急性腰痛は「疾患」ではなく「症状」である。

 

そして、「急性腰痛という症状」を起こしてしまう疾患は様々あり、今回はそれらの疾患をまとめてみる。

 

ここに記載する疾患はリハビリ(理学療法)の対象ではないものがほとんどだが、急性腰痛の中にはこれらも含まれていることを知っておくことは有意義なのではないだろうか?

 

※特に、介護保険でのリハビリ(通所・訪問リハビリ)では万が一にも遭遇してしまう疾患もあると思う。

 

※『問診』も絡めて記載しているので、その辺りも臨床で活用してみてほしい。

 

まぁ、リハビリ(理学療法)の対象でないどころか、ほぼ遭遇することすらないであろう疾患も含まれているが、「頭の体操」だと思って観覧してみてほしい。

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目次

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重篤な疾患に伴う急性腰痛

 

ここでは、急性腰痛を発症する重篤な疾患を記載していく。

 

腰椎圧迫骨折

 

腰椎圧迫骨折は、外的な圧迫によって腰椎椎体がつぶれてしまう疾患である。

 

高齢者(特に女性)に多く、くしゃみや尻もちで起こることもある。

 

高齢者に多いというのは特徴的で、若い人が急性腰痛を発症した際には別の疾患をまずは疑ってかかる必要がある。

 

なぜ高齢者(特に女性)に多いかというと、加齢に伴って低下する骨密度が影響している。

 

この「骨密度」という点が若い人に起こりにくい理由となるが、もし仮に若い人で圧迫骨折が生じているならば、骨密度を把握する必要がある。

 

骨密度が低い場合は「若くして骨密度が低下してしまう要因で除外しておきたい疾患」として悪性腫瘍も疑ったほうが良いということになる。

 

※悪性腫瘍の中でも特に前立腺がん・乳がん・肺がんは骨に転移しやすいと言われている。

 

※悪性腫瘍は急な「体重減少・易疲労性・食欲不振」などの問診も含めて聞いていくと良いかもしれない。

 

 

椎体硬膜外血腫

 

脊髄は内側から柔膜・くも膜・硬膜の三層構造で形成される『髄膜』に覆われている。

 

そして、硬膜の外側に血腫(血の塊)ができることによって神経などが圧迫されて痛みを誘発してしまうことがある。

 

体質や薬の服用などで血が止まりにくい人が、腰を捻るなどの外傷で発症することが多く、激しい腰痛を引き起こしてしまう。

 

例えば「抗凝固剤」は、静脈血栓症・心筋梗塞症・肺塞栓症・脳塞栓症・脳血栓症などの治療や予防に用いられる「血液をサラサラにする薬」ということになり、裏を返せば出血傾向となる薬剤ということになる。

 

高齢者は「血液をサラサラにする必要がある人」も多く存在するが、もしワーファリンを服用していて何らかのきっかけ(あるいは受傷機転が明確でない場合もあるが)で急性腰痛を発症した場合、安易に筋骨格系(運動器)の問題としてとらえるのではなく、リスク管理として椎体硬膜外血腫を疑ったほうが良いかもしれない。

 

もちろん外来患者の場合は医師による鑑別がなされている可能性が高いものの、通所・訪問リハの分野では「とりあえず何とかしてほしい」との依頼で評価せざるを得ない場面も存在するので知っておいて損は無い知識である。

 

 

大動脈解離(+破裂)

 

体の中心をとおる大動脈の内側が裂けて全身への血流が阻害される疾患である。

 

腹部大動脈に解離が生じた場合では激しい腰痛が起こってしまうことがある。

 

大動脈解離による腰痛かどうかはエコー(超音波)検査にて鑑別していく。

 

レッドフラッグの中でも特に緊急性の高い疾患なため、何はともあれ真っ先にエコー検査をして大動脈解離である可能性を除外しておく必要がある。

関連記事⇒『レッドフラッグのチェックが腰痛治療に必須な件

 

 

よく臨床医が遭遇する急性腰痛を呈する疾患

 

ここから先は、臨床医がよく遭遇する急性腰痛を呈する疾患を記載していく。

 

 

尿路結石

 

尿管に結石が出来てしまう疾患である。

 

明け方に結石が出来て痛みが発症してしまうことが多い傾向にある。

 

明け方に多い理由としては、寝ている間に尿が濃縮されてしまうため、結石が出来やすいからとされている。

 

そのため、「明け方に急性腰痛で病院へ運び込まれてきたクライアント」な場合は、「急性腰痛を呈する疾患」の中でも、この疾患に着目する優先順位は高くなる。

 

 

急性膵炎症

 

日常的なアルコールの飲みすぎや胆石が原因で起こる膵臓の炎症を指す。

 

鳩尾(みぞおち)や背中に激痛が走り、意識消失やショック状態に陥ることすらあるとされている。

 

 

(筋骨格系の問題で起こる)ぎっくり腰

 

筋骨格系の問題で起こるぎっくり腰は、椎間関節が原因であるなど様々言われているが、1か月程度で自然治癒される可能性が高いのが特徴である。

 

ここでは腰部の痛みのみならず、神経学的テストを実施して神経所見(+画像所見)が得られるかが重要となる。

 

すなわち椎間板ヘルニアも生じている場合には対応が異なってくる。

 

その他の急性腰痛が生じる疾患として、化膿性脊椎炎症・腎梗塞(腎臓に通っている血管が詰まってしまうこと)などがある。

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急性腰痛の関連記事

 

急性腰痛の中でも、リハビリ(理学療法)の対象となる疾患については以下に記載しているので観覧してみてほしい。

 

急性腰痛(ぎっくり腰)の激痛対処法とは?

 

 

あるいは、急性腰痛の中に含まれていることのある「椎間板ヘルニア」にかんしては以下を参照。

 

椎間板ヘルニアの対処法とは?

 

 

また、ここで記載されているように臨床推論していくために問診は重要なツールなのだが、そんな『問診』については以下を参照してみてほしい。

 

理学療法士が知っておくべき問診を徹底解説!

 

 

問診関連の記事としては、似たような記事を記載したことがあるので、興味がある方はどうぞ。

 

診断的治療と試験的治療