心疾患・肺疾患を有している人の中には「寝ているより座っている方が楽」という人たちが存在する。

 

今回は、そんな座った姿勢での呼吸方である『起座呼吸(きざこきゅう)』について解説していく。

 

※『起座呼吸』に関して、医学書では『起坐呼吸』という感じで表記されていることが多いが、この記事では『起座呼吸』に統一して記載していく。

 

起座呼吸(orthopnea)とは?

 

起座呼吸(orthopnea)とは、臥位では呼吸困難が増すため、起座状態で行う呼吸法を指す。

 

なぜ臥位より座位のほうが呼吸が楽なの?

 

起座呼吸が楽な理由としては以下などが挙げられる。

 

  • 呼吸のための筋肉である横隔膜はドーム状に張っているため、上半身をこした方が下がり易く、座った方が一般的には呼吸はし易くなる。

    上記の解説だけではピンと来ないかもしれないが、例えば、背臥位になると(重力下で尾側へ溜まっていた)臓器が頭側にも広がってくる。すると、吸気時に必要な「横隔膜の尾側への運動」が阻害されてしまって、呼吸がしにくくなると言われている。

    以下イラストの矢印は、臓器が横隔膜を頭側へ押しやって、横隔膜の尾側への収縮を阻害しているイメージ。

     

 

  • 体を起こすと、気管支を拡げる働きがある交感神経が優位になるので気道の空気の流れは良くなる

    ※「臥位=リラックスして副交感神経優位」・「抗重力位=筋活動が必要で交感神経が優位になる」といったイメージ(まぁ、実際は呼吸苦を有した人は「座位でリラックスしたい」のだが、あくまでイメージとして捉えてほしい)。

 

  • 心不全などで心臓や肺の血液が流れにくくなっている時は、全身から心臓にもどる血液量(静脈環琉量)が少ない方が心臓は楽で、肺のうっ血も軽くなる。

    ※全身から心臓に戻る血液量を減らすためには、上半身を起こして心臓の位置を高くすれば良いという理屈(心臓へ返る血液が減るため呼吸が楽になる)。

 

 

発作性夜間呼吸困難とは

 

日中は比較的安定しているが、夜間就寝中に突然呼吸困難が出現し、起座位をとると吸う風で楽になる現象を『発作性夜間呼吸困難(paroxysmal nocturnal dyspnea)』と呼び、心不全の徴候とされている。

 

発生機序は以下などが考えられている。

 

  • 睡眠中には呼吸中枢が抑制されること
  • 昼間には(抗重力下での活動によって)下半身に分布していた血液が、臥床することによって急に肺のほうへもいきわたり始めるので、肺うっ血が増加する

 

 

特に後者に関しては、(先ほど同じ内容を記載するが)理解しておいたほうが良い。

 

心不全などで心臓や肺の血液が流れにくくなっている時は、全身から心臓にもどる血液量(静脈環琉量)が少ない方が心臓は楽で、肺のうっ血も軽くなる。

こうした場合は、上半身を起こすと心臓が高い位置になり心臓へ返る血液が減るため呼吸が楽になる。

 

呼吸困難で自らこうした姿勢をとり、心不全に気付くこともある。

 

うっ血性心不全では、就寝直後ないし1~2時間後に起こり易く、(重複するが)起坐呼吸が特徴的である。

 

心不全に関しては、以下の記事でまとめているので合わせて観覧すると理解が深まるかもしれない。

関連記事⇒『心不全とは?症状・原因・治療法をイラスト付きで解説

 

 

単なる起座呼吸より、体を丸めた前屈位になったほうが楽だよ

 

実は私は、小児ぜんそくを患っていた時期がある(現在も、季節の変わり目には息苦しくなる程度のぜんそく症状は出る)。

 

でもって、子供のころの「努力しても中々息が吸えなくて、死にそうなくらい苦しかった」といった記憶は忘れようにも忘れられない。

 

苦しさから解放されるためには入眠してしまえば良いのだが、入眠するために必要な「臥位」が苦しいのだから始末が悪い。

 

でもって一旦起きて、「椅子に座って体を丸めるように机に突っ伏す」と息苦しさがかなりの割合で解消されていたのを覚えている。

 

ここで話は少しそれるのだが「起座呼吸」という呼吸法を用いる際は、(上記の様に)単に座るだけでなく「体幹を前屈させた状態」とセットで成されることが多い。

 

ただし、『体幹を前屈させることによるメリット』は、ここまで記載してきた『起座呼吸のメリット(起座呼吸によって呼吸が楽になる機序)』とは全く異なるため、起座呼吸とは区別される。

 

肺気腫の労作や喘息発作時などで体幹を屈曲、肘を膝についた椅子座位での呼吸法は前傾起座位とか「辻馬車の御者」などと呼ぶが、呼吸困難感が減少する理由が異なるため起坐呼吸とは区別される。

 

この姿勢では肩甲帯と上肢が固定され大胸筋、小胸筋、広背筋などの呼吸補助筋が効率よく呼吸運動に参加できるため、呼吸困難感が減少すると考えられている。

 

理学療法学事典より引用~

 

 

以下は、理学療法士の千住秀明さんが解説した『COPD患者に対する食事・運動』に関する動画である。

 

この中で、食事時の姿勢について語っている部分があるのであるが、その姿勢は「テーブルに肘をついて(体を丸めて)食す」とう方法であり、なぜこの方法であれば楽に食事ができるのかが分かり易く解説されている。

 

※2分30秒くらいからが、上記の解説となる(講演会の対話の中で面白おかしく解説してくれている)。

 

 

ちなみに、後述するリンク『COPDの治療総まとめ』や『COPDに運動療法が重要って知ってた?』でも述べているようにCOPDに対する運動療法は非常に重要なのであるが、栄養が不十分であれば全く意味が無くなってしまう。

 

そんな『(COPDに限らず高齢者全般に対する)栄養の重要性』に関しては以下の記事も参考にしてみてほしい(上記の動画でも解説が為されてはいるが、念のため)。

 

栄養の重要性を解説するよ

 

 

余談:臥位で気を付けたほうが良いポイントは?

 

起坐呼吸が楽だからと言って、ずっと座っている(あついは机に突っ伏している)訳にもいかず、寝たり起きたりを繰り返して呼吸苦を紛らわせたりと、臥床して過ごすことも多い。

 

でもって、肺の中では下側の方が血流が多くなるようになっている。

 

従って、肺炎や肺がんなどで片側の肺に空気がない場合や胸水がある時は、問題の内側(健側)を下にした臥位で寝ると、正常に機能している側に血液が流れやすく、呼吸が楽になる。

 

しかし、肺がんなどで肺が部分的に障害されている場合は、問題のある部位によって楽な姿勢は異なってくる。

 

従って理屈以前に、色々な姿勢をとりながら、本人が楽と思える姿勢を探すことが大切となる。

 

※例えば、起座呼吸が臥位より安楽である理屈を長々と解説してきたが、肺切除した後や肝硬変などの肝疾患では、体を起こすこと自体が苦しく、背臥位が一番楽ということもある。

 

 

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