この記事は、バイタルサインの一つである『呼吸(respiratory rate)』について解説していく。
呼吸とは
呼吸は、酸素を吸って二酸化炭素を吐き出すガス交換の働きを指す。
個人差があるので普段の呼吸数を把握しておく。
呼吸器疾患の他に、腎臓、心臓・血管や糖尿病、薬、心的な問題などでも呼吸に変化が見られることがあるため、呼吸数と合わせて病的呼吸や呼吸に関する兆候も覚えておくこと大切となる。
呼吸数の基準値
呼吸数の基準値は以下の通り。
呼吸数の正常値:
・12~20回/分
※呼吸数の正常値は、文献によってまちまち
※年齢によっても異なっており、特に乳幼児では回数が多くなる。
ちなみに、『書籍:図解理学療法検査・測定ガイド』では、以下の様に記述されている。
呼吸数は年齢によって異なり、概ね以下の値を参考に判断する。
・新生児:30~50回/分
・小児(3歳):20~30回/分
・成人:12~20回/分
・老人:15~22回/分
※規則正しいリズムで行われているかもポイント
呼吸数の異常値:
・25回/分以上→頻呼吸
・12回/分以下→徐呼吸
※正常値と異なり、異常値は上記のように「頻呼吸」「序呼吸」ともに定義されている。
呼吸数の測定方法
呼吸数の基本的な測定法は以下の通り。
・胸郭・腹部の動きを見ながら、1分間の呼吸回数を測定。
・対象者が呼吸を意識しないように、気づかれないように数える。
・脈拍測定後、脈を測定している「ふり」をして数えると自然な呼吸回数が得られやすい
呼吸数以外のチェックポイント:
呼吸の深さ、呼気と吸気の時間の比率、リズムなど
病的呼吸パターンの種類
ここから先は、病的呼吸パターンの種類について列挙していく。
・無呼吸症候群
・過呼吸(過換気)
・徐呼吸
・クスマウス大呼吸
・喘鳴(ぜんめい)
無呼吸症候群
無呼吸症候群の特徴は以下となる
・10秒以上の無呼吸が1時間に5回以上/一晩に30回以上
・舌根沈下によって起こる
過呼吸(過換気)
過呼吸(過換気)の特徴は以下になる。
・呼吸器疾患、恐怖等の感情で起きる
・過喚起症候群、肺塞栓血栓症(エコノミークラス症候群)
※興奮時や運動後でも呼吸は荒くなる
徐呼吸
徐呼吸の特徴は以下になる。
・呼吸数が少ない(12回/分以下)
・頭蓋内圧亢進(脳腫瘍・脳出血・水頭症など)やCO2ナルコーシス時で起きる
クスマウス大呼吸
クスマウス大呼吸の特徴は以下になる。
・深く、その割に速い
・血液が酸性に傾いた時(糖尿病性のケトアシドースス、尿毒症)時にみられる。
・ホメオタシスによって血液をアルカリ側に戻そうとする働き。
チェーン・ストークス呼吸
チェーン・ストークス呼吸の特徴は以下になる。
・無呼吸から徐々に呼吸が深くなり、また徐々に浅くなることを繰り返す。
・脳血管障害、うっ血性心不全、呼吸中枢に関わる薬剤、尿毒症など。
・高齢者では病気がなくても睡眠中に起こることがある。
喘鳴(ぜんめい)
喘鳴とは、ヒューヒューと笛を吹くような音を指し、COPD(気管支喘息など)で起こる。
上記の異常呼吸を含めた一覧表として以下が分かり易いので掲載しておく。
※書籍『図解 理学療法技術ガイド―理学療法臨床の場で必ず役立つ実践のすべて』より
呼吸量の異常 |
呼吸回数の異常 |
減少 |
無呼吸 |
徐呼吸(≦9回/分) |
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増加 |
頻呼吸(≧25回/分) 換気過多(クスマウル呼吸) |
||
1回換気量の異常 |
減少 |
低呼吸(低換気) |
|
増加 |
過呼吸(過換気) |
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呼吸リズムの異常 |
周期的な異常 |
チェーンストークス呼吸 |
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不規則な異常 |
持続吸息性呼吸 |
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群息呼吸 |
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あえぎ呼吸(下顎呼吸) |
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失調性呼吸(ビオー呼吸) |
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呼吸が荒く、苦しそうな場合は、経皮的動脈血酸素飽和度(体内で輸送されている酸素量の指標)を測定し、顔色や指先・足先の色も観察してみる。低酸素状態になると意識も低下するので、意識状態も確認する。
そんな『経皮的動脈血酸素飽和度』に関しては以下も参照。
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