以前のブログ記事『慢性痛症が有する記憶バイアスは必ず修正すべきものなのか?』で、ポジティブな記憶バイアスがかかっている場合は、必ずしも修正する必要がないと述べました。

 

ですが、これはあくまで例えであり、実際にはテストの結果が良くなかったとしても、客観的な数値はクライアントに示す必要があります。

 

今回は、そんな際に私が用いる「ピークエンドの法則」について記載します。

 

 

目次

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ピークエンドの法則とは

 

「一連の体験から得られる満足感は、ピーク時と終了時の満足感だけでほぼ決まる」という法則が『ピークエンドの法則』です。

 

例えば、1日中たっぷり楽しんだデートでも、最後のちょっとした一言だけで彼女のご機嫌を損ねると、彼女は「最悪のデートだった」と感じてしまいます。

 

本当は肉料理やワインを売りにしているイタリア料理店が、(単なるオマケであるはずの)食後のデザートやコーヒーにも凝るのは、経験的にピークエンドの法則が分かっているからだとされています。

 

ピークエンドの法則では快であっても、不快であっても、それを体験している時間の長さはほとんど関係ないとされています。

 

例えば長時間良いことが続いても、最後の一瞬に嫌な事があれば「最悪な時間であった」となってしまうとされています。

 

一方で、長時間嫌なことが続いても、最後の一瞬に良いことがあれば「良い時間であった」となります。

 

このように、快・不快において時間の長さが無視されることを「持続時間の無視」と呼びます。

 

 

これは、仕事全般においても言えます。

 

「いつもまじめにコツコツと働いている人よりも、普段は怠けているが最後の大一番というところで大活躍する人のほうが、周囲から評価される」という経験がある人であれば、ピークエンドの法則を理解し易いかもしれません。

 

 

ピークエンドの法則をリハビリへの応用

 

前述した「本人は元気になっていると思って頑張っているにもかかわらず、体力測定(客観的評価)の結果は悪く、それを本人へ伝えなければならない」といった際の話に戻します。

 

物事にはポジティブな側面と、ネガティブな側面が両方存在していることが多いので、

 

仮に体力測定の結果が芳しくなかったとしても、

 

その様なネガティブな側面だけを伝えるのではなく、

 

ポジティブな側面も伝えてあげると、ネガティブな側面が精神的に緩和されます。

 

そして、両方の側面を伝える際は、「ピークエンドの法則」に当てはめて伝えるのが効果的です。

 

例えば、

 

「体力測定の結果は前回より少し数値が落ちていました。

 

ですが、以前に比べて転倒の頻度が明らかに減っていますし、週に1度の散歩が毎日出来る様になっていますね。」

 

といった具合です。

 

もし、これを逆にしてしまうと、

 

「以前と比べて転倒の頻度が減っていますし、週に1度の散歩が毎日出来る様になっていますね。

 

ですが、体力測定の結果は前回よりも少し数値が落ちているようです」

 

 

同じ客観的事実を伝えるにしても、少しニュアンスが異なっていることを感じ取って頂けましたか?

 

このブログでは、私自身にメタ認知を働かせて中立性を維持するよう努めていますが、

 

ピークエンドの法則に限って言えば、「ネガティブな事を伝えた後に、ポジティブな事を伝えること」はあっても、「ポジティブな事を伝えた後に、ネガティブな事を伝えること」が良いケースは思いつきませんでした。

 

従って、臨床におけるクライアントへの報告は、ネガティブ⇒ポジティブの順でルーチンに報告するよう日頃から心がけておくと良いと思います。

 

「そんな事言ったってネガティブな要素しかない際は、どうすれば良いのだ?」と反論されそうな気がしますが、

 

日頃からルーチンな報告を心がけておけば、ポジティブな側面も無意識に拾えるようになり、意外な事実に気付くことが出来るようになっていたりします。

 

この思考に慣れていない人は、クライアントを分析する際にネガティブな要素に注意が向きやすい「注意バイアス」がかかっているだけであり、その修正を意識すれば自ずとポジティブな側面も見えてくると思います。

 

クアイアントのポジティブな側面に着目することは、いわゆる『ICF的な考え』という点でも重要です。

 

 

ピークエンドの法則を、こんな事にも応用できる

 

かなり昔の話になりますが、訪問リハビリで担当していた利用者さん(脳卒中片麻痺)が、無事にリハビリを卒業することができました。

 

リハビリが終了するということで、その2か月前に「片手用まな板」を作ってほしいと依頼を受けました。

 

既に片手用まな板はプレゼントしていたのですが、万が一劣化した際の交換用に予備として持っておきたいということで、快く引き受けました。

関連記事⇒『まな板の作成(訪問リハビリ)

 

※市販されてもいますが、作成するほうが格段に費用を安く抑えられるうえ、非常に軽く、使い勝手でも引けを取らないので、好評です。

 

その、まな板は一週間後には作成が完了していたのですが、(予備なので)緊急性を要す訳でもないため、1か月以上先の訪問最終日に渡しました。

 

非常に感激してもらえましたし、良い思い出のピークを最後の最後に持っていけたのではないかなと思っています。

 

計算高いと思われるかもしれませんが、(いつ渡しても良いものであれば)ピークエンドの法則を考慮してみても良いかもしれません。

 

 

関連記事

 

ピークエンドの法則に関しては、理学療法評価で上重要な『問診』の記事とも絡めた解説も以下でしているので、興味があれば観覧してみてください。

 

⇒『理学療法に必須な評価「問診」について解説するよ