この記事では、髄膜刺激症状について解説していく。
髄膜刺激症状とは
髄膜刺激症候としては以下が挙げられる。
- 頭痛
- 悪心
- 嘔吐
- 項部硬直
- ケルニッヒ徴候(Kernig sign)
また、『ブルンジスキー徴候(Brudzinski's sign)』『意識障害』『けいれん』などが見られることもある。
※ちなみに、ケルニッヒ徴候似ている神経学的所見にラセーグ徴候(Lasegue sign)があるが、こちらは疼痛が原因であり、通常一側性である。
関連記事
⇒『ケルニッヒ徴候(Kernig Sign)とは?+ラセーグ徴候と何が違うの?』
「項部硬直」と「ブルンジスキー徴候」の違い
項部硬直とブルンジスキー徴候は、同じような検査なため違いを記載しておく。
上記の検査方法は、「背臥位で頸部を他動的に屈曲していく」といった共通した手法を用いる。
ただし、「どの様な所見をもってして陽性と判断するか」には違いがある。
項部硬直:
頸椎の伸展や回転には抵抗がなく、前屈のみに抵抗があったり痛みを訴える場合を陽性と判断する。
頸部屈曲の可動性としては「頸部が硬直している」感じ。
ブルンジスキー徴候:
他動的な頭頸部屈曲によって、テスト中に患者の股関節・膝関節が屈曲することで陽性と判断。
ブルンジスキー徴候についてピンとこない人は、以下の動画を参照(頸部の操作によって下肢が動くのが分かる)。
ブルンジスキー徴候に関しては以下の記事でも解説しているので参考にしてみてほしい。
髄膜刺激症状に関して、問診で確かめること
くも膜下出血の症状は突発する激しい頭痛なので、以下を問診する。
・頭痛が突発したかどうか
・頭痛が生まれてから経験した頭痛の中で最も強いものかどうか
加えて、「発症時に意識障害や外傷があったか」も聞いておいた方が良い。
行ってみるべき神経学的検査
前述したように、問診に加えて以下の神経学的検査が有用となる。
- 項部硬直
- ケルニッヒ徴候(Kernig sign)
- ブルンジスキー徴候(Brudzinski's sign)
また、バイタルサイン・意識レベル・眼球運動・筋力検査・腱反射・病的反射なども検査した方が良い。
神経学的検査は、一つの所見だけでなく、組み合わせて判断することが大切
上記の中で、『項部硬直』と『ケルニッヒ徴候』の両方があれば髄膜刺激症状な可能性が高い。
一方で、項部硬直のみが陽性な場合は以下などの事もある。
・小脳扁桃ヘルニア
・後頭蓋窩腫瘍
・頸椎疾患など
あるいは、ケルニッヒ徴候のみが陽性な場合は、以下などの事もある。
・ハムストリングスの短縮
つまり、複数の検査が陽性であるかどうか(問診所見も含めて)が大切となる。
※まぁ、髄膜刺激症状を評価して何らかの疾患を『診断する』というのは理学療法士・作業療法士の範疇を超えているが、この様に考えてリーズニングする力は重要となる。
※ちなみに、理学療法士・作業療法士が重要視すべき問診に関しては以下で詳しく解説しているので興味がある方は参考にしてみてほしい。
ただし、何事にも例外は存在し、以下では髄膜炎やくも膜下出血あったとしても『項部硬直』と『ケルニッヒ徴候』が共に陰性なことがある。
・新生児
・乳幼児
・昏睡患者
・・・・・・・・などなど。
成人髄膜炎に対する髄膜刺激症状所見の信頼性
ちなみに、この記事で記載してきた検査所見の信頼性は以下になる。
検査・徴候 | 感度 | 特異度 | 陽性的中率 | 陰性的中率 | 陽性尤度比 | 陰性尤度比 |
---|---|---|---|---|---|---|
項部硬直 | 30% | 68% | 26% | 73% | 0.94 | 1.02 |
ケルニッヒ | 5% | 95% | 27% | 72% | 0.97 | 1.0 |
ブルジンスキー | 5% | 95% | 27% | 72% | 0.97 | 1.0 |
Thomas, KE; Hasbun, R; Jekel first3=J; Quagliarello, VJ (Jul 2002). “The diagnostic accuracy of Kernig's sign, Brudzinski's sign, and nuchal rigidity in adults with suspected meningitis” (full text). Clin Infect Dis 35 (1): 46-52. doi:10.1086/340979. PMID 12060874.
髄膜刺激症状の緊急度
髄膜刺激症状がある場合、髄膜炎やくも膜下出血のことが多く、緊急に精査する必要があり、入院になることが多い。
リハビリ職種(理学療法士・作業療法士)の範疇ではないため、直ちに主治医へ連絡する。
髄膜刺激症状の鑑別
髄膜刺激症状があったら、できるだけ早く頭部CTの撮れる施設に転送する。
頭部CTと血液検査を行い、くも膜下出血なのか、髄膜炎・髄膜脳炎なのかの鑑別をする。
・くも膜下出血の場合は,脳血管撮影や脳外科依頼が必要になる。
・髄膜炎・髄膜脳炎が疑われる場合は、腰椎穿刺を行う。
髄膜刺激症状の治療
くも膜下出血では、原因が動脈瘤や脳動静脈奇形の場合は、手術適応となることが多い。
髄膜炎、髄膜脳炎の一般的処置としては、安静にさせ、適量の補液を行い、必要に応じて酸素吸入・解熱薬・抗けいれん薬などの対症療法を行う。
細菌性髄膜炎・結核性髄膜炎・真菌性髄膜炎、単純へルペス脳炎(+菌不明の細菌性髄膜炎)などに関しては医学書を参考にしてみてほしい。
関連記事
ここまでリンクを貼ってきたが、最後にそれらをまとめて掲載して終わりにする。
ケルニッヒ徴候(Kernig Sign)とは?+ラセーグ徴候と何が違うの?
『ブルンジスキー徴候(Brudzinski sign)』と『他動的頸屈曲(passive neck flexion)』の違い