この記事では、ROM exercise(range of motion exercise/関節可動域運動)についての一般論を記載していく。

 

他動的ROMの制限因子

 

ROM exercise(関節可動域運動)を実施する前に、まずは他動的ROMの制限因子を理解ておこう。

 

ROMの制限因子は以下になる。

 

①筋緊張の異常

②靭帯・腱の伸張性

③関節の構築学的変化

④痛み

⑤浮腫や血液循環の状態

・・・・・などなど。

 

これらはエンドフィールによって評価することが可能である。

⇒『エンドフィールで治療選択!

 

あるいは、自動運動・他動運動・抵抗運動(等尺性収縮)を実施することで、ROM制限の原因を推察するという考えもある。

⇒『関節副運動を補足します

 

または、等尺性収縮を加えることによって関節可動域が改善するかどうかを指標とする場合もある。

⇒『PIRで反射的短縮か、それ以外の問題かを鑑別!

 

いずれにしても、これらの評価を組み合わせながら、複合的にROM制限の因子を解釈していく。

 

 

自動的ROM運動が正常に行えるための因子

 

今度は、自動的なROM運動が正常に行えるための因子を記載していく。

 

前述したROMの制限因子と逆説的な内容も多いが、自動的ROM運動なので、筋出力や筋の協調的な収縮も重要となる。

 

①関節を構成する軟部組織に拘縮がないこと

②関節に構築学的な欠陥がないこと

③疼痛がないこと

④主動作筋の筋力と拮抗筋の伸展性が十分あること

⑤関節運動を阻害する周囲筋の痙性がないこと

⑥共同筋が十分な機能を果たすこと

 

 

自動運動では、共同筋の協調的な収縮と、拮抗筋の正常な伸張性(正常な筋緊張である点も含む)が大切になるが、これらをイメージしやすい例の一つに『肩甲上腕リズム』が挙げられる。

 

もし肩甲上腕リズムがピンとこない人がいれば、動画付きで以下で解説しているので参考にしてみてほしい。

⇒『肩甲上腕リズムは嘘?本当?

 

また、自動運動と他動運動におけるROMの違いについては以下の記事も併せて観覧してもらうと理解が深まると思う。

 

関節可動域運動(自動運動・他動運動の違い+弾性域)

 

 

ここから先は、『他動的ROM exercise』の事をROMexerciseとして記載していく。

 

 

ROM exercise(関節可動域運動)のポイント・注意点

 

ROM exercise(関節可動域運動)のポイント・注意点をランダムに記載していく(順番は特に関係ない)

 

①運動学、運動生理学、機能解剖学の知識に基づいた方法で行う。

 

②高齢者は加齢に伴う、関節の退行性変化が関節にも存在しているので、若年者と同様の感覚で治療を行わない。

 

③片麻痺患者は肩手症候群を発症する場合があるので、不用意な関節可動域運動は行わない。

 

④正常可動域である生理的な可動域を求めるのか、日常生活活動において最低限必要である可動域を求めるのかなど目的を定め、運動の強度、方法を決定する。

 

⑤手術の術式、麻痺の程度、筋緊張異常の程度を把握しておく。

 

⑥各種の日常生活活動動作に必要な各関節可動域を把握しておく。

 

⑦関節可動域制限が予想される場合は、早期から関節可動域運動を施行するのがよい。

 

 

ROM exercise 関連記事

 

このサイトではROMexの関連記事としては関節モビライゼーションやストレッチングを紹介しているので、こちらも併せて観覧してみてほしい。

 

モビライゼーションとは!定義/適応・禁忌/方法を紹介

 

ストレッチング、ちゃんと知ってる?

 

 

関節固定が関節周囲軟の部組織に及ぼす影響

 

外傷やギプス固定により関節を固定すると関節は硬くなり、可動域制限を引き起こす。

 

そんな「関節固定が関節周囲の軟部組織に及ぼす影響」について記載して終わりにする。

 

関節を固定すると生じる現象は以下の通り。

 

・結合組織の伸張性低下

・関節内の癒着

・瘢痕組織

・筋の短縮

 

 

結合組織の伸張性低下

 

関節を固定すると関節周囲の軟部組織を形成する結合組織の伸張性が低下し可動域制限が生じる。

 

長期にわたる関節固定によってグリコサミノグリカンの密度が減少し、結合組織は水分を失うことになる。

 

組織内の水分は通常結合線維間の空間を保持する役割を果たしているが、水分が失われることで結合線維同士の間隔は狭まり線維間で架橋が形成される。

 

このことによって結合組織の伸張性は低下する。

 

 

関節内の癒着

 

関節を固定すると、関節内に線維性脂肪が貯留する。

 

さらに固定が持続すると線維性脂肪が線維化し、強靭で高密度の結合組織が形成され近接する関節が癒着を起こす。

 

 

瘢痕組織

 

組織が損傷を受けると初期炎症反応を起こし、近くの結合組織から線維芽細胞が損傷組織に侵入してくる。

 

そしてコラーゲンの先駆物質を生成し分泌し始める。

 

続いてコラーゲンが形成されそれが結果的に線維性瘢痕となる。

 

その瘢痕の程度と範囲は初期炎症反応の重傷度の目安となる。

※ひどい浮腫を伴った重度の損傷では広範に瘢痕を形成する。

 

こうした瘢痕組織は関節可動域制限を増悪させる。

 

もともと柔軟性に富んだ組織は瘢痕形成によって伸張性が失われる。

 

 

筋の短縮

 

筋は引き伸ばされた状態で固定されても短縮は起こさず、短縮した状態で固定されたときにのみ短縮を起こす。

 

筋が短縮位で固定されると、筋線維から連続してサルコメア(筋節)が失われ、収縮性のたんぱく質が破壊されて筋終末から除去される。

 

筋が短縮位で固定されると筋内結合組織の構造は変化する。

※筋の短縮に関してはこちらも参照⇒『構造的短縮を分かりやすく解説!

 

 

ROM(関節可動域)の関連記事

 

 

ROM(関節可動域)の評価としてはROMテストがある。

リハビリ・看護職種では常識的な知識ではあるが、新人さんや学生さんは参考になる点があるかもしれない。

 

ROMテスト(関節可動域検査)まとめ

 

 

「関節固定」とまでいかなくとも、高齢者などが生活不活発になりることで軟部組織の変性が起こってしまう事がある。

そんな「生活不活発による弊害」を分かりやすく解説した記事が以下になる。

高齢者のリハビリ(理学療法・作業療法)に携わっている方は、是非一度観覧してみてほし。

 

生活不活発病(廃用症候群)を解説!