この記事では、『学習性無力感』を考えたセグリマン博士が解釈する『楽観思考』について解説している。
セグリマン博士が解釈する『楽観思考』とは
セリグマン博士は「楽観思考」を以下のように説明している。
楽観思考の本質は、前向きな言葉や勝利をイメージすることにあるのではなく、出来事に対する「原因」をどう考えるかにある。
だれでも、何かが起こったとき、その原因を自分に説明しようとする。
この「説明の仕方」は個性の一つで、幼いころに形成され、外からの強い働きかけがなければ一生の間ずっと変わらないとされている(あるいはメタ認知を働かせ、自信を俯瞰的に観察することが変化を起こすために重要となる)。
楽観思考・悲観思考に影響を及ぼす3つの要素
何か良いことや悪いことが自分に起こったときに、私たちは誰でも「どうしてこうなったのか」を考えるのだが、そのとき重要な要素が以下の3つある。
・時間的広がり
・影響が及ぶ範囲
・自分化
時間的広がり
うまくいかない状況の原因は「ずっと続くもの」と考えるか、「一時的なもの」と考えるか。
・永続的⇒この原因は永遠に続くものだ
・一時的⇒この原因は変えることができる、またはその場だけのものだ
影響が及ぶ範囲
あることが起こったとき、「その影響は自分の人生の様々な面に及ぶだろう」と考えるか、「影響は限定的だろう」と考えるか。
・全面的⇒この原因は多くの状況に影響を与える
・限定的⇒この原因は2つか3つ程度の状況だけに影響を与える
自分化
うまくいかない状況のときに「自分のせい」と考えるか「他人や状況のせい」と考えるか。
・自分化⇒自分のせいだ
・自分化しない⇒他人や状況のせいだ
※これは『帰属のバイアス』に類似した考えである。
楽観思考・悲観思考の人たちの特徴
悲観思考の強い人は、うまくいかない状況の原因はずっと続く、その影響は全面的に及び、それは「自分のせい」だと考える。
一方で、楽観思考の強い人は、うまくいかない状況があっても、その原因は一時的だと考え、その影響は人生の全てのに及ぶわけではなく限定的であり、それは「全て自分のせいというわけではなく、状況や他人のせいでもある」と考える。
以下が悲観的思考の強い人に対する、楽観的思考の要素も取り入れる試みである。
- 自分の心の中のつぶやき(無意識に自動的に考えるいつものパターン)に気付く
- その考え方をそのまま受け入れるのではなく「永続的-一時的」「全面的-限定的」「自分のせい-自分以外のせいでもある」とい軸に位置付けてみる。客観的な証拠に照らし合わせて合理的に考えたときに、その位置づけはどのくらい正しいのか、偏っていないかを自分でチェックする。
- 悲観思考に偏っている場合、楽観思考の考え方をとってみる。
より良く生きる秘訣とは?
うまくいかない状況をゼロにすることはできない。
人生にはうまくいかない状況がつきものだ。
しかし、そういった状況に対する考え方を変えることはできる。
それによって、その結果としての感じ方や行動も変えることが出来るのだ。
セリグマン博士らが提唱した『ABC思考法』を用いたプログラムは、私達が自分の考え方や思い込みに気づき、変えていく力をつけるためのものなのだ。
※『ABC思考法』とは、アルバート・エリスが提唱した『ABC理論』と同じものと考えてよい。
関連記事⇒『ABC理論ー認知行動療法に通ずる思考法』
『楽観思考』より『適応認知』が重要
ここでは、セグリマンの考える『楽観思考』について紹介してきたが、
世間では「すべてのことをポジティブに考えてしまうこと」を楽観思考と呼ぶこともあり、
この意味での楽観思考は、必ずしもメリットばかりではない。
そして、「悲観的思考は、果たしてそこまで悪いことなのか?メリットは存在しないのか」といった考えも存在する。
この点に関しては、以下の記事も参考にしてみて欲しい。
関連記事⇒『ポジティブ思考VSネガティブ思考』
※実際には楽観的すぎても良くなく、悲観的過ぎても良くなく、実際にはその中間的な思想が重要となってくる。
また、『楽観思考』ではなく『適応認知』こそが重要との考えもあり、この点に関しては以下で解説しているのでチェックしてみて欲しい。
関連記事⇒『サイト:認知行動療法』