この記事では、『頭部・頸部のMMT(徒手筋力テスト)』を記載している。

 

簡潔に記載しているので、MMT(徒手筋力テスト)を忘れてしまったリハビリ職種(理学療法士・作業療法士)、看護師、学生さんなどは、是非活用してみてほしい。

 

また、「MMTの基礎」や「頭部・頸部以外のMMT」に関しては記事最後のリンク先『MMT(徒手筋力検査)のやり方』でまとめているので、こちらも併せて観覧してもらうと知識が整理できると思う。

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目次

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頭部伸展のMMT(徒手筋力テスト)

 

頭部伸展とは顎を突き出すような運動を指す。

※頭部伸展の運動の中心は「環椎後頭関節と環軸関節」である。

 

頭部伸展の主動筋

 

・大後頭直筋⇒後頭下神経

・小後頭直筋⇒後頭下神経

・上頭斜筋⇒後頭下神経

・下頭斜筋⇒後頭下神経

・頭半棘筋⇒大後頭神経

・頭最長筋⇒C3-Th1

・頭板状筋⇒C3-Th1

 

頭部伸展MMTの方法

 

段階5,4,3の頭部伸展MMT:

 

患者体位:

・ 腹臥位

・頭部を検査台の端からはみ出させる

・両上肢は体側

 

MMTの方法:

・検者は患者の頭の横に立つ

・一方の手で後頭部の上から抵抗をかける

・他方の手で頭部が抵抗に負けて下垂しないよう下で備える

 

MMTの判定基準:

段階5:

最大の抵抗に抗して運動範囲を完全に動かせるもの

 

段階4:

強力~中等度の抵抗に抗して運動範囲を完全に動かせるもの

 

段階3:

抵抗が加えられなければ運動範囲を完全に動かせるもの

※頭部を下から支えた位置から開始

※テスト中、常に頭部が崩れ落ちないよう備えておく

 

 

段階2 , 1 , 0の頭部伸展MMT:

 

患者体位:

・仰臥位

・頭部は検査台の上で両上肢は体側に

 

MMTの方法:

・検者は患者の頭頂に向かって立つ

・両手で後頭部を下から支える

・手指は患者の頭部筋を後頭部底の脊柱の付け根で触診する

 

MMTの判定基準:

段階2:

運動範囲の一部を動かせるもの

 

段階1:

頭部伸展筋に収縮活動を触れるもの

 

段階0:

筋に収縮を認めないもの

頭部伸展運動の代償運動は『頸部の伸展』である。

 

 

頸部伸展のMMT(徒手筋力テスト)

 

頸部伸展の主動筋

 

・頸半棘筋⇒C2-Th5

・頸板状筋⇒C2-C8

・頸最長筋⇒C3-Th6

・頸腸肋筋⇒C4-Th6

 

頸部伸展MMTの方法

 

段階5,4,3の頸部伸展MMT:

 

患者体位:

・腹臥位

・頭部を検査台の端からはみ出させる

・両上肢は体側

 

MMTの方法:

・検者は患者の頭の横に立つ

・一方の手で頭頂後頭部の上から抵抗をかける

・他方の手で頭部が抵抗に負けて下垂しないよう下で備える

 

MMTの判定基準:

段階5:

最大の抵抗に抗して運動範囲を完全に動かせるもの

( 頭部の伸展よりは弱い)

 

段階4:

強力~ 中等度の抵抗に抗して運動範囲を完全に動かせるもの

 

段階3:

抵抗が加えられなければ運動範囲を完全に動かせるもの

※頭部を下から支えた位置から開始

※テスト中、常に頭部が崩れ落ちないよう備えておく

※体幹伸筋群に筋力減弱がある場合は, 上半身に固定を加える

 

 

段階2 , 1 , 0の頸部伸展MMT:

 

患者体位:

・仰臥位

・頭部は検査台の上で両上肢は体側に

 

MMTの方法:

・検者は患者の頭頂に向かって立つ

・検査者は両手で後頭部を下から支え, 台へ頭を押し付けるように頸部を伸展

・検査者は後頭骨より尾側で頸部伸筋群を触れておく。

 

MMTの判定基準:

段階2:

頭部を下方に押し付けながら、わずかでも頸椎の伸展が起こせる

 

段階1:

頸部伸展筋に収縮活動を触れるもの

 

段階0:

筋に収縮を認めないもの

頸部伸展の代償運動

⇒ 頭部の伸展( これを予防するために、あごを突き出させないことが大切)

 

 

頭頸部伸展複合運動のMMT(徒手筋力テスト)

 

頭頸部伸展複合運動の主動筋

・前述した頭部伸展と頸部伸展の主動筋

 

頭頸部伸展複合運動のMMTの方法

 

段階5,4,3の頭頸部伸展複合運動のMMT:

 

患者体位:

・腹臥位

・頭部を検査台の端からはみ出させる

・両上肢は体側

 

MMTの方法:

・検者は患者の頭の横に立つ

・一方の手で頭頂後頭部から下・前方に抵抗をかける

・他方の手で頭部が抵抗に負けて下垂しないよう下で備える

 

MMTの判定基準:

段階5:

最大の抵抗に抗して運動範囲を完全に動かせるもの

 

段階4:

強力~中等度の抵抗に抗して運動範囲を完全に動かせるもの

 

段階3:

抵抗が加えられなければ運動範囲を完全に動かせるもの

※頭部を下から支えた位置から開始し、テスト中常に頭部が崩れ落ちないよう備えておく※体幹伸筋群・股関節伸筋に筋力減弱がある場合は, 上半身に固定を加える

 

 

段階2 , 1 , 0の頭頸部伸展複合運動のMMT:

 

患者体位:

・腹臥位

・頭部は検査台の上で両上肢は体側に

 

MMTの判定基準:

段階2:

運動範囲の一部を動かせるもの

 

段階1:

頭部と頸部の伸展筋群両者に収縮活動を触れるが、運動は起こせないもの

 

段階0:

筋に収縮を認めないもの

※一側の伸筋のテスト: 同側へ回旋した上で運動を行うとテストしやすい

 

 

頭部屈曲のMMT(徒手筋力テスト)

 

・頭部屈曲運動⇒うなずくような運動

・頭部屈曲運動の中心⇒環椎後頭関節と環軸関節

 

頭部屈曲の主動筋

 

・前頭直筋  ⇒C1-2

・外側頭直筋   ⇒C2

・頭長筋   ⇒C1-3

 

頭部屈曲のMMTの方法

 

段階5~0の頭部屈曲MMT:

 

患者体位:

・仰臥位

・頭部は完全に台にのせる

・両上肢は体側

 

MMTの方法:

・検者は患者の頭頂に向かって立つ

・左右から下顎~頬に両手をあてがい上後方に抵抗を加える

・運動はうなずくような運動を行い頭を台から浮かせてはいけない

 

MMTの判定基準:

段階5:

最大の抵抗に抗して運動範囲を完全に動かせるもの

 

段階4:

強力~中等度の抵抗に抗して運動範囲を完全に動かせるもの

 

段階3:

抵抗が加えられなければ運動範囲を完全に動かせるもの

※検者は患者の側方から運動を確認

 

段階2:

運動範囲の一部を動かせるもの

 

段階1:

筋の収縮活動が触知できるのもの

 

段階0:

筋に収縮を認めないもの

 

 

頸部屈曲のMMT(徒手筋力テスト)

 

頸部部屈曲の主動筋

 

・頸長筋

・前斜角筋

・中斜角筋

・後斜角筋

胸鎖乳突筋(胸骨頭・鎖骨頭)

 

頸部屈曲のMMTの方法

 

段階5,4,3の頸部屈曲MMT:

 

患者体位:

・仰臥位

・頭部は台にのせ両上肢は体側

 

MMTの方法:

・検者は患者の頭部のそばに立ち、抵抗を額の上に指2 本のみで与える

・体幹筋に減弱があれば胸の上から固定を

・運動はうなずく動作を起こすことなく頭を台から浮かす

( 頭を台から持ち上げさせ、天井を見続けさせる)

※うなずく動作は、前述した『頭部屈曲運動』となり、これが頸部屈曲を代償してしまうことがある。

 

MMTの判定基準:

段階5:

2 本指の中等度の抵抗に抗して最大限の運動範囲を動かせるもの

 

段階4:

2 本指の軽い抵抗に抗して最大限の運動範囲を動かせるもの

 

段階3:

抵抗が加えられなければ最大限に運動範囲を動かせるもの

※検者は患者の側方から運動を確認

 

 

段階2 , 1 , 0の頸部屈曲MMT:

 

患者体位:

・仰臥位

・頭部は台にのせる

・両上肢は体側

 

MMTの方法:

・検者は患者の頭頂に向かって立つ

・運動は頭頸部の回旋を行い、両示指で左右の胸鎖乳突筋を触診する

・頭頸部の回旋→ 反対側の胸鎖乳突筋が作用

 

段階2:

運動範囲の一部を動かせるもの

 

段階1:

筋の収縮活動が触知できるのもの

 

段階0:

筋に収縮を認めないもの

 

 

胸鎖乳突筋収縮の代償運動:

胸鎖乳突筋の減弱に対し広頸筋が作用→ しかめ面の表情( への字口、つまり口角 が下がった表情)

 

 

頭頸部複合屈曲のMMT(徒手筋力テスト)

 

頭頸部複合屈曲の主動筋

 

・前述した頭部屈曲と頸部屈曲の主動筋

 

頭頸部複合屈曲のMMTの方法

 

段階5,4,3の頭頸部複合屈曲のMMT:

 

患者体位:

・仰臥位

・頭部は台にのせる

・両上肢は体側

 

MMTの方法:

・検者は患者の肩の位置に立ち、抵抗を額の上に片手を使い軽く加える

・体幹筋に減弱があれば胸の上から固定をしておく

・運動はあごを胸につけるように頭を台から浮かす

 

MMTの判定基準:

段階5:

強力な抵抗に抗して全ての運動範囲を動かせるもの

 

段階4:

中等度の抵抗に抗して全ての運動範囲を動かせるもの

 

段階3:

抵抗が加えられなければ全ての運動範囲を動かせるもの

 

 

段階2,1,0の頭頸部複合屈曲のMMT:

 

患者体位:

・仰臥位

・頭部は台にのせる

・両上肢は体側

 

MMTの方法:

・検者は患者の頭頂に向かって立つ

・運動は頭部の回旋を行い、両示指で左右の胸鎖乳突筋を触診する

*頭頸部回旋→ 同側の頭・頸部屈筋群の作用(胸鎖乳突筋については反対側のものも作用)

 

MMTの判定基準:

段階2:

運動範囲の一部を動かせるもの

 

段階1:

筋の収縮活動が触知できるのもの

 

段階0:

筋に収縮を認めないもの

 

 

・頭部屈筋・頸部屈筋に不均衡があり頭部屈筋<頸部屈筋な場合

→ 胸鎖乳突筋が一部頸部伸筋として働き台から頭が浮かせてもあごが引けない

 

 

一方の胸鎖乳突筋の分離テスト

 

・頭頸部屈曲複合運動のMMT別法として『胸鎖乳突筋の分離テスト』がある。

 

段階5~段階0 までの胸鎖乳突筋分離テスト:

 

患者体位:

・仰臥位

・頭部は台にのせ両上肢は体側

・顔を一方に向けさせる(左右どちらかに回旋させておく)

 

MMTの方法:

・検者は患者の頭頂より顔に向かって立つ

・患者に頭部を台から持ち上げさせる

・抵抗は側頭部 、耳の上の部分に加える

・胸鎖乳突筋→ 回旋方向とは反対側のものが作用

 

MMTの判定基準:

段階5:

強力な抵抗に抗して全ての運動範囲を動かせるもの

 

段階4:

中等度の抵抗に抗して全ての運動範囲を動かせるもの

 

段階3:

抵抗が加えられなければ全ての運動範囲を動かせるもの

 

段階2:

運動範囲の一部を動かせるもの

 

段階1:

筋の収縮活動が触知できるのもの

 

段階0:

筋に収縮を認めないもの

 

 

頸部回旋のMMT(徒手筋力テスト)

 

頸部回旋の主動筋

 

胸鎖乳突筋など

 

頸部回旋のMMTの方法

 

段階5,4,3の頸部回旋MMT:

 

患者体位:

・仰臥位または腹臥位

・頸部屈伸中間位

・両上肢は体側

・顔を最大限一方に向けさせる

 

MMTの方法:

・検者は患者の頭部の位置で顔が向いている側に向かって立つ

・頭部、耳の上の部分に手を当て抵抗を加える

・運動は抵抗に打ち勝って中立位までまわし戻す

 

MMTの判定基準:

段階5:

強力な抵抗に抗して全ての運動範囲を動かせるもの

 

段階4:

中等度の抵抗に抗して全ての運動範囲を動かせるもの

 

段階3:

抵抗が加えられなければ全ての運動範囲を動かせるもの

 

 

段階2・1・0の頸部回旋MMT:

 

患者体位:

・坐位

・ヘッドレストとなる背もたれを設けるのもよい

・頸部屈伸中間位 顔を一方に向けさせる

 

MMTの方法:

・検者は患者の頭 の位置で顔に向かって立つ

・運動は一方から反対側へ顔の向きを変える

 

MMTの判定基準:

段階2:

運動範囲の一部を動かせるもの

 

段階1:

筋の収縮活動が触知できるのもの

 

段階0:

筋に収縮を認めないもの

 

 

MMTの関連記事

 

MMTの総論+各関節運動のMMTを紹介した記事は以下となる。

 

MMT(徒手筋力検査)のやり方

 

 

また、全てのMMTを一覧表として観覧したい人は以下もおススメ

 

MMTの一覧表(サイト:筋骨格系理学療法の世界)