この記事では回旋筋腱板(ローテーターカフ)について記載していく。

 

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回旋筋腱板(ローテーターカフ)とは

 

回旋筋腱板(ローテーターカフ)とは、肩甲骨から起こる以下の4つの筋腱から構成されている。

 

 

イラストは腹・外側から見た際のイメージ。

 

①肩甲下筋

 

②棘上筋

 

③棘下筋

 

④小円筋

 

 

 

 

 

 

※肩関節(肩甲上腕関節)を袖口(カフ)のように囲んでいる。

 

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棘上筋

 

棘上筋は肩甲骨鰊上窩と肩甲棘上面から起始する。

 

前方は腱性部で、上腕骨大結節上面前縁に停止する。

 

後方は筋性部で表層を棘下筋が覆う。

 

作用は「肩関節の屈曲・外転・内旋」・「肩甲骨下方回旋」である。

 

上肢の挙上90°で筋活動がピークとなる。

 

 

棘下筋

 

棘下筋は以下の2つの線維からなる。

・肩甲棘下面から起始する横走線維

・棘下窩から起始する斜走線維

 

横走線維は上腕骨に停止せず斜走線維に停止する。

 

斜走線維は上部と下部に分かれる。

 

斜走線維の上部は厚い腱性部となり、棘上筋を後方から押さえ込むよう走行し大結節上面に停止する。

 

作用は、棘上筋と協同して肩関節を外転させ、特に外転45°から筋活動が増加し90°以上で強く作用する。

 

斜走線維の上部は屈曲90°外旋位からの水平外転で作用する。

 

ゼロポジション』において最も筋長が短くなり、上腕骨骨頭と肩甲骨関節窩とを強く引き付ける。

 

 

小円筋

 

小円筋は以下の2つの線維からなる。

  • 肩甲骨外側縁より起始する腱性部の上部線維
  • 棘下筋との間にある筋間中隔に起始する筋性部の下部線維

 

上部線維は大結節下面に、下部線維は上腕骨外科頸に停止する。

上部線維は屈曲90°内旋位からの外旋に作用する。

 

 

肩甲下筋

 

肩甲下筋は肩甲下窩より起始する。

 

上部線維は小結節より上方に停止し、棘上筋の腱性部と協同し「上肢挙上初期の屈曲・外転・内旋」・「肩甲骨の下方回旋」に作用する。

 

中部線維は小結節に停止し、外転60°の内旋に作用する。

 

下部線維は下方関節包に停止し、外転120°からの内転に作用する。

 

 

ローテーターカフの役割

 

肩関節は球関節で自由度が高い一方で、関節窩が浅いので安定性は低い。

 

でもって回旋筋腱板(ローテーターカフ)は、運動時に緊張して肩関節のゆるみをなくすことで肩関節の安定を保つ働きがある。

 

回旋筋腱板(ローテーターカフ)の機能をもう少し具体的に、以下の4つにまとめてみる。

 

役割①:スタビライザー(stabilizer)の機能

肩関節を挙上する際、腱板により上腕骨骨頭が関節嵩に引きつけられて固定され、三角筋の効率が高められる。

 

※肩関節が「アウターマッスル」・ローテーターカフが「インナーマッスル」ということになる。

 

 

役割②:関節包内運動を制御する(depressor)機能

肩関節を挙上する際、上腕骨が内・外旋して、上腕骨大結節は烏口肩峰靭帯の下を通過する。

 

その時に、ローテーターカフにより上腕骨骨頭は関節嵩に対して少し下方に引き下げられ、円滑な挙上動作を助ける(っという意見もある)。

 

※実際には、この機能のおかげで肩関節挙上時に(上腕骨頭が過剰に頭側移動するのを抑制している)といったほうが正しいとの意見も。

 

 

役割③:回旋運動(rotator)の機能

小円筋・棘下筋は外旋として、肩甲下筋は内旋筋として働く。

※棘上筋は外転筋として作用する。

 

 

役割④:関節包や靭帯の補強(accessory ligament)機能

関節包を補強し、補助的な靭帯の役割を果たす。

 

 

インナーマッスルとアウターマッスル

 

回旋筋腱板(ローテータカフ)は上腕骨の外転と回旋作用をもつが、もっと重要な作用を受けもっており、それが「上腕骨頭を肩甲骨関節窩にしっかり保持させ安定させる働き」である。

 

三角筋、大胸筋、広背筋などの大きな筋は肩の力強い動きを引き出すが、回旋筋腱板が骨

頭を安定させてはじめて可能となる。

 

つまり、体幹筋におけるインナーマッスル・アウターマッスルと同様に、肩関節の運動においても両者の共同的な作用が必要になる。

 

※体幹におけるインナーマッスルの重要性は以下を参照。

 

インナーマッスル(コアマッスル)の段階的トレーニング

 

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ローテーターカフ(特に棘上筋)は損傷を受けやすい

 

棘上筋は第2肩関節において絞扼されやすいという特徴を持っている。また、その他の理由もあり、棘上筋の中でも『脆弱な部分(critical portion)』は損傷を起こしやすいとされている。

 

棘上筋が損傷を受けやすい理由としては以下などが挙げられる。

 

  1. 腱板と上腕骨頭付着部付近は、肩の運動に際し、絶えず張力を受けている。
  2. 肩峰・烏口肩峰靭帯上腕骨頭間で絞扼される。
  3. 棘上筋は血液動態的にも、筋肉・骨から血管が吻合する乏血部(脆弱な部分)がある。

 

これらの理由から、棘上筋は炎症や断裂を起こしやすく中高年以降の肩関節障害の原因に密接に絡んでいるケースが多い。

 

 

① 棘上筋は腱板と上腕骨頭付着部付近は、肩の運動に際し、絶えず張力を受けている

 

棘上筋の以下の役割が張力を絶えず受ける原因になってしまう。

 

  • 関節包の弛緩性、関節面尾適合性、関節窩の垂直性のために、上腕骨頭を関節窩に引き付けて維持させる。

 

  • 全ての運動開始時に、緊張することで運動の中心部を固定させる

 

  • 腕安静下制時で唯一の懸垂作用がある。

    ※例えば、『烏口上腕靭帯(CHL: coracohumeral ligament)』などは懸垂作用がありそうであるが、実際には棘上筋が主に懸垂作用を担っている(⇒『肩甲上腕関節を補強する様々な靭帯』)

    ※つまり、それだけ棘上筋に負担がかかっているという事。

 

 

② 棘上筋は「肩峰・烏口肩峰靭帯」と「上腕骨頭」の間で絞扼される

 

これは前述したように第2肩関節における絞扼を意味する。

 

 

第2肩関節に関しては以下も参照してみてほしい。

⇒『肩関節(肩関節複合体)の特徴をザックリと解説!

 

 

 

③ 棘上筋は血液動態的にも、筋肉・骨から血管が吻合する乏血部がある

 

棘上筋は腱が長く、停止部(上腕骨大結節)は血行に乏しいため、加齢により変性を生じやすい。

 

また、上腕骨は肩からぶら下がっており、肩関節は重力によって常に下向きに牽引されているため、腱板も血流不足をきたしやすい。

 

肩より上に腕を上げることの少ない作業(パソコン業務など)で腱板が損傷し肩関節機能障害(五十肩など)の原因となり得る。

 

 

 

ローテーターカフの位置関係が超分かり易い動画を紹介

 

以下の動画はローテーターカフの位置関係を非常に分かり易く掲載してくれている。

 

 

また、無音ではあるが『肩峰下滑液包・三角筋下滑液包』や『第2肩関節』に関する知識も有していた方が理解がグッと深まると思うので、これらに関する内容も含んでいる以下の記事とも合わせて観覧してみてほしい。

 

『肩関節(肩関節複合体)』に関連した情報を総まとめ

 

 

ローテータカフ(の棘上筋腱)の損傷に関しては以下の記事も合わせて観覧すると理解が深まると思う。

 

肩関節の腱板損傷(+腱板断裂)の原因・症状・治療を解説!

 

 

ローテータカフのトレーニング例としては以下の記事を参照していてほしい。

 

カフワイエクササイズ(Cuff Y exercise)を紹介

 

 

また、ローテータカフだけでなく、上腕二頭筋長頭も紹介されているが、この点に関しては以下の記事と合わせて観覧してみてほしい。

 

『上腕二頭筋長頭腱炎症』を解説