この記事では、疼痛を理解するうえで大切な生理学用語である『活動電位』などについて、分かりやすく解説していく。
静止膜電位
興奮性細胞である神経細胞には、静止状態と興奮状態がある。
細胞が活動していない静止状態では、エネルギーを使ってナトリウムイオンを細胞外に輸送し、それと交換してカリウムイオンを細胞内に輸送する仕組みがある。
つまり静止状態において、細胞内にはカリウムイオンが多く、細胞外にはナトリウムが多い。
このような細胞内外のアンバランスが維持された結果、細胞内に多いカリウムイオンは、カリウムイオンを選択的に透過させるカリウムイオンチャネルが開いている時に、細胞外に拡散する。細胞外に多いナトリウムイオンは、ナトリウムイオンチャネルが開いている時に細胞内に拡散する。
また、神経細胞に限らず、一般に細胞内にはマイナスに荷電しているたんぱく質が多く分布しているので、細胞内は細胞外に比べて電気的にマイナスになっている。
その大きさは、細胞外をゼロ(基準)としてマイナス40~70mv程度で、これを『静止膜電位』と呼ぶ。
分極状態
細胞内が電気的に陰(-)極、細胞外が陽(+)極になっている状態を『分極状態』と呼ぶ。つまり、「静止膜電位は分極状態である」と言える。
脱分極
神経細胞の膜電位が、何らかの原因で静止膜電位からゼロに近づく現象を、「分極状態から脱する」という意味で『脱分極』と呼ぶ。
過分極
脱分極とは逆に、神経細胞の膜電位のマイナス値が更に大きくなる現象を『過分極』と呼ぶ。
例えば、抑制性介在ニューロンなどから放出されるGABAやセロトニン、ノルアドレナリン、オピオイドなどの神経伝達物質による抑制性シナプス後電位として過分極が起こる。
再分極
脱分極した状態から、再び静止電位へ近づく現象を『再分極』と呼ぶ。
活動電位(=インパルス・スパイク)
感覚受容器に刺激が加わると、静止膜電位から少し脱分極する。
膜電位の変化を感知して、ナトリウムイオンチャネルが最初に開き、ナトリウムイオンが急激に細胞内に流入し、膜電位が逆転して細胞内がプラスへと変化(オーバーシュート)する電位変化を『活動電位』と呼ぶ。
活動電位は『インパルス』や『スパイク』とも同義である。
活動電位は一過性の電位変化である。
オーバーシュートする際のナトリウムイオンチャネルの開口は長くは続かず、更にはカリウムイオンチャネルが開くことでカリウムイオンが細胞外へ流出するため『再分極』が起こり、元の『静止膜電位』にもどってしまう。
閾値
ある刺激で興奮が起こるか起こらないかの境界線の値のことを『閾値』と呼び、刺激の強さがその値以上になってはじめて反応が起こる。
「閾値が高い」とは反応を示すようになる境界線が高い所にあること意味する。
「閾値が低い」とはその逆で、容易に反応を示すことになる。