この記事では、バーグバランスケール(BBS;Berg Balance Scale)というバランス能力を評価する指標について記載していく。

 

※BBSはFBS(Functional Balance Scale)とも呼ばれるが、これらはほぼ同義である。

 

目次

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BBS(FBS)の構成要素・基準値(カットオフ値)

 

BBS(FBS)は座位・立位の姿勢保持、立ち上がり動作など日常生活と関連のある14項目の検査から構成されている。

 

14項目をそれぞれ0~4点で評価し、最大で56点となる。

 

45点以下はバランス障害と考えられ、転倒ハイリスク者のスクリーニングの基準値(カットオフ値)としても用いられている。

 

実施には20分程度の時間を要するが、総得点が高く、小さな変化も検出できるため、総合的なバランス評価バッテリーとして多くの研究で利用されている。

 

また、後述するテスト項目を見てもらえばわかるが、これらは評価としてだけでなく、そのまま転倒予防を目的としたリハビリ(理学療法)として用いることの出きる(あるいは応用できる)要素を含んでいる。

 

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BBS(FBS)の構成要素

 

ベルグバランススケールを構成するのは以下の14項目である。

 

  1. 椅子坐位からの立ち上がり
  2. 立位保持
  3. 座位保持(両足を床につけ、もたれずに座る)
  4. 着座(立位から座位へ)
  5. トランスファー
  6. 立位保持(閉眼での立位保持)
  7. 閉脚立位保持(両足を一緒に揃えた立位保持)
  8. 両手前方到達(上肢を前方へ伸ばす範囲)
  9. 拾い上げ(床から物を拾う)
  10. 振り返り(左右の肩越しに後ろを振り向く)
  11. 360°の方向転換(1 回転)
  12. 踏み台昇降
  13. タンデム立位(片足を前に出した立位保持)
  14. 片脚立位

 

詳細は以降の記事を観覧して頂くこととして、全ての内容は以下の動画に記されているので、「ザックリと確認したい場合」はこちらを観覧したほうが視覚的にイメージしやすいのでおススメである。

 

 

 

以下は、実際の臨床に即した風?に撮影した動画で、こちらもイメージしやすい。

 

 

座位における支持面の広い課題からスタートし、徐々に支持面の狭く難易度の高いバランス課題が盛り込まれている。

 

※必ずしも難易度順に構成されているわけではないが。

関連記事⇒『支持基底面と重心を復習しよう

 

 

BBS(FBS)の方法

 

ここから先は、バーグバランススケールにおける各評価項目の採点方法を記載していく。

 

※以下の検査項目で当てはまる最も低い得点に印をつけていき、その点数を集計する。

 

 

1.椅子坐位からの立ち上がり

 

指示:「手を使わずに立って下さい」

 

4:立ち上がり可能(手を使用せずに安定して可能)

 

3:手を使用すれば一人で立ち上がり可能

 

2:数回試した後であれば、手を用いて立ち上がりが可能

 

1:立ったり、または平衡をとるために最小限の介助が必要

 

0:立ち上がりに中等度、ないし高度な介助が必要

 

 

2.立位保持

 

指示:「つかまらずに2分間立っていて下さい」

 

4:安全に2分間立位保持可能

 

3:監視下であれば2分間立位保持可能

 

2:30秒間立位保持可能

 

1:30秒間立位保持に数回の試行が必要

 

0:介助なしには 30秒間立っていられない

 

※2分間安全に立位保持できれば、座位保持の項目は満点とする。

 

※なので、座位保持の項目はとばして、「4.着座(立位から坐位へ)」の項目にすすむ。

 

 

3.座位保持(両足を床につけ、もたれずに座る)

 

指示:「腕を組んで2分間座って下さい」

 

4:安全に2分間座位保持が可能

 

3:監視下で2分間座位が可能

 

2:3秒間座位保持が可能

 

1:10秒間座位保持が可能

 

0:介助なしには 10秒間の座位保持が困難

 

 

4.着座(立位から座位へ)

 

指示:「座って下さい」

 

4:ほとんど手を使用せずに安全に座ることが可能

 

3:手を用いてしゃがみ動作を制御する

 

2:下腿後面を椅子に押しつけて、しゃがみ動作を制御する

 

1:一人で座れるがしゃがみ動作の制御ができない

 

0:座るのに介助が必要

 

 

5.トランスファー

 

指示:

「車椅子からベッドに移り、また車椅子へ戻って下さい」

「まず肘掛を使用して移って下さい。次に肘掛を使用しないで移って下さい」

 

4:ほとんど手を使用せずに安全にトランスファーが可能

 

3:手を十分に用いれば安全にトランスファーが可能

 

2:言葉での誘導もしくは監視があればトランスファーが可能

 

1:トランスファーに介助者1名が必要

 

0:安全確保のために2名の介助者が必要

 

 

6.立位保持(閉眼での立位保持)

 

指示:「目を閉じて 10 秒間立っていて下さい」

 

4:安全に10秒間、閉眼立位保持可能

 

3:監視下で10秒間、閉眼立位保持可能

 

2:3秒間の閉眼立位保持可能

 

1:閉眼で 3 秒間立位保持できないが、ぐらつかないで立っていられる

 

0:転倒を防ぐため介助が必要

 

 

7.閉脚立位保持(両足を一緒に揃えた立位保持)

 

指示: 「足を揃えて、何もつかまらずに立っていて下さい」

 

4:一人で閉脚立位ができ、そのまま1 分間安全に立位保持可能

 

3:一人で閉脚立位ができ、そのまま監視下にて1分間立位保持可能

 

2:一人で閉脚立位ができるが、30秒間の立位保持は不可能

 

1:閉脚立位をとるのに介助が必要だが、閉脚してしまえば15秒間の立位保持可能

 

0:閉脚立位をとるために介助が必要で、15秒の立位保持も不可

 

※ここから先に項目(8以降の項目)は、支持せずに立った状態で実施する。

 

 

8.両手前方到達(上肢を前方へ伸ばす範囲)

 

指示:

「両手を90°上げて下さい。指を伸ばした状態でできるだけ前方に手を伸ばして下さい」

 

①測定者は、被験者が手を90°させたときに指の先端に定規を当てる。

②前方に伸ばしている間、定規に指先が触れないようにする。

③最も前方に傾いた位置で指先が届いた距離を記録する。

 

このテストは『FRテスト(ファンクショナルリーチテスト)』とも呼ばれる。
関連記事⇒『FRテストを動画で解説!

 

4:確実に25㎝以上前方へリーチ可能

 

3:12.5㎝以上安全に前方へリーチ可能

 

2:5㎝以上安全に前方へリーチ可能

 

1:前方へリーチ可能だが、監視が必要

 

0:転倒を防ぐために介助が必要

 

 

9.拾い上げ(床から物を拾う)

 

指示:「足の前にある靴(あるいはスリッパ)を拾い上げて下さい」

 

4:安全かつ簡単に靴を拾うことが可能

 

3:監視下にて靴を拾うことが可能

 

2:拾えないが、(独力で平衡を保ったまま)靴から2.5~5㎝の距離までリーチできる。

 

1:拾うことができず、監視も必要。

 

0:転倒しないように介助が必要で、検査ができない。

 

 

10.振り返り(左右の肩越しに後ろを振り向く)

 

指示:

「左肩越しに後ろを振り向いて下さい。それができたら今度は右肩越しに後ろを振り向いて下さい」

 

4:上手に体重移動しながら、両側から振り向ける

 

3:片側のみ振り向きができる。反対側への振り向きでは体重移動が少ない

 

2:横までしか振り向けないが、バランスは保てる

 

1:振り向くときに監視が必要

 

0:転倒しないように介助が必要

 

 

11.360°の方向転換(1 回転)

 

指示:

「完全に1回転し、いったん止まり、その後反対方向に1回転して下さい」

 

4:それぞれの方向に4秒以内で安全に360°回転が可能

 

3:一側のみ、4秒以内で安全に360°回転が可能

 

2:360°回転が可能だが、両側とも4秒以上かかる

 

1:近位監視、または言語的指示(言葉での手がかり)が必要

 

0:回転中介助が必要

 

 

12.踏み台昇降

 

指示:

「足台へ交互に足をのせて下さい。各足が4回ずつ足台にのるまで続けて下さい」

 

4:支持なしで安全にかつ20秒以内に8回足のせが可能

 

3:支持なしで完全に8回足のせが可能だが、20秒以上かかる

 

2:監視下であるが、介助不要で、完全に4回足のせが可能

 

1:最小限の介助で、完全に 2 回以上の足のせが可能

 

0:転倒しないよう介助が必要。または施行困難

 

 

13.タンデム立位(片足を前に出した立位保持)

 

指示:

「一方の足をもう片方の足のすぐ前にまっすぐ置いて下さい。もしできないと感じたならば、前になっている足の踵を、後ろになっている足のつま先から十分に離れたところに置いてみて下さい」

 

※上記は声掛けよりも、実際に検査者自身が示してあげたほうが分かりやすい。

※タンデム立位に関してはこちらを参照⇒『タンデム肢位をバランス練習に活用しよう

 

4:自分でタンデム立位を取ることができ、30秒保持可能

 

3:(タンデム立位ではないものの)自分で足を他方の足の前に置くことができ、30秒保持可能

 

2:自分で足をわずかにずらし、30秒保持可能

 

1:足を出すのに介助を要するが、15秒保持可能

 

0:足を出すとき、または立位時にバランスを崩してしまう

 

 

14.片脚立位

 

指示:「どこにもつかまらず、できるだけ長く脚足で立っていて下さい」

関連記事⇒『片脚立位保持テストで高齢者を評価

 

4:単独で片足を上げ、10秒以上保持可能

 

3:単独で片足を上げ、5~10秒保持可能

 

2:単独で片足を上げ、3 秒もしくはそれ以上保持可能

 

1:片足を上げることはできるが、片足立ちを 3 秒保持することができない

 

0:試行不可能、もしくは転倒予防に介助が必要

 

参考:
高齢者の機能回復のための短期集中リハビリプログラムの実効性とそのガイドライン策定に向けて
運動療法学―障害別アプローチの理論と実際

 

転倒予防テストの関連記事

 

BBS(Berg Balance Scale)以外の転倒予防に関するテストを以下の記事にまとめているので、こちらも参考にしていただきたい。

 

転倒予防テストのカットオフ値まとめ

 

 

また、以下の表からも直接ジャンプできるので、興味のあるテストがあれば観覧してみてほしい。

 

テスト カットオフ値
膝伸展筋力 1.2Nm・kg
FRテスト 15cm未満
片脚立位保持テスト(開眼) 5秒以下
TUGテスト 13.5秒以上
歩行速度 毎秒1m未満(横断歩道が渡りきれない)
5回立ち座りテスト 14秒以上
立位ステッピングテスト 17秒以上