った。
ただ、これに関しては後々で言及されたのでホッとした。
訪問看護における理学療法士の地位も維持・向上させつつ、訪問リハビリステーション制度の確立にも尽力していきたいとのこと。
この点に関しては、「政府の要人からも、リハビリの重要性を説く人が多く存在している」という点を、(かなりメジャーな政治家達の名前を何人もだしながら)力説していた。
今後の介護保険分野の動向
介護保険分野におけるリハビリの動向としては、、益々「維持目的」では利用できなくなる「期間限定」なサービスになると予想していた。
この点に関しては、個人的にも同意だし、皆さんの中にも以下の様に考えている人は多いと思う。
で、こういうのは現在は「加算」扱いになっているが、(多少浸透してきた頃合を見計らって)これが「必須」に移行するというというのが、厚生労働省の一般的なやり方だ。
なので、(介護保険分野も含めて)公的保険を使ったリハビリとは期間限定になるという流れは、既定路線だ。
余談:介護保険が無い時代は「リハ卒業」が当たり前だった
余談として、介護保険が無い時代は「リハ卒業」が当たり前だったというエピソードも語ってくれた。
介護保険が無い(つまり、通所リハや訪問リハが無い)。
なので、脳卒中後発症後に医療保険でリハビリを実施した後は、
医療保険でプラトーに達したとされる6か月(最近では、それ以降でも可能性はあるといわれているが、今は本題とずれるので深堀しないが)であることを説明し、退院を促す必要があった。
で、この「退院」を切っ掛けに患者自身もマインドを変えざるを得ず「機能訓練ばかりへのこだわり」から「これからは、今現在の能力で活動・参加していかなければ」という気持ちに切り替われたという。
※まぁ、厳密には外来リハでエンドレスに昔は通えた時代だったような気がするが、ここは突っ込ますにスルーしよう。
※もちろん、介護保険の良い面もあるが、敢えて介護保険が出来たことによるネガティブな面にフォーカスされたお話をしてくれて、そういう視点もあるのだなと感じた。
しかし、介護保険によって良くも悪くも「リハビリ卒業」という区切りが無くなってしまった(公的保険を利用していつまでも機能訓練が出来るようになってしまったため)。
で、これが逆に活動・参加へ対象者のマインドが向きにくくなっている側面もあるという。
そして、これからは重複するように介護保険領域でのリハビリもゴールがより一層意識されるようになることが予測されており、そのゴール以降もリハビリがしたい場合、そのニーズには「公的なリハビリから外れたサービスが担う」といった現象が加速するであろうと述べていた。
公的保険を利用しないリハビリを提供する「業者」の存在
重複するが、今後は公的保険の利用が「益々、期間限定になる」ということが患者にも意識され、集中してリハビリをこなし、活動・参加につなげてから卒業するのだというマインドに切り替わる可能性がある。
しかし、それでも受け皿が必要なため、「公的保険外でのサービスを展開する事業所の存在」が益々クローズアップされていくという。
ここから先は、今回のシリーズにおける以下の記事でも述べているので合わせて観覧してみてほしい。
⇒『⑤理学療法士の開業権について | 【半田会長の講演】学会参加で分かった「理学療法士の現状と未来」について』
関連記事
以下は「第34回東海北陸学術大会」における半田会長の講演で、気になった項目をまとめた記事になる。
⇒『①厚労省は激怒している | 半田会長の講演(テーマ:理学療法士の現状と未来について)』
⇒『②医療保険分野における今後のビジョン(「急性期病棟の理学療法を充実」を中心に) |半田会長の講演(テーマ:理学療法士の現状と未来について) 』
⇒『③介護保険分野における今後のビジョン(「看護師協会とのパワーバランスで敗北」を中心に) | 半田会長の講演(テーマ:理学療法士の現状と未来について)』
⇒『④理学療法士の給料は上がるのか? | 半田会長の講演(テーマ:理学療法士の現状と未来について)』