ゲートコントロール理論(門制御理論)は理学療法士にとって馴染みのある用語の一つであり、徒手療法の作用機序の一つとして用いられることも多い。

 

この記事では、そんな『ゲートコントロール理論』について否定的な見解も含めて、分かりやすく簡単に解説していく

 

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目次

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ゲートコントロール理論とは

 

ゲートコントロール理論とは、心理学者のメルザックと生理学者のウォールが1965年に科学雑誌「サイエンス」に発表した内因性疼痛抑制系における一つの仮説である。

 

※ゲートコントロール理論は「門制御理論」「ゲートコントロール説」「ゲートコントロールセオリー」などとも呼ばれる。

 

日常において「体(例えば手や足)をぶつけて痛みが出た際に、その部位をさすってあげることで痛みが和らぐ」などは、よく用いられる例ではないだろうか?

 

ゲートコントロール理論は、以下の様にシンプルな解説がなされる。

 

  • 脊髄後角に制御用のゲートが存在し、C線維とAδ線維によって痛みの情報が伝わると、ゲートが開いて「伝達細胞(T細胞)から」脳へ情報が伝わり痛みを感じる。

  • しかしAβ線維によって、擦ったり圧迫したりといった非侵害刺激による抑制性入力を受け取ると、ゲートが閉ざされて「脊髄後角膠様質細胞:SG細胞」で伝達細胞が抑制され、痛みの情報が伝わらなくなる。

 

ゲートコントロール理論は様々な教本に書かれており認知度は高い。

しかし一方で、この理論は「脳からの抑制も機序に含む」など何度も修正されてしまい、(当初の様なシンプルさは無く)1992年の最終版では斬新でなくなってしまっている。

 

以下は、改定後のゲートコントロール理論。

ゲートコントロール理論,ゲートコントロールセオリー

※改訂版では上記のように、高次脳機能として「認知制御」「下降性制御」が明確化された模式図となっており、ゲートコントロール理論が複雑な機序によって起こる可能性が示されている。

 

※更には、エンケファリンなどの内因性オピオイドの作用も指摘されてきている。

 

※上記模式図で「認知制御」「下降性制御」と表現されているものの中には、非常に複雑な機序が含まれており、もはやシンプルには表現できないということ

 

 

ちなみに以下は旧式のゲートコントロール理論となる。

旧式ゲートコントロール理論,旧式ゲートコントロールセオリー

※前述したゲートコントロール理論と違いを比較してみてほしい(イラストは、どちらもペインリハビリテーションより引用)。

 

 

とある徒手理学療法学派におけるゲートコントロール理論の解釈

 

徒手療法の作用機序でも、ゲートコントロール理論はよく用いられる。

 

そんな中で、ある徒手理学療法学派はゲートコントロール説に関する受講生からの疑問に以下のような回答をしている。

 

マニュアルセラピーに関わらず、鎮痛の効果はゲートコントロール理論で説明している。

 

ゲートコントロール理論に関する批判はあるけれども未だにそれに代わる理論がないというのが現状である。

 

我々は機械受容器を刺激して侵害受容器の興奮を抑制しているという説明をしてきた。

 

機械受容器を興奮させることで、脊髄後角の第二層に存在する膠様質細胞を興奮させ痛覚伝達の抑制作用を有するエンケファリンが遊離するという事が1983年Wykeによって確認されている。

 

今後の生理学者の研究成果とリンクさせながら解明していく必要があるだろう。

 

※エンケファリンに関してはこちらも参照⇒『ブログ:内因性オピオイド

 

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ゲートコントロール理論という理屈より、「現象」という事実が大切

 

しかし、「体(例えば手や足をぶつけて痛みが出た際に、その部位をさすってあげると痛みが和らぐ」という現象そのものは紛れもなく存在しており、ゲートコントロールセオリーは別として、非侵害刺激がAβ線維を介して脊髄後角でC線維の活動を何らかの機序により抑制する可能性は十分に考えられる。

 

また、非侵害刺激である触・圧覚刺激がカテコールアミンの分泌を指標とした実験で侵害刺激による反応とは全く逆に、局所の交感神経活動を抑制することが報告されており、その結果、血流増加・筋緊張の低下を引き起こすことなども考えられる。

 

いずれにしても触・圧覚などの非侵害刺激による痛みの抑制法は、『経皮的電気刺激などに代表される電気刺激療法』、『超音波療法』、テーピングなどの圧・触受容器を興奮させる物理療法に活用されている。

 

また、徒手的療法としても、ゲートコントロール理論云々ではなく「現象」という事実として、今後もマッサージや関節モビライゼーションをはじめとする多くの手技に応用され続けていくと思われる。

 

 

ペインリハビリテーション

 

最後に「書籍:ペインリハビリテーション」においてゲートコントロール理論に言及している部分を引用して終わりにする。

 

この説は膠様質ニューロンの機能について誤りが指摘され、後年、膠様質ニューロンに興奮性と抑制性が存在すると修正されたが、否定的な実験事実のため科学的価値は低いとされている。

 

しかし、中枢神経系に目を向け、脊髄における疼痛制御に着目した理論であり、その後の痛み研究や治療を飛躍的に発展させた功績は大きい

 

 

ゲートコントロール理論以外の内因性疼痛抑制系

 

ゲートコントロール理論以外の内因性疼痛抑制系に関して以下の記事にまとめているので、興味がある方は参照してほしい。

 

徒手理学療法に重要な内因性疼痛抑制系まとめ