この記事では、変形性膝関節症に対するリハビリに関して「理学療法ハンドブック 健康寿命」を引用しつつ自主トレーニングとして活用できる運動療法を紹介していく。 

 

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変形性膝関節症に対する筋力トレーニング(運動)

 

『理学療法ハンドブック 健康寿命』に掲載されている運動を紹介するので自主トレーニングとして活用してみてほしい。

 

ちなみに、これらの運動は(一次的予防というよりは)二次予防・三次予防で活用される。

 

※特に、生活機能が低下した要介護ハイリスク者(ロコモティブシンドローム・サルコぺニア・フレイルにも該当しそうなケース)には大切。

 

※ロコモティブシンドローム・サルコペニア共に進行することで様々な身体不調(変形性関節症などの運動器疾患含む)に派生するため、それを予防・改善するための運動と捉えることも出来るという事。

 

関連記事:

⇒『ロコモティブシンドロームの予防と運動

⇒『サルコペニアとフレイル(+違い)

 

ではでは、紹介されている変形性膝関節症に対する運動(トレーニング)を記載していく。

 

筋力トレーニングを自主トレに! 「理学療法ハンドブック 健康寿命」

 

『理学療法ハンドブック 健康寿命』で紹介されている筋力トレーニング(運動)は以下の通り。

・ひざの押し下げ運動(パテラセッティング)

・スクワット運動(大腿四頭筋を含めた下肢伸展筋のCKCトレーニング)

・ひざのばし運動(大腿四頭筋のCKCトレーニング)

・ふともも上げ運動(腸腰筋のトレーニング)

・ブリッジ運動(臀筋群のトレーニング)

・かかとあげ運動(下腿三頭筋のトレーニング)

・あしの横あげ運動(中殿筋トレーニング)

・腹筋運動

 

 

 

 

 

 

運動時のポイント

 

  • 運動を1セット10~20回の回数で3~4セット実施する。
  • 運動中に痛みや疲労感を感じた場合はすぐに中止する。
  • 5秒間かけてゆっくりと行い、5秒間保持し、5秒間で元にもどす。
  • 翌日に筋肉痛やだるさを感じた場合は運動量を減らすなど、自分にとって無理のないように調整する。

 

 

変形性膝関節症に対する筋力増強訓練

 

変形性膝関節症に対する筋力増強は、(一次的予防というよりは)二次予防・三次予防で活用される。

※特に、生活機能が低下した要介護ハイリスク者(サルコペニア・フレイルに該当する場合)は特に大切。

 

変形性関節症に対する筋力増強訓練としては、以下の2つに分類される。

  • CKC(荷重位)での筋力増強
  • OKC(非荷重位)での筋力増強

 

でもって、筋力増強練習中に疼痛が誘発しないよう工夫する必要があり、三次予防として筋力増強訓練を活用する場合には、CKCでは疼痛が誘発され逆に症状を悪化させる可能性があるため注意する。

 

関連記事⇒『CKCとOKC(+違い)

 

 

股関節周囲筋の筋力強化

 

股関節周囲筋は安定性(特に歩行時の動的安定性)に寄与し、弱化すると膝へも影響を与える。

※筋力増強によって歩行の安定性や下肢軸の動的垂直化が図れる。

 

股関節伸展筋の筋力トレーニング:

活動的な人は、歩行時の推進力を得るために様々な要素を活用するが、その一つが「歩行立脚後期における大殿筋の求心性収縮を伴いながらの股関節伸展運動」となる。

一方で、大臀筋の筋力(あるいはエンドレンジ付近での収縮機能)が弱化していると、下部腰椎の伸展・骨盤前傾などで代償することもあるため、それらも含めて評価・治療を組み立ててみるのも一つの考え。

その様な考えを採用する場合、股関節伸展可動域が十分かをチェックして、必要に応じて治療する必要がある。

 

関連記事

⇒『大殿筋とブリッジ運動

⇒『腸腰筋のストレッチング

⇒『大腿直筋のストレッチング

⇒『モビライゼーション(股・膝・足関節)の「方法」と「成功の秘訣」!!

 

 

股関節外転筋の筋力トレーニング:

例えば、股関節外転筋の弱化によって前額面ではトレンデレンブルグ徴候やドゥシャンヌ徴候の様な現象を起こすが、膝では(前述した)ラレレルスラストが起こる要因の一つになる。

そもそも内反変形・脚長差などでラテラルスラストが起こりやすくなるかもしれないが、股関節周囲筋の弱化で助長する可能性があるという意味。

前者は構造的問題だが、後者は機能的問題であり改善可能な要素と言える。

 

筋力トレーニングの詳細は以下を参照

⇒『中殿筋の筋力トレーニングを解説

 

※上記リンク先に示した「側臥位での股関節外転運動」時に、ゆっくりと下肢を降ろすという遠心性収縮機能も強化しておくことは重要となる。

 

股関節外転筋は歩行時において等尺性・遠心性収縮によって前額面での運動を制御しているが、特に大腿筋膜張筋は中殿筋の弱化によって過剰な負担を強いられることもある(二次的な機能障害を呈することもある)。

その様な場合は、中殿筋を強化するとともに、大腿筋膜張筋のストレッチングの施行もマッスルインバランスの解消に重要となってくる。

 

関連記事⇒『大腿筋膜張筋の作用って何だ?

 

 

膝関節周囲筋の筋力強化(特に大腿四頭筋)

 

膝関節への圧迫、弛緩は関節軟骨の強さや弾力性を増加させると言われている。

 

また、血流の増加や軟骨への栄養物の増加により軟骨の退化を防ぎ、腫脹を減少させ痛みの減少も図れる。

 

※一度変形した関節・摩耗した軟骨が修復されるわけではないが、これ以上悪化しないよう予防することは重要となる。

 

でもって、変形性関節症に対して症状を誘発せずに上記の役割を果たす大腿四頭筋のトレーニングとしてはパテラセッティングなどがある。

※大腿四頭筋の等尺性収縮

⇒『パテラセッティングとは?目的・効果・方法・工夫などを徹底解説!!

 

 

ちなみに、膝周囲筋の機能障害として大腿四頭筋の筋萎縮・筋出力低下(エクステンションラグも含む)が起こるのだが、「変形性膝関節症と大腿四頭筋の筋機能低下の因果関係」として以下が議論されることがある。

  • 膝が痛いから大腿四頭筋の筋萎縮・筋出力の低下が生じる。
  • 痛みを取るのが先決で、「痛いから動かせない人」に筋トレさせても意味ないよ

 

確かにその通りで、そもそも前述したように、もし炎症を有しているのであれば局所における積極的なリハビリ(理学療法)は禁忌となる。

 

あるいは関節水腫が筋抑制に結びついている場合は、筋トレより前に「医師に水を抜いてもらう」という選択肢もありかもしれない。

 

※関節水腫に関しては以下も参照

⇒『関節水腫による膝蓋跳動(floating patella)を解説

 

※適度な膝刺激(筋トレも含む)によって関節水腫が緩和するとの考えもあるが、ケースバイケースなので割愛する。

 

 

そして、筋トレが重要なのは上記以外のケースであり、膝関節周囲筋の筋力トレーニングとしては以下を参照。

⇒『大腿四頭筋訓練を解説!高齢者のリハビリトレーニングに重要だよ

 

※もちろん、筋トレ中に膝痛を誘発させてしまうものは実施しない(ただし、これも厳密にはケースバイケースだが、これを語りだすと記事が終わらないので割愛する)。

 

※また、「筋トレ中に痛みが出現せず、実施後にベースラインとする動作で痛みが誘発されてしまうケース」では、「筋トレが悪かった」というより「筋トレが関節に起こした反応機械的刺激」つまりは「関節への機械的刺激」に着目すべきであり、その機械的刺激によって起こる反応はクリニカルリーズニングに利用できる反応といえる(仮に筋の等尺性収縮であっても関節は刺激されている

 

 

その他、SLR運動や、股関節内転筋トレーニング(あるいは内転筋を収縮させたうえでの膝伸展運動)も推奨される場合があり、SLR運動や股関節内転筋に関しては以下の記事も併せて観覧してみてほしい。

 

国内で行われたSLR運動に関するエビデンスについては、20回を1セットとし、午前午後各2セット8週間のホームエクササイズで消炎鎮痛薬の内服と同等以上の疼痛緩和効果がみられたとの報告がある。

 

SLR運動に関しては以下の記事も参照。

⇒『SLR(下肢伸展拳上)運動のメリット・デメリット

 

 

 体幹を鍛える

 

体幹の安定性は膝への安定性に直結するため、体幹インナーマッスルの強化も大切となる。

関連記事⇒『インナーマッスルの強化を解説!

 

ただし体幹インナーマッスルは、前述した「中殿筋トレーニング(側臥位)」「大腿四頭筋トレーニング(端坐位)」などを実施する際のポジショニングに留意することでも賦活できる。

 

また、腸腰筋のトレーニングも簡便で高齢者にも実践しやすい。

関連記事⇒『腸腰筋の筋力トレーニングを解説