理学療法士・作業療法士が触診の勉強(や機能解剖の知識を整理する)をするのにおススメな書籍として、「運動療法のための機能解剖学的触診技術」について記載していく。
この書籍は「上肢・体幹編」と「下肢編」の2冊で構成され、どちらも触診の勉強をしたり、骨格・筋・神経のポイントをザックリと復習した時に便利である。
機能解剖学的触診技術の特徴
学生時代に解剖学の教科書は持っていたが、それとは別に「筋骨格系の内容が分かり易く書かれていて臨床に出てからも使いやすい本」を探していた時に見つけたのが、この「運動療法のための機能解剖学的触診技術」の上肢編と下肢・体幹編の2冊であった。
タイトル通り、触診について記載されている本なのだが、機能解剖の情報もコンパクトにまとまっているのが特徴な書籍となる。
私が購入したのは第一版だが、最近はカラー版の第二版となり、写真が一層見やすくなっている。
本の構成
2冊とも骨・靱帯・筋の順に構成が分かれていて、更に一つの部位や組織に対して1ページ目に解剖学的特徴(+筋の項目であれば筋機能の特徴も)・臨床との接点・関連する疾患(これはおまけみたいなものだが)が記され、その次のページからはもう少し分かりやすい機能解剖の説明であったり触診の説明であったりが載っている。
特に気に入っている点は、1ページ目の情報に関してだ。
1ページだけなので浅い情報であることは否めないものの、コンパクトにまとまっていて読み返しやすかったり情報が頭に入ってきやすい点や、臨床と結びつきやすい書き方がされている点が気に入っている。
※「情報がギュウギュウに詰め込まれた書籍」が必ずしも良い書籍ではない事を分からせてくれる。
学生時代はパラパラとめくって「解剖学的特徴(と筋機能の特徴)」を読み比べては頭の中を整理していた気がする。
そして臨床に出てからは、「臨床との接点(と、その次からのページにも載っている図解の機能解剖説明も)」も熟読するようになった。
自分としては、この項目を読みながら臨床をしていると、上手く機能解剖学的知識と臨床とがリンクしてくる。
学生時代は、国試に受かることが最優先なわけでとにかく知識を詰め込んでいたが、臨床に出ると「単なる詳細であったりマニアックな知識」ではなく「臨床で役に立つ知識」だけが必要になってくる。
そして、この「臨床の接点」を読むことで「これらの詳細な部位・靱帯・筋に関して触れれることや知識が身につくことで、それを臨床でどの様に生かすことができるのか」についてのヒントが多く得られる気がする。
舟状骨や頚椎棘突起や梨状筋や膝窩筋などが触れれて、じゃあ臨床でその技術をどう利用できるか・・・・・ということだ。
※ちなみに、下肢・体幹編における「上後腸骨棘・仙腸関節の臨床との接点」の項目では、「仙腸関節性腰痛に関して、最近ではAKAなどが有効との報告もある」とAKAがサラッと載っていたりする。
その他の良い点としてはイラストが気に入っている。
イラストは好みにもよると思うが、デッサン風なイラストが苦手な私にとってはとても理解しやすい。
触診方法の項目に関しては、この本に書いてある方法が全てではないし、感覚的に簡単に触れてしまうものも詳しく書かれてあったりもする。
なので触診の項目は(昔はもっと活用していた気がするが)、今では触診の苦手な部位に関してであったり、組織の走行を確認するためにたまに用いる程度となっている。
強いてデメリットを挙げるとすれば、体幹に関する項目が下肢のおまけ程度のボリュームな点で、少し物足りない印象を受ける。
最近は、この2冊をじっくり再復習している。
復習していて、基礎的な分野ではあるが「機能解剖はいつまでたっても復習し続ける必要があるなぁ」と痛感する。
学生時代にバイザーが「教科書は読み手が成長すれば、その都度読み取れる情報や受け取り方が違ってくるから気に入った本は何度も読み返せ」と言っていたのを思い出す。
学生時代から社会人になって、「確かに先生の言う通りだなぁ」と実感するのだ。
そして、色々な研修に参加した後に読み返すと、1年目の頃には気にも止まらなかった内容に目がとまったり、本に書かれているヒントと研修の内容を結びつけて考えられたりと、益々あの時先生が言いたかったことが分かってきた。
例えば、腓骨頭の項目に載っている総腓骨神経の走行を見ても昔は何も感じませんでしたが、今は「近位脛腓関節を可動させる際はこの神経を傷付けないよう注意するよう言われたよな」と感じることができたりとか
膝の内外側副靭帯の走行を昔は国試のためだけに丸覚えしただけだったが、今は「内外側上顆から内側側副靭帯は前下方、外側側副靭帯は後下方に走行しているから、キネシオの特殊テーピングを施行する際は、単に膝をまたぐように貼るのではなく、この走行を意識して貼ったほうが効果がある」とか
読んでいて、臨床や研修を重ねたからこそ受け取れるものも変わってきている。
なので、臨床と研修と読書のバランスがしっかり取れていることが、自分の成長を実感させてくれたりもする。
専門書には2種類に分けられる
実習中に、バイザーから「本は大きく2種類に分けられる」と教わったことがある。
一つ目は、詳しい内容は忘れても構わないが、自分が文献として・知識として思い出したいと思った時に即座に活用出来る本。
全部読んだことのないような理学療法ハンドブックなどが該当するかもしれない。
二つ目は、何度も読み返すことが出来て、そこに書いてある内容を最終的に自分のものに出来るような本。
今回紹介した本は自分の中では後者に該当する。
そして、何度も読み返して自分の物にするのであれば、これくらいのボリュームの本が丁度よいのかもしれない。
立ち読みは、以下のメジカルビュー社で可能なため興味がある方はチェックしてみてほしい。
⇒『メジカルビュー社 機能解剖学的触診技術 下肢・体幹』