理学療法士・作業療法士で、「整体院の開業」に興味のある方は多いのではないだろうか?
今回はそんな開業とも関連のある「プラシーボ効果」について記載していく。
プラシーボ効果に関する私の立ち位置
私の鎮痛に対するプラシーボ効果に関する立ち位置は中立だ。
鎮痛に関するプラシーボ効果は明らかに存在し、必ずと言っていいほど臨床における治療成績を左右する。
なので、私たちは臨床において(まっとうな)アプローチをする際に、プラシーボ効果も念頭に入れたほうが良いのは当然と言える。
これは、整体院などを起業している人に関しても同様で、クライアントに自身を売り込む際に、宣伝文句としてプラシーボ効果の反映を色濃く狙っていそうであったりする場合も、クライアントに恩恵がもたらされるのであれば、私は特に不快に思うこと特にない。
他方で、プラシーボ効果は時として強力で、(まっとうなアプローチとの相乗効果ではなく)プラシーボ単独でも効果が表れるほどの威力を発揮する場合もあるり、
それを知っている人間はプラシーボ効果をビジネスとして最大限に利用している場合もあることを、私たちは知っておかなければならない(自身の才能としてあるいは天然で用いている人もいるが)。
例えば、前述した整体院の中にも、エビデンスの乏しいアプローチであっても、口先だけで最大限の効果が生まれる可能性があることを意味している。
プラシーボ効果は再現性が乏しい
プラシーボ効果は再現性が乏しいのが特徴と言える。
従って、誰がプラシーボをかけるかによってクライアントの反応に差はあるし、どんなクライアントにプラシーボをかけるかによっても反応の差は出てくる。
つまり科学的ではない。
つまり、センス、アート的な要素が多分に含まれている。
極論として、もしもプラシーボ効果を自在に操る才能に秀でている人がいるのであれば、(まっとうな)治療技術を学ぶ気など失せてしまうかもしれない。
(そんなことしなくても、口先ひとつで整体院というビジネスを軌道に乗せることが可能だからだ)。
関連記事⇒『新人理学・作業療法士は呪いめいた勉強会の注意点を知っておくべき』
ビジネスを軌道に乗せるということは、その場でクライアントの主観に変化をもたらすことでもあるだろうし、思わせぶりにクライアントを長期にわたってビジネスに引き止め続けることでもあるは思う。
ただし私は、その様なスタンスでクライアントに向き合う姿勢も完全には否定しない。
それでクライアントがハッピーになれるのであれば、Win-Winだと思うし、その理学療法士・作業療法士の事を詐欺師だと思ったり不信がる人が大勢存在するなら、その療法士は廃業してしまうと思われる。
そして、それらの理学療法士・作業療法士が廃業していないという事をみると、どんな手段であれ一定の結果が出せているからであり、社会に貢献している(と言えなくもない)のではないだろうか?
※ただし、中にはセミナーなども熱心に開きながら生き延びている開業セラピストも存在するので、一概には言えないが。
エビデンスに固執した治療技術も素晴らしいがムスッとして頑固そうな近寄りがたい治療家よりも、技術がイマチイでも気さくに相談に乗ってもらえる社交的な治療家のほうが繁盛する可能性があるというのは、町医者であろうとリハビリ職であろうとあてはまるといいうのはイメージしやすいと思う。
リハビリ職種においても、ライアントの能動的な姿勢が治療成果に反映されることも言われており、プラシーボ効果の扱いに長けている人は、クライアントを能動的にし、セルフエクササイズや日常生活にまで影響を及ぼせるといった(徒手療法とは異なった)才能もあわせ持た人も存在していたりする。
これらのエピソードが、『口先だけのセラピストでも、完全には否定はしない」と私が思う理由である。
プラシーボ効果の注意点
技術の高い治療家よりも、技術がイマイチだがプラシーボ効果を引き出す才能に秀でている治療家のほうが繁盛するケースがあることを前述した。
しかし、このエピソードは極論であり、必ずしもその限りではないことは皆さんにも理解してもらえていると思う。
そして、今回は真逆な極論、すなわち「技術至上主義」「権威主義」というものがプラシーボ効果を発揮するケースもあることを付け加えておこうと思う。
例えば、口数は少なくても、考えが論理的で科学的であったり、手先が器用であったり、存在感があったり、威圧感があったりといった人達の中には、他を圧倒するようなオーラを身に着けている人たちがいたりする。
でもって、そういうオーラをまとった人は体格も大きく見えてしまうと言われている。
※メンタリストでは、これを逆手にとって、シークレットブーツなどでわざと背を高く見せることで、威圧感を作り出し、相手との交渉で説得力を高めたりもする場合もあるそうだ。
どの程度、背丈が説得力に影響するかはさて置いて、私も権威のある人に相対した際に大きく見えたことがある。
しかし、その人となりを知らない人達からすれば、(小ぢんまりした)単なるおじさん・おじいちゃんに見えると思われる。
つまり、この時点で私たちにはプラシーボ効果がかかっているのだ。
そして、権威主義によるプラシーボが発揮されるのは、整体院ではなく技術系のセミナーなどが分かりやすい例えと言えるのではないだろうか?
関連記事⇒『医原的プラシーボ効果とは?』
特に宗教的なっており、提案者が教祖のように祭り上げられているケースではプラシーボ効果は絶大となる。
もちろん権威主義自体が悪いわけではなく、素晴らしい人であるからこそ、その様なオーラを放っている可能性は十分にある。
問題は、素晴らしい人以外もオーラを放ってしまうことであり、権威主義によって、いったい誰(どれ)が正しくて、誰(どれ)が間違っているかを判断する目を曇らせてしまうことでなのだ。
その人たちに関して私は悪意をもってとらえることは敢えてしない。
なぜなら、その人たちも悪気があって詐欺師さながらの行為を人に教えている訳ではない場合もあるからだ。
文献によると、「その治療に信念を持って取り組んでいる姿勢そのもの」が相手にプラシーボ効果を与えることが言われており、自己暗示にかかっている人の治療は、相手にも自己暗示を与えてしまうと言われている。
分かりやすく例えると、治療者が「この治療素晴らしい」という強い信念を持っている場合、その思いはクライアントにも伝染し、実際に効果が表れてしまうということだ。
こう考えてみると、気功や霊の類であっても、「だましてやろう」と思いながら行う人より、信念を持って行っている人のほうがプラシーボ効果は起こりやすく、だからこそたちが悪いと言えるだろう。
この様な人たちのセミナーに参加する場合、私たちはプラシーボ効果にかかりやすい環境に身を置いていることを自覚し、冷静に、客観的に、時として批判的思考で物事と判断していく必要があることを意味している。
そして、臨床でプラシーボを活用すると同時に、治療技術を学ぶ際には、それが「まっとうな」技術なのか、プラシーボ効果が色濃く反映していそうな技術なのか、は見極めたほうが良いと感じる。
まとめ:プラシーボ効果と詐欺師
私は、一見するとネガティブに思われるプラシーボ効果であったとしてもWin-Winであるため「完全には否定しない」というスタンスだが、例外も存在する。
それはWin-Lose(自身は勝って、相手は負ける)の関係に持ち込もうとうする人たち、つまり相手から搾取することだけを考えてプラシーボを用いる「いわゆる詐欺師」が世の中には存在するからだ。
単なるプラシーボ効果なだけの詐欺めいた行為を用いる人達は2パターンに分かれる。
すなわち
①詐欺めいた行為を本気で信じ込んで実施しているパターン
と
②詐欺めいた行為を、詐欺目的に実施しているパターン
である。
どちらも、まじめな理学療法士・作業療法士からすれば勘弁してほしい人達だが、特に後者は悪質である。
皆さんもプラシーボ効果について、一度深く学ばれることをお勧めする。
※プラシーボに関しては以下からも関連記事を探すことができるので合わせて観覧すると理解が深まると思う。
プラシーボ効果の関連記事一覧
この記事は、プラシーボ効果についてのいろんな記事が一覧になっている。
興味がある記事があればチェックしてみて欲しい。
理学療法士・作業療法士が知っておくべき『プラセボ効果』のまとめ一覧
先ほどの関連記事とは異なり、7つの記事から構成されたストーリー仕立ての記事となる。
こちらの方も噛み砕いてプラシーボ効果+理学療法・作業療法(主に徒手療法)について解説しているのでわかりやすいと思う。