この記事では、高齢者のバランス能力を簡便に評価する手法として活用されやすい片脚立位テストを記載していく。

 

片脚立位テストとは

 

片脚立位テストは「TUGテスト」と同様に、運動器不安定症状を診断する基準の一つとして日本整形外科学会が指定しているテストとなる。

 

また、通所サービス(デイケア・デイサービス)においても、高齢者の運動機能を簡便に評価できる『静的バランス』の検査として片脚立位保持テストが活用されることが多い。

 

 

片脚立位保持テストの方法

 

片脚立位保持テストは、以下の時間を測定する。

 

  1. 両手を腰に当て、左右いずれかの足を床から離した(浮かした)瞬間から測定

     

  2. 「手が腰から離れる」、「支持足の位置がずれる(ステッピング反応)」、「支持足以外の身体の一部が床に触れる」で測定を終了する。

 

※測定の上限値としては60秒または120秒が一般的に用いられる(出来るからといって5分も10分も永遠とバランスを崩すまで測定し続けないということ)。

 

2回測定して「良い方の値」か「2回の平均値」を記録として残す。

※以降の定期的な測定時も、記録方法を統一する。

 

 

テストは開眼・閉眼どっちで測定?

 

片脚立位保持は閉眼で行うと60歳以上の高齢者は多くが5秒以下に分布し、後期高齢者になると測定不能者が多くなる。

 

そのため高齢者、特に後期高齢者では測定値の分布が広い開眼片脚立位を選択するほうが望ましいという意見がある。(文献1

 

ちなみに、開眼での片脚立位保持時間は60歳代から急速に低下すると言われている。

 

一方で、閉眼での片脚立位保持時間は40歳代から徐々に低下がみられ、60歳代以降では急速にその低下が加速すると言われている。

 

また、60歳以上では閉眼での片脚立位保持時間が30秒未満の人が90%以上であるとの報告もなされている。(文献2

 

 

開眼片脚立位テストの基準

 

開眼片脚立位時間の平均値は以下の通り。

 

  • 40歳代⇒180秒
  • 60歳代前半⇒70秒
  • 80歳代後半⇒10秒

 

この平均値から分かるように60歳以降で急激に減少する傾向にある。
また、転倒との関連では、開眼片脚立位保持が5秒以内の者は転倒ハイリスク者とされている。(文献3

 

ちなみに、日本整形外科学会が運動器不安定症の診断基準としては、「開眼片脚立位15秒未満」が境界線となる。

参考⇒『日本整形外科学会 運動器不安定症

 

  • 文献1)木村みさか:転倒・骨折を惹起する高齢者の体力.Med Reha31:15-24,2003
  • 文献2)Bohannon RW et al : Decrease in timed balance test scores with aging. Phys Ther 64(7) : 1067-1070,1984
  • 文献3)Vellas BJ et al :One-leg balance is an important predictor of injurious falls in older persons. J AM Geriatr Soc 45(6):735-738,1997

 

 

 

ただし、片脚立位保持の平均値は文献によってことなっており、以下のようなデータもある。

文献)Bohannon RW, et al: Decrease in timed balance test scores with aging. Phys Ther 64: 1067-1070.1984

 

年齢

開眼/閉眼

平均(秒)

標準偏差(秒)

最小(秒)

最大(秒)

<30(%)

29~29

開眼

閉眼

30.0

28.8

 

2.3

 

22.5

 

0.

25.0

30~39

開眼

閉眼

30.0

27.8

 

5.0

 

8.4

 

0.

23.0

40~49

開眼

閉眼

29.7

24.2

1.3

8.4

23.0

3.5

 

6.0

24.0

50~59

開眼

閉眼

29.4

21.0

2.9

9.5

14.3

5.1

 

6.0

57.0

60~69

開眼

閉眼

22.5

10.2

8.6

8.6

4.8

2.1

 

57.0

90.0

70~79

開眼

閉眼

14.2

4.3

9.3

3.0

1.2

0.7

 

12.7

90.0

100.0

 

このデータかも「年齢とともに片脚立位時間は低下する」というのは読み取れるが、前述した平均値に比べ全般的に数値が低くい。

※例えば70歳代の開眼片脚立位時間は、平均14.2秒であり、90%の対象者が開眼立位が30秒未満であることが確認できる。

 

でもって、上記データを参考にしつつ“臨床思考”が身につく 運動療法Q&A ではでは以下のように記載されている。

 

300m歩行自立の片脚立位保持時間のカットオフ値は20秒とされています。
また、70歳台の開眼時の平均値は14.2秒です。
高齢入院患者を対象とした場合、屋内歩行自立(50m以上)のカットオフ値は、3.2秒とされています。
実際の臨床場面では、5秒程度を目標として実施することが妥当です。

 

※片脚立位保持というのは、高齢者にとって難易度の高い課題である印象を受ける。

 

※したがって、上記の記述は、実際の臨床と非常にマッチしていると個人的には感じるが、皆さんはいかがだろうか?

 

 

片脚立位保持テストをリハビリにも活用

 

当然のことながら、片脚立位保持練習はバランス練習としても活用できる。

 

そして、トレーニングによって片脚立位保持時間が延長するという事は、すなわち転倒予防にも直結する可能性がある。

 

リハビリに活用する際には、出来る限り以下の様に正しい姿勢で実施したほうが良い。

 

※上段イラストがエラー、下段イラストが正しい姿勢での片脚立位保持練習となる。

~画像引用:転倒予防理学療法の資料~
片足立位保持 エラー
片足立位保持①
ちなみに、上段は股関節(や体幹)を矢状面上・前額面状で釣り合いをとることしている。

従って、「股関節戦略も活用した片脚立位」となってしまっている。

 

一方で、下段は、股関節(や体幹)を真っ直ぐにしているため「足関節戦略を十分活用した片脚立位」となっている。

 

そして、リハビリ(理学療法)の観点からは、難易度の高い後者(足関節戦略有意な片脚立位)の方がトレーニングに繋がる。

 

「足関節戦略・股関節戦略」は知っておいて損は無い知識なため、是非以下も参照してもらいたい

⇒『足関節戦略・股関節戦略(+違い・筋活動)でバランスを考える

 

また、下段の姿勢のほうがコアマッスルが賦活されやすく、この姿勢での片脚立位保持はコアトレーニングの観点からも重要である。

⇒『インナーマッスル(コアマッスル)の段階的トレーニングを解説

ドローインした状態で片脚立位保持をすれば、尚更コアトレーニングとなり易い。

 

また、ロコモティブシンドロームを予防するためのリハビリとしても片脚立位保持練習は推奨されている。

 

ちなみに、片脚で立つことによる大腿骨頭にかかる力は両足で立つ時の2.5倍となると言われており、1分間の片脚立位で得られる大腿骨頭に加わる力は、53分間歩くことで得られる総負荷量と同じと計算されている(あくまで理屈上の話)。

 

従って、片脚立位保持練習は骨密度の低下予防にも寄与できると考えられている。

※まぁ、片脚立位以外の様々な運動療法が骨密度低下を予防する可能性が言われている。

 

詳しくは以下を参照

⇒『ロコモティブシンドロームと予防法を解説

 

 

片脚立位保持テストの関連記事

 

転倒予防に関するテストを以下の記事にまとめているので、こちらも参考にしていただきたい。

 

転倒予防テストのカットオフ値まとめ

 

 

転倒リスクのカットオフ値が以下となる。

※ここからでも興味のある記事にアクセスすることができる

 

テスト カットオフ値
膝伸展筋力 1.2Nm・kg
FRテスト 15cm未満
片脚立位保持テスト(開眼) 5秒以下
TUGテスト 13.5秒以上
歩行速度 毎秒1m未満(横断歩道が渡りきれない)
5回立ち座りテスト 14秒以上
立位ステッピングテスト 17秒以上