この記事では、「坐骨神経痛って何だ?」と題して、坐骨神経痛を含めた「腰部(+臀部)由来の下肢症状」について、治療やリハビリ(理学療法)も踏まえて記載していく。

 

目次

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坐骨神経痛とは

 

坐骨神経痛に関して、日本整形外科のパンフレットには以下のように記載されている。

 

坐骨神経痛は「腰仙部坐骨神経の支配領域、すなわち臀部、下肢後面あるいは外側面へ放散する疼痛自体、あるいは疼痛を呈する症候群の総称」と記載されています(脊椎脊髄病用語辞典より)。

 

すなわち「坐骨神経痛」はひとつの病気ではありません

 

症状として臀部から大腿部の後面あるいは外側にかけての痛みがある場合(時には膝から下の部分にもまで及んで痛い場合があります)に言います。

 

坐骨神経は腰椎からわかれて出てきた神経根がいくつか集まって出来ている神経ですが、膝の上の部分までを指し、それ以下ではいくつかの神経に分かれて足先まで分布しています。

 

従って、このどこかの部分で神経に障害が生じると「坐骨神経痛」になるわけです。

 

また、神経に障害が生じていない場合にも、坐骨神経に沿った痛みがあり原因となっている病気が分かっていない場合は「坐骨神経痛」という言葉を使う場合がります。

 

上記文章におけるポイントは、坐骨神経痛とは「坐骨神経(+その延長上にある神経)が原因で起こっているかどうかにかかわらず、坐骨神経(+その延長上にある神経)に沿った症状の総称」ということになる。

 

よく高齢者なども、医師に「何だか腰から膝にかけて痛いんです」と訴えただけで、(原因が良く分からない坐骨神経に沿った症状と言う意味で)坐骨神経痛と安易に診断される」というのを良く見かけるが、要は何でも「坐骨神経痛」となってしまいやすい。

 

※厳密には、上記文章にも記載されている通り、坐骨神経痛とは「疾患名」ではなく「症状」を指す。

 

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坐骨神経痛の原因

 

坐骨神経痛が「症状」を指すのであれば、坐骨神経痛の原因となる「疾患」は何なのだろうか?

 

実際のところ、坐骨神経痛の定義が前述したように幅広いため、原因となる疾患も多岐にわたり、例えば以下などが考えられる。

 

  • 腰椎椎間板ヘルニア
  • 腰部脊柱管狭窄症
  • 仙腸関節の機能障害
  • 梨状筋症候群
  • 変形性股関節症(+関連痛)
  • 坐骨神経の末梢神経感(いわゆる神経因性疼痛)

・・・・・・・・・・・・・などなど。

 

ただし、一般的に「坐骨神経痛」という用語を聞くと「椎間板ヘルニアのおまけ」としてくっ付いてくるイメージが(個人的には)強いので、椎間板ヘルニアと絡めてまずは記載してみる。

 

坐骨神経痛と椎間板ヘルニア

 

腰椎椎間板ヘルニアに伴って坐骨神経痛が生じることもある。

※椎間板ヘルニアに関しては以下も参照

⇒『腰椎椎間板ヘルニアの対処法を徹底解説!

 

しかし、椎間板ヘルニアの急性期を過ぎて、数週間~数か月と時間が経過するとともに坐骨神経痛(を含めた下肢症状)も消失するのが一般的である。

 

ただし、中には数週間~数か月経過しても残存し続けている坐骨神経痛もあり、この様な慢性痛に移行した(時として腰痛も伴う)坐骨神経痛は治療に難渋するケースが多いとされている。

 

また、慢性痛としての坐骨神経痛に関して一貫した治療法(エビデンス)は存在しないため、様々な治療法を試してみることも重要となる。

 

 

坐骨神経痛の治療・リハビリ(理学療法)

 

(慢性期の)椎間板ヘルニアも含めた腰部由来の坐骨神経痛では、リハビリ(理学療法)として以下の様な治療を試みる。

 

  • 腰部の椎間関節モビライゼーション(この場合はクラフテクニックなど)
  • 神経系モビライゼーション(オープナー)
  • マッケンジー法

    ※マッケンジー法を活用して、坐骨神経痛(を含めた下肢症状)へ着目する際は、その症状が「マッケンジー法における、どの症候群に分類されるのか」を評価しなければならない。

 

坐骨神経痛はSLR(下肢伸展挙上)の最終域にて誘発されるのが一般的である。

 

SLRテスト(ラセーグテスト)は理学・作業療法士さんで知らない人はいないとは思うが、以下で詳しく記載しているので、復習もかねてチェックして頂きたい。

 

SLRテストを説明します

 

ラセーグテスト(ラセーグ徴候)を解説

 

 

腰部以外に原因がある場合の治療・リハビリ(理学療法)

 

この記事では、腰部由来の坐骨神経痛(狭義な「坐骨神経痛」)について記載してきたが、それ以外にも(広義な意味での「坐骨神経痛」として)以下の原因が考えられ、それぞれに応じた治療(リハビリ・理学療法)が求められる。

 

 

 

坐骨神経痛に対するエビデンス・ガイドライン

 

坐骨神経痛に対するエビデンスやガイドラインは存在しない。

なぜなら、坐骨神経痛は「症状」であり「疾患」ではないから。

 

そして、「坐骨神経痛」と総称される症状を生む原因は無数に存在する。

 

なので、「坐骨神経痛」を改善させる唯一無二の方法は存在しない。

 

例えば、神経障害性疼痛には薬剤が有効なケースがあると前述した。

⇒『鎮痛に関する薬剤まとめ』の②脊髄に作用する薬剤やN+aチャネルブロッカーなど

※特に、Ca+チャネルブロッカーは神経障害性疼痛の第一選択薬とされている。

 

しかし一方で、神経障害性疼痛に対する薬剤の有効性は十分示せていないとの指摘もある(日経メディカルより) 。

 

ただし前述したように、一口に坐骨神経痛といっても「広義な意味」で捉えると多様な原因が考えられ、全てを薬剤で解決するという考えに限界があることは容易に想像がつく。

 

従って、坐骨神経痛に悩んでいる人がいるのであれば、薬剤を処方してもらって効果があるかどうか試してみる価値はあると言える。

 

そして、この考えはリハビリ(理学療法)も同様で、様々な治療を試してみる価値はあると言える。

 

※多様性を理解したうえで臨床推論をしながら個別に対応する必要がある。

※リハビリ(理学療法)に関しては、前述した『坐骨神経の治療(リハビリ・理学療法)』も参考にしていただきたい。

 

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坐骨神経痛に対するマッケンジー法

 

前述したように「ザックリと坐骨神経痛と表現されている症状」は多くの原因から起こっている可能性があり、それらの原因を臨床推論していき、適切な治療をすることで改善されることもある。

 

また、原因を特定せずとも、試験的治療としてりクス管理をしつつ様々なメカニカルな刺激を用いて、診断・治療につなげていくことも可能である。

 

例えばマッケンジー法では、上記の「いわゆる坐骨神経痛と診断されている症状」について、様々なメカニカルな刺激を加えて変化が起こるかを評価していく。

 

そして、何らかの変化が起これば「ディレンジメントシンドローム」に分類される。

 

一方で、「坐骨神経痛と呼ばれている下肢症状」がSLRのエンドレンジペインのみであり、必ず症状が誘発されるが、実施後には症状は残存しない(P-NW)であれば「ディスファンクションシンドローム(の神経根癒着」と判断される。

 

「坐骨神経痛と呼ばれている下肢症状」がディレンジメントシンドロームな場合は、「整復可能」と「整復不能」に再分類していくことになるが、これらの評価に関して言及していると膨大な記事となってしまうため割愛する。

 

一方で「坐骨神経痛がと呼ばれて知る下肢症状」がディスファンクションシンドローム(の神経根癒着)と判断された場合は、神経系モビライゼーションにおけるテンショナー・スライダーと同様な手法を繰り返し実施して、変化起こるかを評価していく。

 

※ディスファンクションシンドロームにおける「変化」は即自的なものではないケースも多く、数週間から数か月かけて(セルフエクササイズも含めて)変化を評価していく。

関連記事⇒『マッケンジー法を解説します!

 

 

坐骨神経痛の関連記事

 

坐骨神経痛は結果であり、原因ではないと述べたが、坐骨神経痛の原因となるえる疾患に対しては、以下の記事を参考にしていただきたい。

 

腰椎椎間板ヘルニア

 

脊柱管狭窄症の腰痛治療まとめ

 

梨状筋症候群

 

仙腸関節の痛みを治療しよう

 

 

おまけとして、急性腰痛に対するリハビリ(理学療法)に関しては、生活指導も含めて以下の記事で言及しているので、こちらも参考にしてみてほしい。

 

急性腰痛(ぎっくり腰)の激痛対処法とは?