この記事は、『めまい(眩暈)』について記載していく。
めまい(眩暈)とは?
『めまい(眩暈)』とは、文献によって表現は様々だが以下などと記載されている。
・自分の周囲と物体との空間的な関係を異常に感じる症状
・視界が揺れ動いて定まらない不快感を自覚する症状
・平衡感覚や姿勢保持機能の障害により、姿勢異常を自覚する状態
めまいは、原因が深刻なものから、しばらく様子を見てかまわないものまで様々で、健康な人でも起こることはある。
問題は頻度と強さであり、どこまでなら大丈夫とは一概に言えないが、どんどん頻度が増えたり、症状が強くなるようなら受診を促す必要がある。
めまいは、『回転性めまい』と『非回転性めまい』に大別され、以下が各々の眩暈における原因の一覧表となる。
~『内科学 第3版 (標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野)』より引用~
※原因が「疾患」と「症状」でごちゃ混ぜになっている気がするが忠実に引用しておく。
1.「回転性めまい」の原因
1)末梢前庭障害 メニエール病、突発性難聴、内耳炎、前庭神経炎、多発性脳神経炎、良性発作性頭位眩暈症、薬物中毒、神経血管圧迫症候群
2.中枢前庭障害 脳幹・小脳梗塞・出血、偏頭痛、小脳腫瘍、てんかん、薬物中毒、多発性硬化症、神経梅毒
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2.「非回転性めまい」の原因
1)中枢神経疾患 中枢神経変性疾患、脳炎、髄膜炎、脳血管障害、脳腫瘍、頸椎症、頭部外傷
2)末梢神経疾患 神経血管圧迫症候群、糖尿病性ニューロパシー
3)循環系疾患 高血圧、低血圧、起立性低血圧、不整脈、除脈、急性貧血(失血)
4)心因性 過換気症候群、神経症、外傷後愁訴
5)視性めまい、その他 外眼筋麻痺、眼精疲労、高所恐怖症、更年期障害
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3)「失神を主訴とするめまい」の原因
血管迷走神経失神、起立性低血圧、頚動脈同症候群、心臓性失神、頭蓋内外血管障害、低血糖、低酸素、ヒステリー
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忠実に書籍を引用したが、通常は『非回転性めまい』の中に「失神性を主訴とするめまい」も含まれていることも多い(この点に関しては、後述する『非回転性めまい』の中で解説していく)。
リハビリ(理学療法・作業療法)中に起こる眩暈としては、例えば「息む(いきむ)ことによるバルサルバ(血圧上昇あるいは低下)による眩暈」であったり、心疾患(不整脈など)低血糖・低酸素などであろうか。
関連記事
⇒『バルサルバ法( Valsalva maneuver)に注意せよ(リスク管理)』
⇒『リハビリのリスク管理に『安全管理・中止基準のガイドライン』を知っておこう!』
回転性めまい(vertigo)とは
回転性めまい(vertigo)末梢前庭障害によるものと中枢前庭障害がある。
前庭性のものでは以下の3つの症状がみられることが多い。
①めまい
②耳鳴り
③難聴
末梢前庭障害は内耳・前庭神経・前庭神経核などの障害によるものであり、最も激しいめまい(激しい回転感・天井が回る感)と悪心・嘔吐を訴える。
これに属する疾患はメニエール病、良性発作性頭位眩暈症、前庭神経炎などが代表的である。
中枢性めまいの原因疾患は前述した一覧表のとおりであり、解説は割愛する。
「回転性めまい⇒耳に問題がある場合が多い」と覚えておこう
「回転性めまい」は、まわりがグルグル回るように感じるめまいを指し、耳に問題がある場合に起こることが多い。
※耳は重力や傾き、回転といった平衡感覚も感知している。
でもって、特に耳石が剝がれて内耳で暴れる良性発作性頭位性めまいは高齢者で珍しくない。
頭の位置によって急にめまいが起こるものの、問題が耳だけな良性の病気である。
内耳で体の傾きなどを感じている前庭にある耳石がはがれ、回転を感じる半規管の中に迷い込んでリンパ液をかき混ぜるために起こる。
例えば、布団から起き上がる、体をかがめる、寝返りをうつ、など体を動かした途端にグルグル回るめまいが起きてしばらくして治り、じっとしている時は症状は出ない。
『良性発作性頭位性めまい』の場合は、リハビリ(理学療法)として「特定の向きに頭を向けて治す方法」などがあり、耳鼻科を受診した際に、診断を基に教えてもらえる場合もある。
ちなみに、めまいと同時に難聴があれば突発性難聴かもしれず、耳から平衡感覚を脳へ伝える前庭神経の炎症や腫瘍などもめまいを起こす。
メニエール病による眩暈
メニエール病は、1861年にフランスのメニエール博士が発見した病気で、蝸牛と三半規管の両方に問題が起きているのが特徴である。
でもって、メニエール病の症状の一つである「めまい」は(前述した一覧表にも記載されている通り)「回転性めまい」に分類される。
また、メニエール病はの症状は「めまい」だけでなく、「難聴」「耳鳴り」「耳閉感」なども同時に引き起こすことがある。
膜迷路内のリンパ液(内リンパ)が何かの理由で増えてむくんだ状態(内リンパ水腫)になることで、突然激しい回転性のめまいを生じる。
同時に難聴が片耳に起き低音が聞こえにくくなり、吐き気なども出現する。
ストレスが引き金となることが多いとされるため、普段からリラックスに努め、発作時は安静にして室内を暗くして十分休むと良いとされるが、これらに関するエビデンスは定かではない。
メニエール病は低気圧の影響を非常に受けやすいとされている。
それは、気圧が低下することで耳の中から外へ向かう力が働くため、内リンパ液が漏れだし(内リンパ水腫)、蝸牛や三半規管に影響を及ぼすためと言われている。
もし、気圧の因果関係を感じているのであれば、天気予報をチェックして症状が生じやすい日は無理をしないよう心掛けることも大切となってくる。
非回転性めまい
回転性めまい以外のめまいを総称して『非回転性のめまい』と表現されることがあり、非回転性めまいの詳細としては以下が挙げられる。
・失神性めまい
・浮動性めまい(浮遊感を伴うめまい)
※前述した「めまいの原因一覧」では「非回転性めまい」と「失神性めまい」が分けて記載されていたが、通常は非回転性眩暈の中に失神性眩暈が含まれる。
失神性めまい
「失神性めまい」は気が遠くなったり、一瞬気を失ったりするようなめまいを指す。
失神性めまいは、狭心症や心不全といった心臓・血管の問題、立ちくらみ貧血、出血などが主な原因であり、どれも高齢者には起きやすい疾患なため注意を要す。
そういった意味でも、血圧や脈拍などのバイタルサインも確認しながらリハビリ(理学療法・作業療法)を実施することは重要となってくる。
関連記事⇒『バイタルサイン(vital signs)の基準値をザックリ理解!』
また、(前述した)メニエール病が「気圧の変化」に留意する必要があるのに対して、失神性のめまいは「気圧」よりも「寒暖差」に注意することが重要となる。
特に1日のうちの最低気温と最高気温の差が大きい日に注意し、その差が10度を超えると、多くの人が自律神経を乱し、結果的に血圧の変動となって様々な症状が現れる可能性がある。
※厳密には気圧の変動は血圧にも影響を与えるので、その影響で眩暈が出てしまう人もいある。
※あるいは血圧にも影響を与える自律神経系の問題でもめまいは生じる可能性がある。
もちろん、自宅における寒暖差にも注意が必要である。例えばトイレへ行くために暖かい部屋から寒い廊下へ出る際などの寒暖差によって眩暈が起こることもある。
失神に関しては、以下の記事でも詳しく記載しているので、合わせて観覧すると理解が深まるかもしれない。
失神とは(意識障害シリーズ)―症状・原因・問診のコツを完全網羅!
浮動性めまい(浮遊感を伴うめまい)
小脳や脳幹の血管に問題が起きて血液がいかないなど、中枢神経に障害が起きるとこうしためまいが起きやすくなる。
歩くと千鳥足など動きが変、自分で歩けない、あるいは口の周りもしびれるなどの時はすぐ受診する必要がある。
また、薬や心因性要因でも浮動性めまいは起こるとされている。
例えば高齢者は、降圧薬などの薬でめまいの原因となり得るし、検査で問題が見つからない時はうつなど心の問題が原因なこともある。
めまいが、漠然と疲れやすい・だるいことを表し、背後に低栄養やがん等があることもある。
また、パーキンソン病などのように体がふるえる病気を発症していることもある。
めまい(眩暈)に対する対処法・治療
めまいは激しい回転感・悪心・嘔吐を伴うことがあり、非常に強い不安感に駆られたりする。
でもって発作時には、原因のいかんを問わず、まずは刺激の少ない薄暗い部屋で安静臥床させ、不必要に頭部や身体を動かさないように説明し、不安の軽減に努める。
また、薬物療法として鎮暈薬の静脈注射や投与がなされる場合がある。
発作間欠期においても発作の発生予防として種々の薬物による治療がなされる。
根治的な治療は容易ではなく、心理的な予防効果を期待しての治療であることも少なくない。
めまい(眩暈)に対するリハビリ(理学療法・徒手療法)
めまい(眩暈)は前述したように様々な原因で起こる。
従って、めまいの治療では以下などの専門医によって『めまいの原因』を診断してもらう必要がある。
・内科(心臓・薬物・アルコールなど)
・神経科
・耳鼻科
・眼科
・精神科(うつなどの精神的因子)
でもって、これらで異常が無いと判断された場合において、整形外科的に頭部関節(上部頸椎:C0-1-2)の機能障害も考えられ、
その場合は、リハビリ(徒手理学療法)の対象として治療がなされることがある。