この記事では、有髄線維と無髄線維を解説している。
神経線維とは
有髄線維・無髄線維について記載する前に、神経線維について解説していく。
神経線維とは以下を指す。
でもって神経線維には、
(後述する)有髄神経線維と無髄神経線維とがある。
神経線維の内部には、
神経細管、神経細線維などが存在し、
先端はシナプスとして他の神経要素や、
筋終板として筋細胞膜と接する。
この「神経線維」が集まって
「神経線維束(神経周膜が包む)」となり、
それが数本集まっていわゆる「神経(神経上膜が包む)」となる。
何となくイメージ出来るだろうか。
関連記事⇒『神経線維(の種類・分類・伝導速度)を網羅しました』
有髄線維と無髄線維
有髄線維と無髄線維の違いは、以下の様に「髄鞘を有しているかどうか」になる。
有髄線維は髄鞘を有しており、その髄鞘をピョンピョンと飛び越えるように伝導していく(=跳躍伝導と呼ぶ)ので、無髄線維(髄鞘がない線維)よりも伝導速度が速い。
以下の様に電車で例えると分かりやすいかもしれない。
・各駅停車(無髄線維)
・快速電車(有髄線維)
無髄線維
無髄線維では、隣り合った部分が脱分極しながら活動電位が伝導してく。
前述したように髄鞘が存在しないため伝導速度が遅い。
例えば「足をドアの角でぶつけた」とする。
ぶつけた拍子に激痛に襲われるが、
その後に訪れる「ジンジンとした痛み」は
「無髄線維(のC線維)によって生じた痛み」と言える。
※C線維はポリモーダル受容器に接続されており、
慢性疼痛にも関与している。
有髄線維
有髄線維では、髄鞘に包まれていないむき出しになった部分(ランビエ絞輪)だけが脱分極し、跳躍するように活動電位を伝導していく。
※細長い矢印は局所の電流の流れを示し、
太い矢印は活動電位の伝導をイメージしている。
有髄線維は絶縁体としての機能をもつ髄鞘で包まれているが、
髄鞘の区切りであるランビエ絞輪だけは軸索の細胞膜が露出しており、
その部分のみが脱分極する形で活動電位が伝導していく。
つまり、有髄線維における活動電位はランビエ絞輪から隣のランビエ絞輪へ飛ぶように伝導していく跳躍伝導と呼ばれる様式で伝導されるため、その速度は無髄線維より速い。
※有髄線維は跳躍伝導によって神経伝達を行っている。
しかし、髄鞘が破壊されることで神経伝達が阻害されてしまう。
シュワン鞘と髄鞘
有髄線維と無髄線維の違いは
「髄鞘を有しているかどうか」であると前述した。
でもって「髄鞘」は、「シュワン細胞」の細胞膜が幾重にも巻き付くことで形成されている。
※このシュワン細胞によって作られる鞘を「シュワン鞘」と呼ぶ
っとなると以下の様に考える人がいるかもしれない。
・有髄線維⇒シュワン細胞(シュワン鞘)で覆われている
・無髄線維⇒シュワン細胞(シュワン鞘)で覆われていない
ただ、実際は異なり以下が正しい。
シュワン鞘は神経線維の被膜で、
有髄神経では髄鞘の外側を、
無髄神経では軸索を直接包んでいる。
つまり、無髄線維は
「髄鞘は有していないが、シュワン鞘(シュワン鞘)には覆われている」
というのが正しい解釈。
有髄線維と無髄線維をもう少し厳密に
ここまで記載した事とは異なってくるのだが、
有髄線維・無髄線維という用語をもう少し厳密に整理して終わりにする。
※混乱しそうになる人は、ここまでで読むのを辞めておいてほしい。
ここまで記載した有髄線維・無髄線維は、厳密には以下の用語として扱われる。
- 有髄線維は「有鞘有髄線維」という用語が正解
- 無髄線維は「無鞘有髄線維」という用語が正解
つまり有髄線維には、ここまで解説してきた無随線維(厳密には無鞘有髄線維)も含まれるということ。
ここまで解説してきた無随意線維(無鞘有髄線維)は、以下を意味する。
髄鞘は持っていない。
ただし、シュワン細胞には包まれている線維
でもって、末梢神経の一部(「前述したC線維」や「自律神経」)は無鞘有髄神経になる。
なので、この記事で記載してきた「有髄神経・無髄神経」は、あくまで「有鞘有髄神経・無鞘無髄神経」を略して表現したものだと解釈してもらえれば、混乱は少ないと思う。
では、本当の意味での「無髄神経(無鞘無随意神経、つまりは髄鞘に包まれていない裸の軸索からなる神経線維)」は存在するのだろうか?
それは、中枢神経の灰白質にみられる。
中枢神経の灰白質は、無鞘無髄神経(シュワン鞘も髄鞘もかぶらない神経線維で)なのだ。
※ちなみに白質は有髄神経
- 中枢神経の「灰白質」⇒無鞘無髄線維
- 中枢神経の「白質 」⇒無鞘有髄線維
あと、交感神経は有鞘線維なのだが、以下の様に節前 or 節後どちらかによって、有髄か無髄か異なっている。
- 自律神経節前線維⇒有髄
- 自律神経節後線維⇒無髄