この記事は認定理学療法士の(共通問題)の試験範囲である『根拠に基づく理学療法』についてです。
認定理学療法士の認定試験(共通)を受けるにあたって、勉強がてらに作成しました。
※臨床に役立つ情報ばかりではないので、アウトプットしないと覚えれそうにない。。
興味が出た部分は脱線しながら記載していますが、理学療法認定試験を受ける際の参考の参考になれば幸いです。
目次
根拠に基づく理学療法(Evidence-Based Physical Therapy:EBPT)
EBPTとは、個々の患者に関する臨床問題や疑問点に対して、以下を統合した最適な臨床判断を行うことによって、質の高い理学療法を実践するための一連の行動様式を指します。
・理学療法士の臨床能力
・施設の設備や機器の状況
・患者の意向や価値観
EBPTのステップは以下の通り。
2:質の高い情報の効率的収集⇒ガイドラインのシステマティックレビューなど
3:収集した情報の批判的吟味⇒研究デザイン、症例数、統計の妥当性など
4:情報を患者へ適応する⇒個別の問題に適応可能か?
まとめると「問題を明確化して、質の高い情報収集をして、それを批判的に吟味して、患者に適応する」ってことです。
これは、特に覚えなくてもピンとくる内容かなと。
でもって、ここで重要なのは『PICO』って用語!
これが何を意味するかは覚えておいたほうが良いと思います。
I=どの様な評価・治療をしたら(Intercntion)
C=何と比較して(Comparison)
O=どのような結果になるのか(Outcome)
理学療法士協会HPで提供する学術情報
理学療法士協会のHPで提供されている学術情報には以下があります。
EBPTチュートリアル
EBPTを臨床で活用することを温煦的に、教科書的な解説から実践的なノウハウまで幅広う情報を掲載。
※『(外部リンク)イラストで分かるEBPTの実践』は会話形式で分かりやすくEBPTを学べるのでオススメです♪
解説付き英語文抄録
RCTや評価指標の開発など臨床課題を扱った理学療法雑誌収載の論文を紹介し、関連論文も含めて解説を加えた記事を掲載
研究デザイン
研究デザインは以下の分類があります。
~扱うデータからみた分類~
量的研究
⇒理学療法士の研究はほぼコレ。数値化して研究する
質的研究
⇒理学療法士の研究でも増えてくる可能性あり。在宅や終末期での理学療法など、職域が広がっているため。がん患者へのインタビュー研究など看護領域では質的研究も多い。
~研究目的からみた分類~
探索型研究(後ろ向き研究が多い)
検証型研究(新しい評価・治療を目的とした研究など)
~研究方法からみた分類~
観察研究
介入研究
ここから先は、上記の「観察研究」と「介入研究」について深堀していきます。
観察研究と介入研究
前述した「研究デザイン」の中で観察研究と介入研究については、しっかりと違いを理解しておくと良いと思います。
なぜなら『(認定理学療法士)臨床・疫学研究の推進』でも出てくる内容だから。
でもって、ここでは『臨床・疫学研究の推進』の資料に記載されている内容も合わせて記載してみるので、整理してください。
観察研究とは
観察研究とは以下が該当します。
ザックリ表現すると、余計なことはせず、今まで通りの診療をしつつ観察をすることでて、そのデータを収集するという考え。
観察研究は『症例研究(case study/case series study)』で行われます。
でもって症例研究には『横断研究』『縦断研究』があります。
横断研究:
「今現在」についての研究。例えば「今、パーキンソン病患者は○○人いる」など。
縦断研究:
「未来or過去」についての研究。縦断研究には『前向き研究(=コホート研究)』と『後ろ向き研究』がある
コホート研究:
コホート研究は「ある属性の持つグループを特定して、その経過を観察する研究」を指します。
ピンと来ないかもしれませんが、TVで「○○県民は全国でも認知症になりにくいという事が分かった」的なことが放送されることがあり、これは「ある時点から追跡調査をし続けたからこそ分かった事実」でありコホート研究に該当します。
重複しますが「未来に向かって研究する(前向き研究)」がコホート研究です。
ここまで記載してきた、コホート研究(前向き研究)と症例対象研究(後ろ向き研究)の長所・短所は以下の通り(超重要です)。
長所 | 短所 | |
---|---|---|
コホート研究 (前向き) |
・リスクファクターと疾患の因果関係を推論可能 ・同時に複数のアウトカムを研究 ・事象の発生順序が分かる |
・多数の対象者が必要 ・長期にわたる研究が必要 ・経費がかかる |
症例対照研究 (ケース コントロール研究) =後ろ向き研究 |
・稀な疾患に適している ・研究機関が短くてすむ ・経費が比較的少ない |
バイアスが多い 一度に1因子しか研究できない 事象の発生順序が分からない |
※急に『症例対象研究』なるものが登場していますが「後ろ向き研究」と同義です。
※テストで急に「症例対象研究」という用語が出てきても「は?」ってならないよう気を付けましょう。
介入研究とは
(観察研究が終わったので)介入研究について解説します。
介入研究とは以下の通り。
観察研究が「余計なことをせず観察してデータ収集する」のに対して、
介入研究では「研究のために、あえて普段の診療とは異なることをする(=介入をする)こと」でデータを収集します。
電気刺激を加えた群と、電気刺激が加わったように見せかけた群を比較したりってのは、介入研究です。
介入研究に該当するのは以下などです。
比較対象研究
・非無作為化対象研究
・無作為化対象試験
対象無し介入研究
※いずれも「介入」って用語が付いてますね。
「観察研究と介入研究の違い」を超分かりやすく解説
ここから先は、理学療法から離れてた事例で「観察研究と介入研究の違い」を解説していきます。
※ここでは(観察研究の)コホート研究を例に解説していきます。
観察研究はザックリいうと「一般の日常生活を観察する方法」です。
例えば「野菜は体にいいのか?」という疑問の答えを知りたいときは、「日常的に野菜を食べる人」と「普段は全く食べない人」の2種類を選び、その上で全員を数年にわたって追跡調査します。
そこで「野菜を食べている人ほど死亡率が低い」という結果が出れば「野菜は体に良い」っと予想できます。
ただし、この方法は実験室で厳密に研究が出来ないため、どうしてもデータの信頼度は劣ります。
なので、エビデンスとしては以下な位置付けになっています(ちなみに、この順位も覚えましょう)。
RCTのメタアナリシス
2:RCT(randomized clinical trialを含む)
3:non-RCT
4a:コホート研究
4b:症例対象、横断研究
5:記述研究
6:学会・専門家の意見
※観察研究を赤色で示しています(ちなみに、介入研究を青色で示しています)。
介入研究は恣意的に「介入」するし、「(野放しじゃなくある程度)管理」されるので、観察研究よりはエビデンスレベルが高くなっています。
ちなみに「RCTのメタアナリシス」って記載があるってことは「RCTじゃないメタアナリシスは含まれない」ってことを意味します。
観察研究は、何で信頼度が劣るの?
観察研究には、色々と落とし穴がある場合もあります。
例えば観察研究(コホート研究)の結果以下の結論が出たとします。
でもって研究内容は以下だとします。
なので「○○県民は、○○をしているから元気だという事が判明した」とかって番組で言ってたりしますが、これらは「観察研究の落とし穴」をしっかりカバーできたうえでの結論なのかってのも疑う必要がありそうです。
まぁ、国の研究をベースにしていると思うので、ある程度の信頼は担保できていると思いますが。。
臨床問題(疑問)と研究タイプ(デザイン)の例
臨床問題(疑問)と研究タイプ(デザイン)の例は以下の通り。
問題(疑問) | 研究デザイン |
---|---|
診断(評価) | 横断研究 |
有病率 |
横断研究 |
発症率 | コホート研究 |
原因 | コホート研究/症例対象研究 |
予後 | コホート研究 |
治療 | 無作為化比較試験 |
予防 | 無作為化比較試験 |
これはメチャクチャ重要です。
「有病率は横断研究」で正しいですか?
「予防はコホート研究」で正しいですか?
「発症率は症例対象研究」で正しいですか?
これらを整理しておきましょう。
理学療法診療ガイドラインを活用しよう
理学療法士協会は『理学療法診療ガイドライン』っという、膨大な論文を集約して作っているガイドラインを無料で提供しているので活用してみましょう。
まずは以下のダイジェスト版から観覧するのがオススメ。
Q&A形式で記述されているので、とっつきやすいです。
⇒『(外部リンク)理学療法診療ガイドライン ダイジェスト版』
ダイジェスト版でなれたら、理学療法ガイドラインも観覧してみましょう。
自身の得意分野から観覧したほうが、とっつきやすいと思います。
※ページ数がメチャクチャ多いので、疾患・領域別の「分割版」を観覧したい方は理学療法士協会HPにアクセスしてみて下さい。
※2020年に第2版が登場予定なので、お楽しみに!
推奨グレードの解釈は以下の通り。
「推奨グレード」は「エビデンスレベル」とは異なり、戦略を勘案する、つまり「学会としてはこういう事を推し進めていきたい」という様な指向性も反映されている。
なので、必ずしもエビデンスレベルとは一致しない。
理学療法士の治療介入は「C1」が多い。
ポイントは「D」。
これは、「ダメなやつ」ってエビデンスがあるってこと。
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⇒『海外エビデンスの落とし穴』
⇒『エビデンスって必要か?』