この記事では、高齢者の転倒予防に大切な歩行補助具(歩行器・歩行車・シルバーカーなど)について、特徴や選び方を解説していく。

 

歩行補助具って何だ?

 

歩行補助具とは、以下を指す。

 

歩行時の支持基底面を広げることで荷重の免荷による患部の保護、疼痛や疲労の軽減およびバランスや歩行速度の保持や調整を目的に屋内・屋外においてそれぞれの適応に応じて使用される道具。

 

歩行補助具としては以下などが該当する。

・平行棒

・杖類

・歩行器・歩行車・シルバーカー

 

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歩行補助具① 平行棒について

 

平行棒は日常生活ではなく、リハビリ時のみ使用する歩行補助具である。

 

まずは、「平行な棒」を対象者に適した高さに調整して並べる。

 

でもって、両上肢を用いれば免荷歩行、4点・2点歩行、大振り・小振り歩行やT字杖歩行の前段階として3動作・2動作歩行なども可能である。

 

大きな外力を加えても倒れる恐れがないため、歩行補助具としては一番安定している。

 

また、平行棒は歩行補助具であるが、以下などの目的でも使用できる。

 

  • 起立動作を通じて下肢筋力の増強(CKCでの筋力増強)

    まずは座面を高くして難易度を下げるなどもOK。十分な筋力がついてきたら、平行棒ではなく座面のプッシュアップ、あるいはFreeでの起立着座動作へ切り替え円滑な前方への重心移動も含めた機能的な動作を身につけていく

    関連記事⇒『高齢者のスクワットを解説! リハビリ職種必見です!

 

  • 立位バランスの獲得

    平行棒を両手把持⇒片手把持など立位バランス訓練としても活用できる。また、手放しでの立位保持でも「万が一ふらついても、すぐに平行棒を把持できる」という安心感があり、恐怖心の強い人でも挑戦しやすい。

 

 

歩行補助具② 杖類に関して

 

杖は以下の2つに大別される。

・cane(T字杖など)

・crutch(松葉杖など)

 

でもって、これらの詳しい種類や使用方法は以下の記事で解説している。

⇒『リハビリで使われる『杖』の特徴・選び方・使い方・調整方法を紹介!

 

 

歩行器・歩行車・シルバーカー

 

歩行器・歩行車・シルバーカーともに以下の様なメリットがある。

 

  • 上肢で体重を支えることが出来る:

    ⇒免荷効果(荷重制限に利用、疼痛軽減)・歩行耐久性向上

 

  • 支持基底面がひろくなる:

    ⇒平衡機能が軽度傷害されている人にも適用

 

また、杖の様に「どこかに立てかけておいたのに倒れてしまう」といった事がない(まぁ多点杖も倒れることは無いが)。

 

デメリットは、操作するためにはある程度のスペースが必要であったり、屋内などフラットな場所でしか使用できないものも存在するといった点だろうか。

 

ここから先は、歩行器・歩行車・シルバーカーそれぞれの種類や特徴を深堀して解説していくので、歩行補助具を選ぶ際の参考にしてみてほしい。

 

 

歩行器の特徴や種類

 

歩行器とは以下を指す。

 

四脚フレーム構造で、フレームの下端、接地面に先ゴムが付いており、グリップ(握り部分)以外に支持部のない歩行補助具

 

 

歩行器のメリットは以下の通り。

  • 痛みや下肢筋力低下などによって杖では体を支えるのが不十分な人に効果的。
  • 前方の脚の長さを高く調節すると、体幹が伸びやすくなることがある。

 

 

歩行器の種類は以下の通り。

  • 持ち上げ型歩行器(固定型歩行器・折りたたみ型歩行器)
  • 交互型歩行器
  • キャスター付き歩行器(前輪歩行器・4輪歩行器)

 

 

持ち上げ型歩行器

 

持ち上げ方歩行器は以下の2つに分けられる。

  • 固定型歩行器
  • 折りたたみ型歩行器

 

ただし、上記は「折りたたんで収納し易くなるかどうか」の違いだけなので、実際に使用する際は(折りたためるかどうかは関係ないので)使用方法も全く同じ。

 

 

歩行器の高さ調整:

ハンドグリップは肘を30度屈曲した高さに調節する。

 

歩行の順序:

  1. 両手で歩行器を持ち上げて、前方へつく。
  2. グリップで体重を支えてから「患側→健側」の順で足を前へ出す

 

上記の、いわゆる「3動作歩行」で、比較的動作学習がし易い歩行方法が可能な歩行器と言える。

 

 

歩行器の支持基底面(4点の脚を結ぶ範囲)に利用者の体が入り、その左右にはグリップがあるため、体幹の安定に効果的といえる。

 

ただし、両手で持ち上げるときに後方にバランスを崩しやすいため、適応する身体機能に関して十分な評価をする必要がある。

 

※後述する「前輪歩行器」は両手で持ち上げる必要がないため、個人的にはこちらの方が使いやすいと感じる。

 

 

交互型歩行器

 

左右のフレームが個々に動かせるので、歩くときには左右交互に動かし、「歩行器の右側⇒左足⇒歩行器の左側⇒右足」の4動作歩行となる。

 

痛みのなどでバランスのとりにくい人に効果的との意見もあるが、前述した「持ち上げ型歩行器」に比べて難しい動作となる。

 

個人的には、あえてこの歩行器を選択しようと思ったことは無い。

 

 

キャスター付き歩行器

 

キャスター付き歩行器は以下の2つに分類される。

・前輪歩行器(前二輪・後二脚歩行器)

・四輪歩行器

 

 

前輪歩行器(前二輪・後二脚歩行器

 

前輪歩行器は、前輪だけでなく後輪もついてはいるが、体重をかけるとストッパーが作用して固定される(後輪がつぶれて脚になる)。

 

したがって、以下の様な歩行が可能であり、臨床でも重宝する。

 

車輪によってスムーズに歩行器を前方に動かし、グリップに体重をかけることでストッパーを機能させ歩行器を固定し、一歩前に出る(どちらかが患側な場合は「患⇒健」の順に足を出す。

 

 

この歩行器は移動性・固定性に優れており、個人的には歩行器の中で一番使いやすいと感じる。

 

前輪を前に出し過ぎるとバランスを崩し易くなるので、おおよその目安として、足を一歩振り出す程度の長さで出すと良い。

 

また、ほとんどの製品はグリップの高さが調節できる。

最も利用し易い高さに調節する。

 

一般的な目安は「肘を30度屈曲した状態でハンドグリップを把持できる高さ」となる。

 

ちなみに、アマゾン商品としては以下などが販売されている。

 

 

 

四輪歩行器

 

四輪型歩行器は、馬蹄(ばてい)に似ていることから「馬蹄型歩行器」と呼ばれることもある。

 

手だけでなく前腕歩行器に添えて身体を支えることができる。

 

また、四輪なため「(上肢支持によって下肢負担を軽減しつつ)テンポよく歩行ができる人もおり、その様な人では『セントラルパターンジェネレーター』も賦活されやすい。

 

ただし、一歩一歩(ゆっくりでも良いので)慎重に荷重させながらの歩行が必要(部分免荷、疼痛など)必要な場合には、他の歩行器の方が良い場合もある。

 

 

 

  • 前輪歩行器・四輪歩行器ともに、常に重心を前方へ意識させることで後方への転倒リスクが軽減できる。

 

  • 一方で屋内で段差のない場所での使用が前提となる点はデメリット(数センチの段差、あるいは砂利で動かなくなる)。特に四輪歩行器は仕様に広いスペースが必要となるので、主に院内用で(次の歩行レベルに到達するまでの期間限定)として活用される場合がほとんどである。

 

 

車輪がついている歩行補助具は、歩行器?歩行車?

 

ここでは、キャスター付きの歩行補助具を『歩行器』に分類して紹介した(前輪歩行器・四輪歩行器)。

 

しかし一方で、以下の様な解釈をして歩行補助具を紹介している文献も多い。

 

・キャスターの無い歩行補助具⇒『歩行器』

・キャスターのある歩行補助具⇒『歩行車』

 

 

上記の分類に照らし合わせるならば、ここで紹介した前輪歩行器・四輪歩行器ともに「歩行車」に該当するという事になる点に注意してほしい。

 

※転職したり、リハビリ(理学療法・作業療法)のバイト先でコミュニケーションを取ったり、リハビリカルテを読んだり(書いたり)する際は、「歩行器」「歩行車」という用語が、どの歩行補助具を指しているのか確認しておいた方が良いこともあったりする。

 

※また、「歩行車」と「シルバーカー」に関しても、現場では明確に分けられていない場合もあるので、注意しておいたほうが良いかもしれない(歩行車・シルバーカーともに後述する)。

 

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歩行車の特徴

 

歩行車とは以下を指す。

 

歩行車は四脚に車輪をつけたもの。前輪は自在輪、後輪は固定輪になっている場合が一般的。グリップには手動ブレーキがついており、ブレーキをかけながらスピードの調節ができる。

 

サークル内に座面部分のある歩行者もあるが、歩行時は座面部分を跳ね上げ、身体を歩行車の支持基底面(四輪車を結ぶ中心)に入れ、グリップに体重をかけて歩行することにより、安定した歩行が可能となる。

 

※ちなみに以下のイラストは、座面部分が無いタイプ。四輪車の中心に座面をたたむことなく入れて、歩行することが出来る。

 

 

歩行車の適応

 

パーキンソン病では、姿勢調整障害や歩行時の上肢の振り(体幹回旋も含む)が消失し、杖歩行が難しい例がある一方で、歩行車であればスムーズな歩行が可能な例も多い。

 

一方で、左右で握る力が異なる人は注意が必要となる(例えば脳卒中後遺症としての不全麻痺など)では、むしろ非麻痺側で杖を使用するほうが安定する人もいる。

 

 

先ほど、「身体を歩行車の支持基底面(四輪車を結ぶ中心)に入れ、グリップに体重をかけて歩行することにより、安定した歩行が可能となる」と前述したが、円背が進んだ人の場合は、この限りではない。

ただし、歩行車のグリップから身体が(後方へ)出たまま押して歩くと、歩行車の支持基底面から身体が離れ、キャスターが反転したときに身体が振られる場合があるので注意が必要となる。

 

 

歩行車に使用されている車輪は、前述した「キャスター付き歩行器」と異なり屋外歩行にも耐えうる(砂利ごときで動かなくならない)。

 

一方で、物を積み込める籠(かご)は装着されていないので、買い物へ行くには不向きである(後述するシルバーカーの方が適している)。

 

 

シルバーカー(老人車)の特徴

 

シルバーカー(老人車)とは以下を指す。

 

籠とフレームと4つの車輪からなり、籠の上にある蓋は座れるようになっている手押し車。歩行補助器して使われる。駐車用のブレーキが付いている。物を運ぶ機能のほか、腰掛けて休憩したり、座って作業をしたりすることができる。

 

前述した「歩行車」と「シルバーカー(老人車)」の違いは以下の通り。

 

  • 身体を支持基底面内に入れれるかどうか
  • 前方に籠がついているかどうか(蓋に座れる)

 

 

シルバーカーは屋外歩行をするのに最適で「歩行の延長」を目的として利用する場合も多い。

 

ちなみに、アマゾンで高評価を得ているシルバーカーは以下になる。

 

 

身体を支持基底面内に入れれるかどうか

 

シルバーカーは歩行器や歩行車とは異なり、グリップが身体の前方にあるだけで、身体を本体の支持基底面内に入れることはできない。

 

このためグリップへの体重負荷が不十分となり、歩行を安定させるための支持にはならない。また、体幹バランスが左右方向に不安定な人(例えば脳卒中片麻痺の後遺症など)にはお勧めできない。

 

ちなみに、「円背を有した高齢者」は前述した歩行車を使用したとしても、前述したように支持基底面内に身体を入れることが出来ないケースもあり、この様な場合は「籠があって荷物が入れれる」といった点で、シルバーカーの方がオススメな場合もある。

 

 

シルバーカーには買い物かご(蓋で休憩できる)がついていることが一般的で、荷物を運ぶ時には便利である。こうしたことからシルバーカーはショッピングカーといった活用方法出来る。

ただし、屋内利用に使用を限定うるようであれば、歩行車の方がオススメな場合もある(籠が前方についていない、軽い、コンパクトなどの理由から)。

 

 

また、椅子に腰かけるためには「自分でブレーキをかける⇒前方の椅子へ回り込む⇒着座する」といった動作が安全に遂行できることが前提条件となる(軽度認知症を有しており、これらの動作が安全に遂行できない人は見守りが必要となる)。

 

 

幾つかの『理屈』を述べてきたが、(ある程度、使えそうかどうかに当たりを付けた後に)最終的には実際に使用してみてもらい判断する。

 

 

その他の移動用器具を紹介

 

この記事では、「歩行」をサポートするための『歩行補助具』の一部を紹介してきた(杖に関しては『』を参照)。

 

しかし、歩行をサポートする器具としては『歩行装具』なる用語もあり、歩行装具の具体例としては以下などが挙げられる。

  • 補高靴
  • 短下肢装具類・長下肢装具類
  • 膝装具

・・・・・・など。

 

また、移動手段は「歩行」だけではない。

でもって、移動手段として『車椅子』も考慮しておくとよい。

 

 

この記事のまとめとして、移動をサポートする道具としては以下が存在するという事になる。

  • ・歩行補助具

    ・歩行装具

    ・車椅子

 

 

関連記事

 

この記事では補装具として歩行器・歩行車・シルバーカーを紹介したが、『杖』に関しては以下の記事を参考してみてほしい。

 

リハビリで使われる『杖』の特徴・選び方・使い方・調整方法を紹介!