この記事では『踵骨骨折』について解説している。
骨折後のリハビリ(理学療法)に関するクリニカルパスも掲載しているので、リハビリの参考にしてみてほしい。
※ただし、あくまで参考・目安であり、必ず医師の指示に従うこと。
踵骨骨折とは?
踵骨骨折は足部骨折のなかでもっとも多い骨折である。
高所からの落下によって、踵骨に直接圧迫力が加わり、その圧迫力が大きければより変形の強い骨折が生じる。変形や靭帯損傷による機能障害を残すことが多い骨折である。
踵骨折はザックリと以下の2つに大別される。
①骨折が後距踵関節に及ばないもの(関節外骨折)
②骨折が後距踵関節に及ぶもの (関節内骨折)
でもって①は一般的に保存的治療がなされ予後は良好とされるが、後者は骨折によって支持機能、関節機能が障害されるため予後は不良と言われている。
また、踵骨骨折は足部アーチの低下を生じやすいため、歩行障害や可動域障害を生じ、後遺障害として残存しやすいとも言われている。
標準的な骨癒合期間とリハビリ期間の目安
踵骨骨折における標準的な骨癒合期間とリハビリ期間の目安は以下の通り。
標準的な骨癒合期間の目安:
・8~12週
標準的なリハビリ期間の目安:
・関節外果部骨折⇒12~16週
※保存療法を行った場合や骨折部の状態によってはさらにリハビリ期間を要する。
合併症
コンパ―トメント症候群:
踵骨骨折には受傷時の外力による強い軟部組織損傷、腫脹を伴うためコンパートメント症候群を生じる危険性がある。
コンパ―トメント症候群に関しては以下の記事でも解説しているので興味がある方は参考にしてみてほしい。
踵骨骨折のリハビリ(理学療法)治療ゴールとクリニカルパス
踵骨骨折におけるリハビリ(理学療法)治療ゴールは以下の通り。
関節可動域:
距腿関節と踵骨関節内骨折で障害される距骨下関節の正常な可動域を再獲得する(背屈・底屈・内がえし・外返し)。
筋力:
足関節機能に関わる筋の筋力訓練を行い、日常生活動作能を再獲得する。
①底屈運動:下腿三頭筋・後脛骨筋・長趾屈筋・長母趾屈筋
②背屈運動:前脛骨筋・長趾伸筋・長母趾伸筋
③外がえし:短腓骨筋・長腓骨筋
④内がえし :後脛骨筋・前脛骨筋
機能的ゴール:
疼痛なく立位・歩行が可能になることを目指す。
踵骨骨折のリハビリ(理学療法)におけるクリニカルパス
踵骨骨折のリハビリ(理学療法)を実施するにあたって、以下のクリニカルパスは一つの目安になる。
※あくまでも一例であり、主治医の指示に従うこと
~『理学療法ハンドブック改訂第4版 4巻セット』より引用~
~1W | 2~4W | 8~12W | 適宜 | |
---|---|---|---|---|
ROM運動 | ---------- | 距骨下関節他動運動開始 | 足関節複合運動 | 物理療法、足底板 |
筋力トレーニング | 足趾自動運動・下肢筋力トレーニング | 足関節筋力トレーニング開始 | 足関節抵抗運動開始 | ---------- |
荷重 | ---------- | ---------- | 痛みに応じた荷重練習 | ---------- |
その他 | 浮腫・疼痛への対応 | 過流浴→挙上位で足根骨マニピュレーション |
部分荷重期:DYJOC訓練。 骨吸収やCRPS徴候に注意する。 |
---------- |
※整復が良好であれば痛みは寛解するが、整復委が不良であれば疼痛がいつまでも残存するケースもある。
踵骨骨折のリハビリ(理学療法)補足
踵骨骨折のリハビリ(理学療法)で補足する点としては以下などが挙げられる。
- 腫脹に対しアイシング、弾力包帯での圧迫患肢挙上は有効。
関連記事⇒『RICE(安静・冷却・圧迫・挙上)を分かりやすく解説!』
- ギプス固定中でも足趾の関節可動域運動は行い、腱の滑走をスムースにしておく。その際には腫脹の対策も同時に行う。
- ギプスが除去されれば足関節の自動可動域運動を追加する。その際、前足部や足趾は他動的可動域運動に変更する。
- 下腿筋(足内在筋も含む)の顕著な萎縮が予想されるので、その予防と改善を図る。
- 荷重が許可されればCKCの運動を追加する。
- 部分荷重期はDYJOC訓練を実施し『神経一運動器協調性の改善』を図る。
- 部分荷重の許可に従い適切な歩行補助具や装具を処方する。
- 関節可動域、疼痛や腫脹の出現筋力の改善をみながら応用歩行動作を開始する。
- 骨癒合が得られるまで長期間かかることがあるので、安全に活動性を上げていく必要がある。
神経ー運動器協調性の改善
「神経ー運動器協調性の改善」の目的は、以下などが挙げられる。
・地面からの情報入力機能の改善
・足指・足底の把持機能向上による身体制動能の改善
・荷重下での下肢および上肢の多関節運動連鎖の促進
・全身的な神経ー運動器協調性の改善
・不意な外力への反応改善による予測制御の確立
・・・・・など
以下は「免荷期」「部分荷重期」「荷重期」におけるアプローチの一例である。
1.免荷期:
患部の腫脹が激しいため受傷後1~2週間ベッド上で患肢の挙上を行い同時に足指・足部の練習を指導する。
※例えば足指での把持、足指でのじゃんけん、底・背屈運動、内返し・外返し運動を行わせる。
ベッドあるいはリハビリ室での座位では足指・足底による地面把持機能と情報収集能力を高めるため、足指・足底にて重りや本などを置いたタオル・シーツをたぐり寄せる(タオルギャザー)あるいはボールペン・マジック・ビー玉などを把持させるなどのアイデアがある。
2.部分荷重期:
各種不安定板を用い、座位にて脚力および外力により動揺する不安定板を素早く制動する。
また同様に立位にて不安定板を制動する。
特に足部の内返し・外返しを考えて左右方向の外力に対する応答運動は重要。
3.全荷重期:
両脚立位保持中に体幹に加えられた外力に抵抗してバランスを維持する。
大型不安定板上あるいは不安定板上でのバランス保持運動やバランス保持中に急に加えられた外力に対する立位姿勢制御運動は特に足部には重要。
関連記事⇒『DYJOC(動的関節制動訓練)とは!!高齢者のバランストレーニングとしても効果あり?』
オススメ書籍
骨折のリハビリ(理学療法)をするにあたって、以下の書籍を一通りそろえておくと、非常に心強いと思う。
是非参考にしてみてほしい。
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以下の記事では、様々な部位の骨折をまとめているので、興味がある方は合わせて観覧してみてほしい。