この記事では「膝蓋上嚢(suprapatella porch)」をイラストで解説していく。

 

癒着により屈曲制限を呈しやすい組織なのでイラストで理解してみてほしい。

 

また、膝関節周囲の脂肪体についても「大腿骨前脂肪体(PFP:prefemoral fat pad)」と「膝蓋骨上脂肪体(SFP:suprapatellar fat pad)」をイラスト解説している。

 

一番、過敏に痛みを誘発しやすい「膝蓋下脂肪体」に関しては、アプローチ方法とともに別記事で紹介しているので合わせて観覧してもらうと、膝周囲組織に関する理解が深まると思う。

 

目次

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膝蓋上嚢とは

 

膝蓋上嚢は「大腿骨顆部と膝蓋骨をつなぐ滑液包」であり、大腿四頭筋の深部に幅広く広がっている。

 

でもって膝蓋上嚢の役割は以下の通り。

 

膝関節における、膝蓋骨の長軸移動を円滑化

 

 

膝蓋跳動と膝蓋上嚢

 

関節内の液体貯留は、変形性関節症や関節リウマチなどによる滑膜炎、急性外傷(による前十字靱帯損傷など)で生じる。

 

でもって、膝関節の関節液は最も抵抗の少ない膝蓋上包に溜まり易い。

 

なので、膝蓋跳動を評価する際は、膝蓋上嚢しっかりと尾側に圧迫して関節液を膝蓋骨の下に移動させることがポイントになる。

 

⇒『関節水腫による膝蓋跳動を解説(動画あり)

 

 

膝蓋上嚢による屈曲制限

 

膝蓋上嚢は、イラストの様に膝屈曲で大腿四頭筋とともに頭⇔尾側へ広がる。

 

裏を返すと、膝蓋上嚢が何らかの理由で癒着すると、膝の屈曲制限となり得るということだ。

膝蓋上嚢

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膝蓋上嚢の癒着を予防

 

リハビリで遭遇しやすいTKA(人工膝関節置換術)後に「膝蓋上嚢の癒着を予防すること」は屈曲可動域を獲得する上で重要となってくる。

 

膝蓋上嚢は「中間広筋から関節筋として分岐した線維」と連結しているため、中間広筋を収縮させれば膝蓋上嚢が滑走する。

 

従って、ベッドサイドでも可能な『パテラセッティング』は膝蓋上嚢の癒着防止としても有益となる。

 

関連記事⇒『パテラセッティングとは?目的・効果・方法・工夫などを徹底解説

 

 

大腿骨前脂肪体と膝蓋骨上脂肪体

 

ついでに、大腿骨前脂肪体と膝蓋骨上脂肪体について記載しておく。

 

PFP(Prefemoral fat pad・膝蓋上脂肪体)とSFP(Suprapatella fad pad・前大腿脂肪体)

 

各脂肪体の詳細は以下の通り。

 

大腿骨前脂肪体(prefemoral fat pad)

  • 膝蓋上包と大腿骨との間に存在している。
  • PFAは、前述した「膝蓋上嚢」の深部に広がっている。
  • 膝関節屈伸運動時の膝蓋上包の滑りを円滑化している。
  • 膝関節拘縮との関連性が強い脂肪組織である。

 

膝蓋骨上脂肪体(suprapatellar fat pad)

  • 膝蓋骨上端、膝蓋上包の前面、大腿四頭筋腱の遠位後面で形成される三角形を埋めるように存在している。
  • 膝蓋上包とともに大腿四頭筋腱の滑り機能を高める。
  • 大腿骨と膝蓋骨との間で生じる膝蓋上包のインピンジメントを予防している。

 

PFP(Prefemoral fat pad・膝蓋上脂肪体)とSFP(Suprapatella fad pad・前大腿脂肪体)

 

関連記事

 

ここに記載した脂肪体の他に、疼痛過敏で有名な「膝蓋下脂肪体」なるものもあり、詳しくは以下で解説している。

 

アプローチのヒントも動画紹介しており、これは膝蓋下脂肪体へ特異的にアプローチすることもできるが、他の脂肪体への非特異的に応用可能な方法なので、合わせて観覧し膝関節周囲脂肪体への理解を深めてみてほしい。

 

⇒『膝蓋下脂肪体(IFP)って何だ?疼痛誘発テストやアプローチ方法も解説