この記事では、『スカルパ三角(scarpa triangle)』を解説していく。
※ちなみに『大腿三角』はスカルパ三角と同義語である。
スカルパ三角とは
スカルパ三角(大腿三角)を構成するもの
スカルパ三角とは、以下の3つで構成される三角のことを指す。
・長内転筋
・縫工筋
スカルパ三角(大腿三角)を通るもの
で、スカルパ三角には内側から以下の図に、血管・神経が並ぶ。
・大腿動脈
・大腿神経
スカルパ三角は、内側から「静脈(Vein)⇒動脈(Artery)⇒神経(Nerve)」の順に走行するので「VAN(バン)」と覚えると良い。
また、触診により大腿・動静脈の拍動が確認できたら、その更に外側には腸骨筋(腸腰筋の一部)が位置する(触診方法は後述)。
なので、スカルパ三角を触知した後に、上記も一緒に触診ができる。
また、変形性股関節症などの股関節病変の疼痛を把握する際、大腿骨頭の位置を把握するにもスカルパ三角は参考になる。
※大腿骨頭はスカルパ三角の外側の深部に位置している(腸腰筋の更に深部)。
※変形性股関節症の初期段階では「股関節の前の方が痛い」と訴えることが多く、その際の疼痛部位の確認にも役立つ。
スカルパ三角における疼痛が示唆するもの
スカルパ三角による疼痛は以下などを示唆する。
- 股関節疾患
- 腸恥滑液包炎
- 腸腰筋および腱の疼痛
上記疾患では、スカルパ三角部に圧痛を訴える例が多い。
一番遭遇しやすい例としては変形性股関節症であり、
特に初期段階(レントゲン撮影もしておらず、鼠径部あたりに多少の違和感を覚えるレベル)であれば、スカルパ三角部に圧痛をが生じるかどうかも一つの臨床推論材料となりえる。
スカルパ三角の触診
スカルパ三角における以下の触診について記載していく(背臥位で触診)。
・鼠径靭帯(スカルパ三角の一部)の触診
↓
・縫工筋(スカルパ三角の一部)の触診
↓(大腿静脈が走行)
・大腿動脈の触診
↓
・大腿神経の触診
↓
・腸骨筋の触診
鼠径靱帯の触診
鼠径靭帯は「上前腸骨棘~恥骨結合」を結ぶラインに走行する。
しかも表層に存在するので、上記ラのラインをイメージして触れれば簡単に触診できる。
具体的には、上前腸骨棘を確認し、そのやや内側を指で触れる。
そこから、恥骨に向かって走行している太い線維(靭帯)が鼠径靭帯となる(鼠径靭帯を横断するように触れると分かりやすいかもしれない)。
縫工筋の触診
縫工筋の触診では、指を上前腸骨棘のやや遠位に当てて確認する。
自身が触診している筋が縫工筋かどうかは、あぐらをとる動き(股関節の屈曲・外転・外旋)を指示して収縮させることにより確認できる。
で、収縮させることにより起始部だけでなく、そこから内尾側方向へ走行する筋腱も確認していくことが出来る。
スカルパ三角内の「大腿動脈」の触診
スカルパ三角が確認できたところで、大腿動脈を触診する。
三角形のほぼ中央あたりに指をあて、大腿動脈の拍動を触知する。
身体部位には「脈拍が触知しやすい主要部位」が複数存在する。
そんな中で、以下に関しては記事を作成しているので、興味がある方は合わせて観覧してみてほしい。
⇒『足背動脈の触診場所は?この部位で脈拍触診する意義も解説』
⇒『後脛骨動脈の触診場所は? この部位で脈拍触診する意義も解説』
スカルパ三角内の「大腿神経」の触診
大腿動脈が確認できたならば、拍動に沿って鼠径靱帯の近くまで追っていく。
その後、動脈のすぐ外側へ指を移動し、指を内外側へとずらすと、コロッとした大腿神経を触診することができる。
大腿神経が触診できたら、以下により親権が緊張するかを核にしてみる。
背臥位なまま下肢をベッドから垂らすなどしつつ、他動的に「股関節伸展+膝関節屈曲位」にする。
大腿神経の緊張が確認できたら、今度は逆に、股関節屈曲や膝関節伸展で神経がゆるむ様子も確認できる。
スカルパ三角内の「腸骨筋」の触診
前述した方法で、まずは大腿動静脈による拍動を確認する。
その動静脈の外側に腸骨筋が存在する。
自身がふれている組織が腸骨筋であること確認するため、股関節を軽く屈曲してもらい腸骨筋を収縮してもらう。
スカルパ三角を触診する際の注意点
前述したように、大腿骨頭はスカルパ三角の外側の深部に位置している。
なので、変形性股関節症などの股関節病変の疼痛を把握する際、大腿骨頭の位置を把握するにもスカルパ三角は参考になる。
でもってスカルパ三角の深部痛を確認する際も、スカルパ三角には神経や血管も走行している点には十分注意し、愛護的に触れるよう注意する必要がある。
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⇒『【肘関節】ヒューター三角(+ヒューター線)をイラストで紹介』
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