今回は、「新人理学・作業療法士へのオススメ本」と題して『正しく理想的な姿勢を取り戻す 姿勢の教科書』を紹介しようと思う。

 

また、2018年9月には姉妹書『不良姿勢を正しくする姿勢の教科書 上肢・下肢編』も発売されており、この記事で興味が出た方はこちらもチェックしてみてほしい。

 

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正しく理想的な姿勢を取り戻す 姿勢の教科書(竹井仁著:ナツメ出版)

 

私は基本的に万人にお勧めできるものなどは存在しないと思っているタイプの人間だが、そんな私が「筋骨格系の問題」に携わっている全てのセラピスト(理学療法士・作業療法士・柔道整復師・整体師などなど)に参考になるのではと思えた本が、「正しく理想的な姿勢を取り戻す 姿勢の教科書(竹井仁著:ナツメ出版)」である。

 

この本は2015年11月に発売された一般書籍で、1944円と医学書籍に比べてローコストなのも特徴だ。

 

一般書籍なためか、平易な表現(ただしセラピストにとって難解と思わせない程度という意味であって、一般の人には難しく感じる絶妙なレベルな表現)で書かれてあり、新人セラピストや経験年数の浅い方でも楽に頭に入ると思われる。

 

※著者自身も一般の人ではなくセラピストに向けて書かれていることが、(内容自体からも)後書きからも分かる。

 

また、3Dイラストや図表も綺麗で分かり易い工夫がなされているため、視覚的にも頭に入ってきやすい点も理解を後押ししてくれると思われる。

 

 

そして一番重要な中身に関しても非常に充実していると感じる。

 

著者は徒手理学療法を学んでいる人であれば知らない人はいないくらいの有名人だが、そんな著者が「徒手療法を用いる人」も、(そしてこれが一番重要な点ですが)「徒手療法をあまり用いない人」も参考になるように作成している教科書となっている。

 

分かり易くは書かれているが、中身は非常に濃い内容となっており、「有名なセラピストではあるものの表面的で内容が浅く、出し惜しみ感がある」というものではなく、かなりの熱量を帯びている印象を受ける。

 

この点に関しては、経験年数が高いセラピストほど「様々な要素が緻密に詳細に分かっており、それらの情報を練りに練った上で、あえて分かり易く噛み砕いて表現されている内容」である点に気づけるのではと感じる。

 

タイトルは姿勢となっており、もちろん姿勢について書かれているが、非常に多彩な切り口からの解説がなされており、これらがすべて理解できたなら1944円とローコストでありながらも、下手な医学書数冊分、あるいは下手なセミナー数回分の価値が見いだせるのではという印象を受ける。

 

また、徒手療法への言及はほとんど無いため、どんなセラピストにも参考になると前述したが、徒手理学療法を学んでいるのであれば、これらメカニカルな刺激をどの様に応用できるかといった視点でもインスピレーションを受けることが出来ると思われる。

 

※あるいは、徒手的な刺激をセルフエクササイズに落とし込んでいくという意味でもヒントが詰まっていると思う。

 

 

「姿勢の教科書」の各章の構成

 

ここからは「姿勢の教科書」の各章に関して記載してみる。

 

「1章:姿勢とは何か」「2章:重心と姿勢の関係」では、
書籍の導入といった側面が強い印象を受けた。
姿勢について一般的な事が書かれてある。

 

 

「3章:姿勢調整に関わる構造の安定性」では、
は他動的制御・自動的制御(+神経的制御)と題して、安定性に関与する要素に言及している。
他動的制御に関しては、脊柱に関する基本的なポイントを詳細かつ分かり易く解説するとともに、筋膜についても解説がなされている。
自動的制御に関しては、体幹における「インナーマッスルとアウターマッスル」「コアの重要性」などが書かれてある。

 

良く知られていることではあるが、多裂筋・横隔膜・腹横筋・骨盤底筋群の連動についても解説がなされており、個人的には以下の点が興味深く感じた。
※また、各ポイントの解説で終わりにするのではなく、自動的制御に関するセルフエクササイズにも詳細に言及されている。

 

・・・・・・・・ここから引用・・・・・・・・・・・・

 

『腹筋群が強く収縮すると、骨盤底筋群全体が強く収縮します。
恥骨尾骨筋は腹横筋と、腰骨尾骨筋と尾骨筋は腹斜筋と一緒に収縮する傾向があります。恥骨直腸筋は腹直筋と関連して動きます。
腸骨尾骨筋と尾骨筋の両側性の収縮は仙骨を後屈させます』

 

協調して働く筋:

骨盤底筋群 腹筋群

恥骨尾骨筋 腹横筋

腰骨尾骨筋 腹斜筋

尾骨筋

恥骨直腸筋 腹直筋

 

『多裂筋は仙骨を前屈させる働きがありますので、仙骨を後屈させる肛門挙筋・尾骨筋と協力して仙骨の位置をコントロールします。』

 

・・・・・・ここまで引用・・・・・・・・・・

 

 

「4章:不良姿勢改善のための一般的指針」では、不良姿勢によって呈し易いマッスルインバランスに言及されている。
マッスルインバランスはヤンダが提唱した概念で、身体には「優位はまたは短縮し易い筋」と「延長または弱化し易い筋」が存在し、不良姿勢によってこれらの不均衡が助長され機能不全が生じるという考えを指す。

 

これらの点を踏まえて(非常にザックリと表現すると)「優位・短縮している筋⇒軟部組織モビライゼーションなど」「弱化・延長している筋⇒筋力増強」というように、それぞれの軟部組織に合ったアプローチをしていくことになる。
※詳細を知りたければ『書籍:ヤンダアプローチ―マッスルインバランスに対する評価と治療』もお勧めだ。

 

 

「5章:立位姿勢の評価と修正エクササイズ」では、典型的な不良立位姿勢の代表例として『後彎前彎型(kyphosis-lordosis pouture)』『後彎平坦型(sway-back posture)』『前彎型(lordosis posture)』を挙げ、その特徴が詳細かつ丁寧にまとめられている。

また、不良立位姿勢や、不良座位姿勢でありがちな「頭部前方位と胸椎後彎のアライメント・症状・原因」に関してもフローチャートを交えながら分かり易い解説が展開されている。

※それ以外にも姿勢による下肢や肩甲帯への影響など多岐にわたって解説がなされている。

 

そして、これらに対する基本的かつ詳細なセルフエクササイズも充実しているのもポイントと言える。

※膝に関してはマリガンコンセプトに沿った介入方法(+セルフエクササイズ)も紹介されていたりする。

※関連記事⇒『HP:マリガンコンセプト

 

 

「6章:座位姿勢の評価と修正エクササイズ」も興味深い内容で、

「7章の臥位姿勢の評価と不良臥位姿勢の修正」では理想的な臥位姿勢を保持するための枕の調整方法が書かれてある。

 

この方法は枕外来とコンセプトが似ているので以下の記事も参考にしてみてほしい。

関連記事⇒『整形外科枕の作り方

 

 

姿勢の教科書に関する、その他の雑感

 

セルフエクササイズはアライメントの修正に関して、軟部組織(筋・筋膜が中心)のストレッチング(やセルフ筋筋膜リリース)に加え、コアエクササイズを含んだ運動療法、関節の矯正(マリガンコンセプト様な概念を含む)などが含まれている。

 

これらのスタンダードなエクササイズはそのまま実施しても良いが、スタンダードなだけに様々なインスピレーションを与えてくれるのではと思う。

 

そして、各種の問題とリンクさせてエクササイズが提示されているため、活用もし易いのではと感じる。

 

当分の間は、セラピストの間でバイブルになりそうな予感を秘めた本なため、冒頭では誰にでもおススメ出来る本!とさせてもらった。

 

以下のアマゾンレビューでは、今のところ投稿者は少ないものの、高得点となってる。

⇒『正しく理想的な姿勢を取り戻す 姿勢の教科書

 

ローコストな一般書籍でのこれだけ充実した内容であるにもかかわらず批判できるとすれば、よっぽど一般書籍に過剰な期待を寄せ過ぎている一部の人くらいだと思われる。

 

ただ、(誰にでもおススメできるとか書いてきて、最後の最後に言うのも何ですが)やはりセラピストの相性というものは存在するので、出来れば書店で手に取って確かめてみてほしい。

また、以下のサイトでは(数ページのみですが)中身を観覧することが可能だ(目次なども載っている)。

⇒『外部リンク:ナツメ社 正しく理想的な姿勢を取り戻す 姿勢の教科書

 

 

 

関連書籍『不良姿勢を正しくする姿勢の教科書 上肢・下肢編』

 

冒頭でも記載したが、2018年9月には、姉妹書である『不良姿勢を正しくする姿勢の教科書 上肢・下肢編』も出版されている。

 

姿勢の教科書を補完する内容でもあるため、是非合わせてチェックしてみてほしい。