この記事では、リハビリ(理学療法・作業療法)のみならず介護・看護領域の専門用語でもある『ADL(日常生活活動・日常生活行為)』について解説していく。

 

また、記事の最後にリンクしている『活動・参加(+違い)』も合わせて観覧すると、ADLの理解がさらに深まると思う。

 

あるいは、ADLの評価スケールに関しては、後述するリンク先の『FIM』や『バーサルインデックス』を参考にしてほしい。

 

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目次

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基本的動作と応用的動作

 

ADL(日常生活活動・日常生活行為)を解説する前に、まずは「運動」と「動作」について記載していく。

 

運動(movement, motion, exercise)』の集合体が
動作(performance)』となる。

 

 

そして、動作は「基本的動作」と「応用的動作」に分けられ、それぞれは以下を指す。

 

  • 基本的動作:
    寝返り・座位・立位・歩行、その他移動動作

     

  • 応用的動作:
    整容動作・食事動作・更衣動作・トイレ動作・入浴動作・書字動作など

 

そして、上記の『基本的動作』と『応用的動作』を、日常に落とし込んだものがADL(日常生活活動・日常生活行為である)

 

 

ADLは日常生活動作?それとも日常生活行為(日常生活活動)?

 

ADLは、日本語として以下の3つのいずれかで表現されることが多い。

 

・日常生活動作

・日常生活行為

・日常生活活動

 

その中で、ICFに沿って考えると「日常生活動作」と言うのは「活動・参加」には該当しないため、ADLの日本語訳としては「日常生活行為」あるいは「日常生活活動」のほうが妥当との考えがある。

 

この考えはあくまで学術的な話であり、臨床では「話が通じれば良い」といったレベルの違いではある。

ただし臨床実習などで問われたときには答えることが出来るよう、豆知識として持っておいて損は無いと思う。

 

動作とは「体を動かすこと」である。

 

動作は「立ち上がり動作」のように単純な体の動きに使用される場合もあるが、「入浴動作」のように目的がある程度はっきりしている場合に使用されることもあり、行為と動作が同じような意味で用いられる場合も少なくない。

 

筆者は「行為を遂行するために必要な、ある程度まとまった動き」を動作と捉えている。

 

例えば、「入浴」は“行為”とし、「体洗」、「浴槽への移乗」、「清拭」などの“動作”により構成されていると考えている。

運動連鎖~リンクする身体 より~

 

ADLとは言うまでもなく、日常生活行為(Activities of daily living)の略である。

 

これはよく「日常生活動作」と訳されるが、単なる身体の動きだけでなく、状況判断や計画性を伴う心身機能の全体が関わるものであり、またコミュニケーションも含まれる、目的を持ったひとまとまりを成した行為であり、ICFの「活動」レベルに属する生活行為である。

 

したがって、「動作」(心身機能レベルに属し、しかも身体面のみ)というのは不適切で、「行為」あるいは「活動」というべきものである。

リハビリテーションの思想より~

 

ちなみに、リハビリ向けに出版されているADL書籍では『日常生活活動』という表記がほとんどで、『日常生活行為』という表現な書籍はあまり見かけない。

 

 

 

 

 

 

 

ADLとIADL(APDL)

 

ADLは以下の2つに分けられる。

 

・狭義のADL(基本的ADL/basic ADL)

・広義のADL(基本的ADLに手段的ADL/APDLを加えたもの)

 

 

狭義のADL(Activities of Daily Living:日常生活活動)とは

 

(狭義の)ADLとは一人一人の人間が独立して生活するために行う基本的な、しかも各人ともに共通に毎日繰り返される一連の身体活動群が、日常生活に落とし込まれた状態(活動)を指す。

 

※ADLは『Self-care』『基本的(bacic)ADL』などと呼ばれることもある。

 

狭義のADLとしても捉えられる基本的ADL(bacic ADL)は、生命維持に関連した直接的な活動と考えられ、体位変換、移動・移乗、セルフケア(食事、更衣、整容、入浴、排泄などを)、コミュニケーションなどを含む。

 

※また、「活動」ではなく「動作」という表現を用いて、基本動作(基本的動作ではない)と呼ばれることもある。

 

 

IADL(Instrumental Activities of Daily Living:手段的日常生活活動)とは

 

『IADL(手段的日常生活活動)』は、ミックスさせて『手段的ADL』と表現されることもある。

 

「食事・排泄・整容といった日常生活の基本活動」をADL(日常生活活動)と呼ぶのに対し、より複雑で高度なADLと位置づけられる手段的ADLは、「周辺環境や社会生活に関連した、ADLよりも広い生活圏での活動」を指す。

 

 

IADLに該当する活動としては以下が挙げられる。

 

  • 料理
  • 掃除
  • 洗濯などの家事
  • 育児
  • 買い物
  • 財産の管理
  • 薬の管理
  • 公共交通機関の利用
  • 自動車の運転

・・・・・・・・・・・・・・などなど。

 

ちなみにIADLは『APDL(Activities of Daily Living:生活関連活動)』と同義である。

 

IADL(instrumental ADL : 手段的ADL)

 

ADLの評価は、その自立といっても病院や施設などの保護された環境でのものであり、独居可能なADLではない。

 

独居できるような項目で、ADLの自立に必要な項目に、さらに難易度の高い項目群を加えたADL評価法をIADLとよんでいる。

 

IADLはAPDLに相当するものと考えられ、拡張ADL(extended ADL : EADL)ということもある。

 

理学療法評価学 改訂第5版より~

 

 

※余談として、IADLは「対象者を限定した上で使用される用語」として提唱されている可能性もある(まぁ、どーでもよいが)。

 

APDL(生活関連活動)とは:

 

ADL(基本的ADL)が人間個体としての機能レベルを維持するために必要な活動を意味しているのに対して、APLD(生活関連活動)は家族や家を単位として考えられる活動である。

 

APDLには家事動作、育児、裁縫、家屋修繕・維持、買い物などが挙げられる。

 

さらに、地域で生活する障害者・高齢者や慢性疾患患者の生活機能をとらえる
活動としてIADL(手段的日常生活活動)をロートン(LawtonMP)らが1969年に提案している。

 

日常生活活動学テキストを参照~

 

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ADLと活動(あるいはADL障害と活動制限)

 

ICFの構成要素に照らし合わせた場合、広義のADLは「課題や行為の個人による遂行」と定義される「活動(Activity)」におよそ等しいものと考えられ、ADL障害は「個人が活動を行うときに生じる難しさ」と定義される活動制限(activity limitation)にほぼ該当することとなる。

 

基本的ADL(bacic ADL)の評価スケールとしては『Barthel Index』や『FIM(functional Independence Measure)』が有名で、日本で考案されたスケールとしては『ABMS-2(Ability for Basic Movement Scale-2)』がある。

 

関連記事

⇒『FIMの評価項目・点数を完全網羅!これさえ読めば安心です

⇒『バーサルインデックス(Barthel Index)のポイントまとめ一覧

⇒『カッツインデックス(katz index)/ADL評価ツール

 

 

あるいはIADLの評価指標に関しては以下を参照

⇒『Lawtonの手段的ADL評価尺度を解説!

⇒『老研式活動能力指標とJST版活動能力指標を紹介!併用がオススメ!

 

 

「出来るADL」と「しているADL」の違い

 

よく使用される用語として「出来るADL」と「しているADL」がある。

 

そして、ICFにおける「ADL(日常生活活動・日常生活行為)」とは「しているADL」のみが該当する。

 

そんな「出来るADL」と「しているADL」の違いも含めた詳細は、以下の記事で詳しく言及しているのでこちらも参照して頂きたい。

 

ICFにおける活動と参加(+違い)

 

 

その他のICF関連の記事は以下にまとめてあるので、興味があればこちらも参考にしていただき、問題解決に役立てていただければと思う。

 

理学・作業療法士が知っておくべきICFのまとめ一覧