この記事では、ピラティスの歴史についてザックリ解説しています。
ピラティスの歴史に興味がある方は観覧してみてください。
ジョセフ・H・ピラティスが創始した虚弱体質克服の方法
ピラティス・メソッドの創始者、ジョセフ・H・ピラティス氏(Joseph H Pilates)は、1880年にドイツ・ドュッセルドルフで生まれた。コアの安定性というプリンシパルを考え出し、運動に適応したのは、他ならぬ彼でした。
幼少のころから、くる病や喘息、リウマチ熱などに冒されたことで、ピラティス氏は自分の力で病気を治し、強くて元気な体を取り戻すことに夢中になりました。
ですが、医学の知識があったわけではなく、すべてが独学。
ピラティス氏はボクシング・レスリング・ボディービルディング・機械体操などのパワーと筋力を重視する西洋的な鍛え方だけではなく、ヨガ・禅・マーシャルアーツなど心身を鍛える西洋の伝統的な方法も高く評価して学んだことが知られています。
※今で言うところの、解剖学や生理学も吸収していきました。
そしてピラティス氏のユニークなところは動物の動きを観察に没頭したことです。
このことを、自らの言葉で綴っています。
西洋と東洋の叡智を融合し、やがてピラティス氏は、オリジナルのエクササイズ法を生み出して、心と体を鍛えていきます。
14歳の頃には、病気を克服したばかりか、機械体操、スキー、ボクシング、スキンダイビングなどをすっかりマスターしていました。
解剖のデッサンのモデルとして、その磨きのかかった体を披露したこともあります。
ピラティスエクササイズの誕生
1912年。
32歳の時に、ピラティス氏はイギリスに移ります。
ここでは、護身術のインストラクターやサーカスのメンバーとして働きました。
第一次世界大戦中は、他のドイツ人と共に「敵国の人間」としてランカスターという町に拘留されていましたが、ここでも、ピラティス流エクササイズの理論や方法を在監者たちに教授しています。
※いわゆるマットワーク(マット・ピラティスの誕生です)。
当時は悪性のインフルエンザが流行しており、イギリス中に死者が出ました。
在監者の多くもこの病に倒れましたが、ピラティス氏のエクササイズを行っていた仲間たちは無事でした。エクササイズが体の免疫機能を高めたからだと考えられています。
終戦も近くなると、ピラティス氏はマン島という小さな島に移監されました。
ここで看護師/ケアテーカーとなり、戦争で傷を負ったり、病に冒された患者の世話をしました。
リハビリテーションのための器具や、背筋を伸ばし、コアを強くして、腕や足の動きを改善するエクササイズ法を考案し、治療に役立てたのです。
ベッドで寝たきりの患者のために、ベッドと壁の間にバネを仕掛け、抵抗運動が出来るようにしたり、椅子や寝台等使えるものを利用して、リハビリ器具を発明していきました。
これらは、やがてピラティス・エクササイズのスタンダード器具となり、現在でもピラティススタジオで広く使われています。
こうした経緯から、終戦後はイギリス軍のエリート部隊を、1920年代になって故郷のドイツに帰国した後は、ドイツ軍とドイツ警察を指導する立場となっています。
ニューヨークでの開花と大発展
1926年、ピラティス氏はアメリカに移住しました。
新大陸に向かう船の中で、後の妻となるクレアと出会い、二人はニューヨークの八番街に最初のピラティス・スタジオをオープンしました。
やがてそのスタジオは評判となり、1930年代から1940年代にかけてパフォーマーや、器械体操の選手、スポーツ選手、トップクラスのバレエダンサーをらが押しかけてきました。
1967年に亡くなるまでに、ピラティス氏はフィットネスの著書と新考案の器具を数多く残しました。著書の中で紹介されているエクササイズ(ムーブメントと呼びます)は500点以上にも及びます。
ピラティス氏が直々に指導した愛弟子は生涯でたった数人といわれています。
この数名が、その後もピラティス氏から教授された「哲学」を伝え続けています。
その一方で、ピラティス・エクササイズはさらに進化し、枝分かれして、世界中でピラティス的エクササイズとして教えられるようになりました。
ピラティス氏の死後、コアの安定化を図るエクササイズを対象とした研究が進み、現代の医学的知識とともに、その効果が認められてきています。
時代とともに枝分かれし、改良が加えられ、元来のリハビリテーションはもとより、プロスポーツ選手向けのトレーニング方法としての地位も獲得しました。
近代では、フィットネス・エクササイズとして、ヘルシーかつダイエット効果の高いエクササイズとして、世界中で愛されるようになっています。
人気の裏には、ハリウッドのセレブたちがピラティス・エクササイズの効果の高さに気づき、傾倒した事実があったとも言われています。
広く使われているピラティス
これからのピラティス・エクササイズは、大きく分けて以下の2つの支流に枝分かれしていこうとしています。
ひとつは、医療としてリハビリテーションを目的としたタイプ。
もうひとつは、フィットネスとして健康促進を目的とするタイプ。
前者は医師や運動生理学者・理学療法士・カイロプラクターなどによって処方され、後者はフィットネスインストラクターによって指導されています。
創設者が考案したオリジナルのエクササイズは、それぞれの目的に沿うように、削除されたり変更されてきました。
そして、研究の結果に基づいた改良も行われてきました。
こうして進化を続けるピラティス・エクササイズですが、今でも変わらないものがしっかり残されています。
それは、腰椎~骨盤の安定性、肩甲骨~肩の安定性へのこだわりです。
ピラティス氏の意志は、今でも脈々と受け継がれているのです。
先に2つの支流と書きましたが、やがては2つの大きな本流となって、世界中の人々の健康維持や管理に貢献していくぽてんゃるを秘めています。
冒頭でも紹介しましたが、ピラティス氏は、晩年86歳の時に、こんな言葉を残しています。