この記事では『多発性筋炎(+皮膚筋炎)』について解説していく。

 

多発性筋炎・皮膚筋炎とは

 

多発性筋炎(polymyositis ; PM)』は、以下のように言われている。

 

細胞性免疫にかかわる自己反応性T細胞により筋線維が障害されることによって生じる、全身性の筋の炎症・変性による筋力低下を基本とする疾患。

骨格筋以外の関節、肺、心臓、消化器などの臓器にも障害をきたすことが多い。

 

 

皮膚筋炎(dermatomyositis ; DM)』とは、以下のように言われている。

 

液性免疫にかかわるT細胞により生じた血管炎が病因と考えられており、上眼瞼や手指関節背側に特徴的な紅い発疹がみられる。

 

 

でもって、多発性筋炎・皮膚筋炎ともに「膠原病・自己免疫疾患」の一つとも考えられている(ただし、諸説ある)。

※膠原病・自己免疫疾患としては『関節リウマチ』が有名だと思う。

 

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多発性筋炎はどんな人がなりやすいか?

 

  • 多発性筋炎、皮膚筋炎はいずれも女性に多く、男女比は約1:3とされている。

 

  • 皮膚筋炎の一部を除いて成人発症の疾患で、初発年齢はいずれも20歳以上、発症が最も多い年齢層は50代とされています。

 

  • 小児発症の皮膚筋炎の初発年齢は5~9歳に好発するとされています。

 

 

多発性筋炎・皮膚筋炎の症状

 

多発性筋炎、皮膚筋炎は、何らかの機序による免疫異常がその原因と考えられているが、詳細なメカニズムは明らかになっていない。

 

でもって、多発性筋炎・皮膚筋炎でみられる症状や合併症には以下などがあげられる。

 

筋症状:

亜急性ないし緩徐進行性の筋力低下が頚部屈筋や四肢の近位筋に認められる。

遠位筋は比較的筋力が保たれることが多い。

※筋痛がみられることは多いが、必ず認められるものではない。

 

皮膚症状:

皮膚筋炎では「皮膚症状」と「筋症状」が生じるが、「皮膚症状」に関しては典型的な症状を示し、具体的には以下の通り。

 

ヘリオトロープ疹 眼瞼の紫色の変色で、しばしば同部位の浮腫を伴う。
Gottron丘疹 手背や手指伸展側の紫色の盛り上がった丘疹
Gottron徴候 1手背・手指、肘、膝や足指に現れるガサガサした紅斑
皮下の石灰化 sしばしば潰瘍を伴って肘や膝にみられる。皮膚の石灰化は小児は症の皮膚筋炎にみられることがあるが、成人発症のものは稀である。

機械工の手

(mechanic’s hand)

手背・手掌が厚くひび割れた皮膚に変化するもの。
その他 V徴候、ショール徴候と呼ばれる頸部周囲の紅斑や爪囲紅斑が認められることがある。

 

でもって、筋症状を欠くものも皮膚筋炎の一病型とされ、以下に分類される。

amyopathic dermatomyositis症状、検査の陽性所見ともに欠くもの

hypomyopathic dermatomyositis筋検査で異常を認めるが、症状を欠くもの

 

※ちなみに、多発性筋炎には皮膚症状はない。

※皮膚筋炎の発症は、近位筋の筋力低下から始まることが多いが、先行して(あるいは同時に)皮膚症状がみられることが特徴である。

 

嚥下障害:

消化管の平滑筋の炎症により、消化管の運動低下をきたすことがある。

また、咀噛筋、咽頭筋の筋力低下のため嚥下障害がみられることがある。

 

問質性肺炎:

症状としては、息切れや咳がみられる。

間質性肺炎の合併は高率で、しばしば筋炎発症に先行して起こる。

間質性肺炎の経過は予後に大きな影響を与える。

 

悪性腫瘍:

悪性腫瘍の合併は皮腐筋炎では15~45%と報告されている。

特に40歳以上では、皮膚筋炎発症後のみでなく、すでに悪性腫瘍がある状態で皮膚筋炎を発症することもあるとされている。

女性では卵巣腫瘍が、男性では肺小細胞がんが多いとされている。

多発性筋炎でも、一般人口に比べて悪性腫瘍発症率は高いと報告されてる。

 

心症状:

皮膚筋炎の3分の1ほどに心筋炎を認める。

※心伝導障害が多いとされている。

 

多発関節痛:

多発性筋炎の発症時に約半数に合併するとされている。

※強皮症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、Sjogren(シェーグレン)症候群などとの合併例と診断される場合に多いと言われている。

Raynaud(レイノー)症状も20~30%に認められる。

 

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多発性筋炎・皮膚筋炎の診断基準

 

多発性筋炎・皮膚筋炎の診断基準として有名なものには『BahanとPterの診断基準』がある。

 

しかし、この基準では十分ではないことや検査法などに新たな知見が得られたことから、いくつかの新しい診断基準が提唱されている。

 

でもって日本でも厚生労働省の研究班(自己免疫疾患に関する調査研究班)により診断基準が作成されている。

 

この記事では、以下の2つを紹介しておく。

・BahanとPterの診断基準

・自己免疫疾患に関する調査研究班が策定した診断基準

 

 

BohanとPeterの診断基準

 

多発性筋炎と皮膚筋炎で有名なものが、BohanとPeterが1975年に策定した診断基準で、現在も用いられている。

 

この診断基準は、以下の項目を参考に判断する。

 

1.理学所見により認められる対称性の近位筋の筋力低下

2.血清筋由来酵素の上昇(クレアチンキナーゼ、アルドラーゼ、GOT、GPT、LDH)

3.筋電図の3徴候

 1)低振幅、短持続時間、多相の運動単位活動電位

 2)線維自発電位、陽性鋭波、刺入時電位の延長

 3)偽ミオトニー放電

4.筋生検査:変性、再生、壊死、間質への単核球浸潤

5.皮膚筋炎の典型的皮疹:ヘリオトロープ疹、Gottron(ゴットロン)徴候、Gottron丘疹

 

多発性筋炎:

上記項目1~4のうち、4項目あればdefinite、3項目でprobable、2項目でpossibleとする。

 

皮膚筋炎:

上記項目5に加え、1~4のうち、3項目があればdefinite、2項目でprobable、1項目でpossibleとする。

 

 

「BohanとPeterの診断基準」には以下などが鑑別疾患として挙げられている(鑑別すべき疾患も数多くあることが伺える)。

 

  • 中枢性・末梢性の神経疾患
  • 筋ジストロフィー
  • 結節性または感染性筋炎
  • 代謝性あるいは分泌性ミオパチー
  • 重症筋無力症

 

「自己免疫疾患んい関する調査研究班」策定の診断基準

 

厚生労働省の研究班により診断基準は以下の通り。

※参考:難病情報センター

 

1.診断基準項目

(1)皮膚症状

(a)ヘリオトローブ疹:両側または片側の眼瞼部の紫紅色浮腫性紅斑

(b)Gottron丘疹:手指関節背面の丘疹

(c)Gottron徴候:手指関節背面および四肢関節背面の紅斑

(2)上肢または下肢の近位筋の筋力低下

(3)筋肉の自発痛または把握痛

(4)血清中筋原性酵素(クレアチンキナーゼまたはアルドラーゼ)の上昇

(5)筋炎を示す筋電図変化

(6)骨破壊を伴わない関節炎または関節痛

(7)全身性炎症所見(発熱、CRP上、または赤沈亢進)

(8)抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体(抗Jo-1抗体を含む)陽性

(9)筋生検で筋炎の病理所見:筋線維の変性および細胞浸潤

 

2.診断のカテゴリー

皮属筋炎:(1)の皮膚症状の(a)~(c)の1項目以上を満たし、かつ経過中に(2)~(9)の項目中4項目以上を満たすもの。

なお、皮膚症状のみで皮膚病理学的所見が皮膚筋炎に合致するものは、無筋症性皮膚筋炎として皮膚筋炎に含む。

多発性筋炎:(2)~(9)の項目中4項目以上を満たすもの。

 

3.鑑別診断を要する疾患

感染による筋炎、薬剤誘発性ミオパチー、内分泌異常に基づくミオパチー、筋ジストロフィ-、そのほかの先天性筋疾患、湿疹・皮膚炎群を含むその他の皮膚疾患

 

補足:診断に用いられる各種検査所見

 

診断には、前述した症状・身体所見のほかに、以下のような種検査所見が重要となる。

  • 血液検査
  • 筋電図
  • 筋生検
  • 自己抗体
  • 筋MRI

 

 

多発性筋炎・皮膚筋炎の治療(リハビリ含む)

 

多発性筋炎、皮膚筋炎の治療は、免疫抑制が中心となる。

 

副腎皮質ステロイドホルモンなど複数の免疫抑制薬を組み合わせることによる治療が第一選択となる。

 

※重症例には免疫グロブリンの頚静脈投与、血漿交換療法、その他の免疫抑制薬が用いられることもある。

 

間質性肺炎合併例に関して:

副腎皮質ステロイドホルモンが第一選択であるとともに、アジュバンド製剤が追加されることがある。

間質性肺炎は次の悪性腫瘍とともに生命予後を左右する重要な合併症なため、優先的に治療することが求められる。

 

悪性腫瘍に関して:

多発性筋炎・皮膚筋炎は、ほぼ全身の悪性腫瘍の発生率が上がるため、十分な検索を行う必要がある。

 

 

各種リハビリにおける留意点

 

関節可動域訓練に関して:

関節痛や筋痛がみられることはあるが、初期はROMの障害を生じることは少ないと言われている。

ただし「歩行困難な重症例」や「慢性期」では、二次的な下肢の屈曲拘縮・尖足が生じる可能性を考慮してリハビリを実施する。

※多発性筋炎においては、大腿四頭筋に比してハムストリングスの筋力が強いことにより、膝の屈曲拘縮をきたしやすいとの意見がある。

関連記事⇒『関節可動域訓練(ROMエクササイズ)とは?

 

筋力増強訓練に関して:

筋力低下は左右対称で、体幹に近い近位筋を中心に生じる。

具体的な筋力低下部位としては「肩・股関節周囲筋」「脊柱起立筋」「咽頭筋」などが挙げられ、重症例では横隔膜、肋間筋、腹筋の筋力低下も認める。

筋力低下の変化を把握しておくことは、薬物療法の効果の判定や病勢の進行状態、再発や過用症候群が生じていないかを知るためにも重要である。

筋力強化の際には、特に筋力が著しく低下している筋の負荷量に注意を払う必要がある。特に開始初期は疲労の状況などをモニターしながら、過大な負荷にならないよう注意する。

※長期に筋力低下が残存する場合は、必要に応じて杖や車椅子などを処方する。

 

 

基本動作・ADL訓練に関して:

疲れやすさや、階段昇降、床からの起立、高い所へ物を持ち上げるなど、重力に抗した動作の困難さを訴える場合が多くみられる。

そのため、これら抗重力動作の可否・動作パターンはチェックしておく必要がある。

でもって、炎症の強い時期は(筋力強化運動も含めて)積極的な訓練は避け、関節可動域の維持が中心となる。

一方で、炎症が強くない(あるいは抑えられた)と判断されれば、(筋力強化運動も含めた)積極的な基本動作やADL訓練が開始される。

 

 

構音障害、嚥下障害、呼吸機能障害に対する訓練に関して:

咀嚼筋・咽頭筋・食道横紋筋が障害されると、構音障害や嚥下障害が生じる。

嚥下造影検査(VF)などで評価を行う。

※発症早期から嚥下障害がみられる例が多いので、注意が必要。

嚥下障害に関しては、前述したような筋群の筋力低下が中心であることが多いが、食事形態の調整、場合により経管栄養や補助食品を利用しながら、栄養を確保するとともに、適切な嚥下法などの練習を行う。

 

 

病期別のリハビリ

 

念のため、病期別リハビリの考えも併記しておく。

 

急性期~回復期のリハビリ:

急性期における第一選択は安静であるが、二次的廃用症候群の防止が不可欠である。

重症例で臥床期間が長期化する可能性があるときには、良肢位の保持が重要である。

また、他動運動により四肢関節の可動域や体幹・胸郭の柔軟性の維持を図る。

この際の疼痛には悪性腫瘍の合併や皮膚症状などの禁忌を確認したうえで、ホットパックなどを用いた温熱療法の適用が効果がある。

炎症症状の改善傾向がみられたら、ベッド上での上肢の屈伸、下肢伸展位交互挙上、膝を立てた姿勢からのブリッジ運動、腹筋の収縮を意識しながら強く息を吐き出す練習などを実施する。また、できるだけ早期に座位練習を開始して、立位・歩行練習へと進めていく。

 

慢性期のリハビリ:

炎症所見が軽度で、血清でcreatine kinase(CK)の値がほぼ正常域内で継続している状態を慢性期と考える。

多発性筋炎・皮膚筋炎ともに病状が長期化する例が多く、回復が不完全なままにとどまってしまう例が20~30%に達する。

病状の再燃や過用性症候群などに留意しつつ、体幹近位筋を中心とした筋力維持強化を目標に、継続的な運動療法により回復を図っていく。

また日常生活を安全に無駄なエネルギーを労しないで営めるように、起居動作の工夫や生活空間の環境調整が重要になる。

具体的な運動として、四つ這いでの上下肢挙上、スクワットによる下肢筋力強化、バランスボールなどを用いての体幹筋強化、自転車エルゴメーターを用いての持久力強化などを実施する。

 

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その他の補足

 

その他の補足として、「(ここまでの記載と重複した部分も多々あるが)リスク管理」と「家族指導・環境調整」について記載しておく。

 

リスク管理

 

疾患の再燃やステロイドミオパチー、また過用症候群などによる症状の変化をとらえるためには、徒手筋力検査(MMT)が重要である。

 

運動量の設定は、翌日に疲労感や筋痛を残さない程度が基本となる。

 

心筋炎の合併による心機能障害や、皮膚筋炎に合併することの多い間質性肺炎によって心肺機能が低下している例があるので、運動療法中の心拍数モニターが必要となる。

 

またステロイド療法の影響もあって骨粗鬆症による骨折の危険が高く、感染症への注意も必要である。

 

 

家族指導・環境調整

 

多発性筋炎の筋力低下は四肢近位筋に著明で、また筋力低下の回復が不十分なままとなってしまう例も多く、抗重力の動作が困難となる。

 

2階から1階への生活場所の変更、起立時に利用する台の設置、半腹臥位からの起き上がり指導、また生活用品の置き場所を出し入れのしやすい低い位置に変えるなどの環境調整が必要となる。

 

車いすとベッド間の移乗を容易とする昇降式電動車いすの導入なども考慮する。

 

 

多発性筋炎・皮膚筋炎の予後

 

  • 問質性肺炎、悪性腫瘍合併例では、発症まもなく死の転帰をとる場合もある。

 

  • 5年生存率は全体で80~90%といわれている。

 

  • 機能的には寛解が得られれば、それ以上進行しないと考えられているが、後遺症として筋力低下を残す場合がある。

 

  • また、再燃を繰り返すものもある。

 

 

質問

 

復習もかねて、『書籍:リハビリテーション医学Q&A 専門医を目指して』から多発筋炎にまつわる質問を1つ引用して終わりにする。

 

質問:多発筋炎における歩行の特徴で正しいのはどれか。

 

①歩幅が広くなる

②動揺性歩行になる

③踵を地面に打ちつけるようにして歩く

④遊脚期に下垂足がみられる

⑤腰部を後方に突き出すようにして歩く

 

回答:2

 

解説:

  1. 右踵が接地して、次に反対側の踵が接地するまでの動作を1歩(step)といい、その距離が歩幅(step length)である。歩行時の両踵間の幅である歩隔が筋疾患で広くなることはあるが、歩幅が広くなることはない(関連記事⇒リハビリに必要な『歩行の基礎知識』まとめ一覧)
  2. 多発筋炎や筋ジストロフィーなどの、下肢の近位筋優位の筋力低下を示す疾患では、両側の中殿筋の筋力低下のため、体幹を左右に振り動かしながら歩く(動揺性歩行;waddling gait)、動揺は立脚相から遊脚相への移行期に著しい。
  3. 踵打ち歩行は、脊髄性運動失調でみられる。
  4. 弛緩性対麻痺のうち、前脛骨筋などのように遠位筋群に障害が強いと下垂足となり、遊脚期に股関節を大きく屈曲して足を高く上げた鶏歩となる。多発筋炎の場合の尖足での歩行はアキレス腱短縮によるものであり、遠位筋筋力低下による下垂足とは異なる(関連記事⇒『異常歩行(歩行障害)の全種類・原因を網羅
  5. 近位筋優位の筋力低下を示す疾患では腰椎前彎の増強を伴い、腹部を前方に突き出し歩行する。