この記事では、リハビリ(理学療法・作業療法)現場で用いられる『アライメント(alignment)』について解説していく。
アライメントとは?
アライメントとは以下を指す。
骨・関節の配列のこと。
例えば以下などの形態上の特徴を指す。
- 姿勢
- 側弯
- 円背
- O脚、X脚
- 偏平足
- 大腿骨の頚体角・前捻角(骨アライメント)
- 脛骨の捻じれ(骨アライメント)
・・・・・など。
人体の構造は真っ直ぐではなく、彎曲とねじれが存在する。
この彎曲とねじれの度合いが強いと様々な機能障害へと発展してしまう場合がある。
また、骨形態の歪みは運動効率を低下させ、筋腱への負担を大きくする。
例えばスポーツにおいては、ランニングのような単純で負荷的に軽い運動でも、アライメント上の異常があると、同じ動作を繰り返し行うことによってストレスの積み重ねが生じ、傷害を引き起こす可能性がある(鷲足炎や腸脛靭帯炎など)。
また、もともと骨格のねじれや彎曲があれば、急激なストップ、ターンや転倒、相手のタックルなどの際に、関節に不利な肢位で負荷がかかりやすく外傷を起こしやすい。
つまり、構造的にも外力に対して壊れやすく、突発的な外傷発生機転において大きな外傷につながるケースが多いと言える。
静的アライメントと動的アライメント(+骨アライメント)
アライメントとは『骨配列』のことを指し、以下の2つに分類される。
- 静的アライメント
- 動的アライメント
上記に「骨アライメント(大腿骨の頚体角・前捻角など)」を含む場合もあるが、ここから先は、「静的アライメント」と「動的アライメント」にフォーカスして深堀解説していく。
静的アライメントについて
静的アライメントとは
静的アライメントとは「自然立位のアライメント」を指す場合が多い。
でもって、一般的に「理想的な立位アライメント(矢状面・前額面)」は以下と言われている。
矢状面
①耳垂
↓
②肩峰
↓
③大転子
↓
④膝関節前部(膝蓋骨後面)
↓
⑤腓骨外果の前方
前額面
①後頭隆起
↓
②椎骨棘突起
↓
③殿裂
↓
④両膝関節内側の中心
↓
⑤両脛骨内果間の中心
理想的な立位姿勢を保持するために必要な関節の筋活動
理想的な姿勢を保持するために必要な関節の筋活動を以下にまとめる。
足関節:
重心線は足関節よりも前方を通り、身体は前へ倒れやすくなる。
これに抗するように、ヒラメ筋、ときに腓腹筋が活動する。
膝関節:
重心線は膝関節中央のやや前方を通り、重力トルクは膝関節伸展に作用する。
膝関節の固定には筋活動は必要としない。
股関節:
重心線は股関節後方を通り、股関節伸展に作用する。これに抗するように腸腰筋が活動し、股関節の過伸展を防いでいる。
現実には、わずかの姿勢変化によって重心線は股関節の前あるいは後へ移るため、伸筋と屈筋は間欠的に活動する。
脊椎:
重心線は第4腰椎のやや前方を通り、重力トルクは脊椎を前方へ曲げるように作用する。
腰椎前弯は減少し、胸椎後弯は増加する。
これに抗するように脊柱起立筋群が活動する。
静的アライメント異常
脊柱アライメント異常
脊柱の湾曲にフォーカスした静的アライメント異常の例を以下に示す。
膝関節のアライメント異常
膝関節の静的アライメント異常の例を以下に示す。
O脚が強いと膝の外側の張力が増すため、ランニング動作のような膝の屈伸運動を繰り返し行うと、腸脛靱帯と大腿骨外側上顆との過度な摩擦が生じ、腸脛靱帯炎を起こしやすい。
X脚では膝の外則に圧迫力がかかり、半月板損傷、膝蓋大腿関節症などを生じやすい。
また、膝の外反応力が強まると、逆に膝内側に伸張ストレスがかかりやすいため、膝の内側に集まる筋の付着部(鵞足部)の炎症を生じやすい。
動的アライメントについて
動的アライメントとは「運動時のアライメントのこと」を指す。
例えば、ジャンプ着地時の足部と膝関節の位置関係が重要となる。
前述した静的アライメントがが正常であっても、誤った動作によって関節のねじれや着地衝撃が大きくなったり、運動効率が悪くなって傷害につながる可能性は大きい。
従って、静的な骨・関節の形態(配列)を評価するとともに、運動時の関節運動の連関を分析しつつ、正しい動き、使い方をも評価する必要がある。
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