理学療法士はジェネラリストであるべきか、スペシャリストであるべきか?

 

この問いに対して、自分の中でいまだに結論は出ていないが、

そんな状態における現時点での私見を述べてみたいと思う。

 

この記事を作成しようと思ったきっかけ

 

以前から「スペシャリスト」と「ジェネラリスト」に関する私見を述べたいと思いつつも先延ばしにしていた。

 

そんな私の重い腰を上げるきっかけになったのが、

「理学療法士協会副会長の内山靖先生」の以下の発言だ。

 

理学療法士はスペシャリストであるべきか?

はたまたジェネラリストであるべきか?

そんなことが議論されていたことがある。

しかし今は、そんな議論がおこなわれる時代じゃない。

これからの理学療法士は『Comprehensive Physical Therapy』である必要がある。

これは、医師で言うところの『総合診療医』の意味合いを指す。

これからは、専門家としての「総合能力」が問われる時代なのだ。

 

これは、とある学会における内山氏の発言。

これを聞いた際、私は心の中で以下の様に突っ込んだ。

 

ん?それをジェネラリストと呼ぶのでは??

 

その後、改めて深く考えてた結果、

恐らく内山先生が考える『Generalist』は以下なのだと思うに至った。

 

Generalist=浅く広い知識を満遍なく有している理学療法士

 

 

一方で『Comprehensive Physical Therapy』は以下なのだと思う。

 

全ての理学療法分野において卓越した知識・技術を有している理学療法士

 

『Comprehensive Physical Therapy』の意味が上記だと仮定すると、

 

『Comprehensive Physical Therapy』は、マンガ『ハンターハンター』における、

クラピカの『エンペラータイム』に類似している。

 

~画像引用『HUNTER X HUNTER 9 (ジャンプ・コミックス)』より~

 

理想は、そうなんだろうが、

もしコレを指しているのだとすれば、賛否両論あるとは思う。

 

また、ジェネラリストとしての能力を土台としつつ、

スペシャリストとしての強みを身に着け、

さらにエキスパートとしての頂にたどり着くとの考え方もある。

 

ここから先は(内山氏の)「Comprehensive Physical Therapy」という用語は脇に置き、「ジェネラリストとスペシャリスト」や「キャリアデザイン」について記事にしていく。

 

 

ジェネラリスト・スペシャリストとは?

 

スペシャリスト・ジェネラリストの意味は以下の通り。

 

スペシャリスト(specialist):

特定分野に深い知識や優れた技術をもった人。

 

ジェネラリスト(generalist):

分野を限定しない広範囲な知識・技術・経験をもった人。

 

上記を比較した際に

「いったい自分は、どっちになりたいのかなぁ」と考えてみる。。

 

う~ん、甲乙つけがたいが、

私は「スペシャリストになりたい」と直感的に思った。

 

皆さんは、上記を比較した際、

どちらの理学療法士・作業療法士になりたいだろうか?

 

 

「個人的になりたい側」と「社会が求めている側」

 

ただ、ふと立ち止まって考えてみる。

 

直感的に「スペシャリストが良い」と思った理由は以下のようなものだ。

 

「一つの物事を極めているという」感じがカッコ良い

 

ただし、スペシャリストの方向に進み続けて、

それが「圧倒的にジェネラリストよりも得をするか」「社会的に必要とされているか」を考えると、どちらが良いのか迷ってしまう。

 

リハビリ(理学療法・作業療法)というのは、

一つの分野に特化しているよりも、

幅広い知識が求められることがある。

 

例えば高齢化社会によって、

明らかに理学療法士・作業療法士の対象平均年齢層は高くなっている。

 

※小児やスポーツ選手に関与している人も存在するが、

それらも含めて平均しても、

リハビリ対象の平均年齢層は昔と比べて跳ね上がっているはずだ。

 

で、高齢者というのは複合的に様々な疾患を合併していることも多く、

仮に運動器疾患として診断名がついていても、

「体が何となくだるい」

「全身にむくみがある」

「急に(診断名とは別の部位が)痛くなった」など

様々な症状を呈し、フィジカルアセスメントや対象法など、

幅広い知識を有していることが大切な場面も多い。

 

維持期に携わっている療法士が、

急性期に必要な知識(で尚且つ維持期では活用する頻度が低い知識)

まで網羅する必要は全くないとは思うが、

リハビリにおける幅広い知識(やリハビリ以外の知識も含む)

や技術を多く持っておくことは有用だと思う。

 

で、これは自身がどの分野で活躍しているかにもよるが、

介護分野に携わっている人であれば、

この考えには共感してくれる人も多いのではないだろうか?

 

そう考えていくと、以下のようにも思えてくる。

 

スペシャリストってカッコ良いな。ただ、スペシャリストとして活躍できる分野は非常に狭く、大多数の理学療法士・作業療法士はジェネラリストであるほうが活躍できる可能性が高いのではないだろうか。

 

時代の流れを考えると、理学療法士・作業療法士に期待されることは、どんどん増えてきている。

 

で、「個人的になりたいもの(スペシャリスト)」と「社会が求めているもの(ジェネラリスト)」は異なる可能性もあり、うまく折り合いをつけていくこともが大切なのではと思うことがある。

 

でもって、どのような社会的価値観にも対応できるよう

ジェネラリストとしての能力は備えておかなければならない時代になっていると感じる。

 

※スペシャリストとして狭い分野に特化して、

今後もその分野から離れることなく、

定年までその分野で活躍し続けようという覚悟があるのであれば話は別だが。

 

高齢社会の到来により、重複する障害をもつ患者が増加しているそのようななかで、いま改めてジェネラリストの重要性が再認識されている。多様な病態に対応するためには、理学療法の基盤となる基礎的な知識や技術の習得は不可欠といえる。

ある特定領域の理学療法を追究することは大いなる意義があり、実践の場でも役立つ。

しかし、目の前の患者に対して専門領域でないからと、何の理学療法も提供できないとしたら本末転倒である。やはり、ジェネラリストを基盤としたスペシャリストとして成長することこそが重要であろう。

 

~「書籍:そのとき理学療法士はこう考える 事例で学ぶ臨床プロセスの導きかた」より引用~

 

 

一つの物事を極めると自信が持てる

 

スペシャリストが優遇される職場はあるだろう。

 

一方で、「ジェネラリストが優遇される」というのはピンとこない。

 

だた、優遇される云々ではなく職場としての理想は以下だと思う

 

「数人の突出したスペシャリスト」ではなく「一定基準を満たした多くのジェネラリスト」

 

これだけリハビリ職を多く抱える職場が増えてくると、

スペシャリスト云々ではなく

「集団として協調した行動がとれる人材かどうか」といった様々な要素が、

なおさら絡んでくると感じるわけだ。

 

※百歩譲ったとしても

「必要最低限のジェネラリスト的要素を兼ね備えたスペシャリスト」

が求められていると思う。

 

では、新人のころからジェネラリストを目指すのが良いかと言えば、

必ずしもそうとは思わない。

 

つまりは、

「ジェネラリストを意識しつつも、

自分の得意分野を見つけて深掘りしておいた方が良い」

と思うということだ。

 

特定の分野を「極める」というのは難しいが

「得意となり、自信が持てる」というのは、

自己効力感が高まり、ますます得意分野で結果を出しやすくなる。

 

※その分野における社会的報酬の増加につながりやすくなるので、

仕事をする上で自然とパフォーマンスが上がるといった

好循環を生むことにもなるだろう。

 

関連記事

⇒『社会的報酬って何だ? 非常に興味深い「報酬」だよ

⇒『幸福優位の法則とは?ポジティブシンキングの重要性

 

で、一つの分野でも良いので自身の得意分野が出来れば、

自然と周辺の知識・技術も習得へのモチベーションも高くなり、

知らず知らずに「ジェネラリスト的要素も兼ね備えた、スペシャリスト」になっていることもあるのではないだろうか?

 

なので、「社会が求めているものはジェネラリスト」と前述したが、

実際は「自身の得意分野を一つは見つけ、深化させていく」というのも

同時進行的に行っておいた方が良いと思う。

 

※もちろん、得意分野を持っていれば

「ジェネラリストとして働きつつも、

思わぬところでスペシャリストとしての能力が活かせるチャンスが巡ってくる」

といったこともあり得る。

 

もう少し余談を記載するならば、自分の強みを見つけておけば

リハビリ(理学療法・作業療法)が楽しくなりやすい

(働くのが楽しくなりやすい)ので、必然的に知識も雪だるま式に増えていく。

 

好きこそものの上手なれ。

 

まずは、ジェネラリストでもスペシャリストでも何でも良いから

「リハビリ(理学療法・作業療法)って楽しいな」って域に達することが出来れば、

きっと良い道が開けてくると思う。

 

って、この考えは、この記事の趣旨から逸れるか。。。。

 

 

ジェネラリストは中途半端?

 

リハビリ(理学療法・作業療法)を実施するにあたって、

必要最低限の広く浅い知識を有しておくことは大切になる。

 

しかし一方で、広く浅い知識だけでは

「その他大勢の理学療法士との差別化が図れない」

ということが起こってくる。

 

つまり、中途半端なのだ。

 

でもって何度も重複した記載になるが、

以下が病院・施設で他のリハビリ職(理学療法士・作業療法士)と働く上での理想像と言える。

 

「浅く広い知識・技術」ではなく「深い広い知識・技術」を有している

 

このように、PTが活動する場によってはジェネラリストとしての色合いが強まる。ジェネラリストは幅広い知識をもつため、地域の理学療法では特に重要であり、浅く広い知識や技術だけでは理学療法の質を下げる一方である。浅く広い理学療法すなわち多くの枝葉はあっても、幹が太くなければ大木にはならない。つまり、われわれは多くの専門的な知識技術を融合できるジェネラリストになっていかなくてはいけない。

~『書籍:そのとき理学療法士はこう考える』より引用~

 

1つの領域の専門性を高めておくことが役立つ。

つまり、1つの専門領域をもつことは、そのPTの土台となり、木に例えるならばPTの幹といえる。

木の幹がしっかりしていれば、様々な方向へたくさんの枝葉を広げていくことできる。

~『書籍:そのとき理学療法士はこう考える』より引用~

 

 

スペシャリストで差別化を図る

 

記事の途中で以下の様に前述した。

 

スペシャリストってカッコ良いな。ただ、スペシャリストとして活躍できる分野は非常に狭く、大多数の理学療法士・作業療法士はジェネラリストであるほうが活躍できる可能性が高いのではないだろうか。

 

しかし、「大多数の理学療法士と差別化を図りたい」と思っている理学理学療法士・作業療法士は多いのではないだろうか?

 

でもってスペシャリストであることは、

他者との差別化を図るうえでジェネラリストより有利である。

 

これは職場内であってもそうだし、

副業(将来的には兼業?)、起業などの夢へ広げようと考えた際も、

スペシャリストのほうが有利だろう。

 

「将来はリハビリ(理学療法・作業療法)のスペシャリストとして

○○○へと発展させていこう」と希望を抱くことは、

自身のドーパミン分泌を促し、あなたの行動を促進させる原動力となる。

 

関連記事⇒『コラム 報酬系まとめ! 全てはここから始まった。。興奮は幸せを呼ぶのか?

 

 

ちなみに、この記事は

「リハビリ(理学療法・作業療法)としてのスペシャリスト・ジェネラリスト」

にフォーカスした記事になるが、

リハビリ(理学療法・作業療法)としての強みと、

他分野における強みを掛け合わせるといった発想も悪くはない。

 

これであれば、一定レベルの(スペシャリスト的)な強みを持っていれば、

それと他分野を掛け合わせることで化学反応を起こすことも可能であり、

時として「その分野で突出した能力を有したスペシャリスト」よりも活躍出来る可能性を秘めている。

 

更には、「リハビリ(理学療法・作業療法)と掛け合わせる要素」は

発想次第では無限大なので、

「その分野で突出した能力を有したスペシャリスト」になるために必要な資金・時間・才能が少なくて済むので、効率的な場合もある。

 

 

内的キャリアと外的キャリア

 

『書籍:リハビリテーション職種のキャリア・デザイン』では、キャリアを外的キャリア・内的キャリアに分類して解説している。

 

※マサチューセッツ工科大学の教授であるエドガー・シヤインの分類らしい。

※厚生労働省による「キャリア」の定義は、この分類における「外的キャリア」に該当するようだ。

 

外的キャリア 内的キャリア

客観的に確認できる

学歴

業界

会社名

仕事

職位

給料

職歴

主観的に確認できる

興味

関心

価値観

仕事観

やりがい

使命感

役割

 

外的キャリア:

時間経過の中で積み上げてきたことにより得られた「職業的能力やそれに関するもの」を差し、客観的に確認できるもの。

 

内的キャリア:

外的キャリアには該当しない、本人にしかわからない「主観的な」キャリアを指す。

分かりやすい内的キャリアとしては「やりがい」が挙げられ、「充実感」や「(金銭的報酬ではなく)社会的報酬の多寡」なども該当する。

 

 

内的キャリアを重要視する人が増えている件

 

以前は、「学歴」「業界」「会社名」「職位」「給料」「職歴」などの外的キャリアを重要視する人が多かったが、最近は異なっているようだ。

 

つまりは

「いくら給料が良くっても、興味関心が薄かったり、やりがいを感じないものはやりたくない」

といった風潮が強くなっている。

 

極論をいえば

「楽しくて、ストレスも感じない職場であれば、給料低くて昇給も少なくて構わない」

といった人達も増えてきている。

 

※もちろん、生きていくうえでは最低限のお金は必要であるが、

贅沢などはせず、質素な生活を送れれば構わないという人たちも増えているということ。

 

※これが、いわゆる草食系ってやつですか??

 

 

でもって

「自分が楽しかったり、ストレスを感じなくてすむ」っと言うのを第一条件とし、

「学歴」「職位」「職歴」などといった他者の目(他者からの評価)を気にする人が減ってきているようだ。

 

 

で、確かに内的キャリアを充実させることは大切だと感じる。

 

給料は高いに越したことはないが、

内的キャリアが満たされていないと、

そもそも仕事が続かないし、病気も起こしやすい。

 

※結果的に「貯金が貯まり、高給取りよりも細く長く勤めることが出来ている」なんて例も多いだろう(心身ともに健康なら、医療費などの出費も不要になる)。

 

 

自身のキャリア・デザインを考えよう

 

今は医療報酬・介護報酬ともに目まぐるしく変化しており、先が読みにくくなっている。

 

※大きな流れは既に読めているが、個別具体的に、

各々の職場における細々とした改変に右往左往せざるを得ない状況が、

延々と続きそうな気配がする。

 

それに加えて、理学療法士・作業療法士の過剰供給により、

「有資格者だから」という理由だけでは

優遇など(当たり前だが)してもらえなくなっている。

 

でもって、これからの時代に働く理学療法士・作業療法士は

「環境変化が著しい人生をいかに乗り越えることの出来る技術」

を持っておく必要がある。

 

つまりは、『キャリアをデザインする技術』が必要ということだ。

 

(前述した外的キャリア・内的キャリアも参考にしつつ)

自分のキャリアをどのようにデザインしていくか、

一度考えてみることには価値がある。

 

そのためには、様々な情報収集も有意義だし、

自身を深く内省することにも価値がある。

 

闇雲なキャリア・デザインではなく、

「正しい場所・正しい方向・正しい量でのキャリアデザイン」

が求められる時代がやってきた。

関連記事⇒『「努力は裏切らない」は本当なのか? コラムにしました。

 

 

その結果、今の職場がベストだとの結論に至ることもあるだろう。

一方で、将来を見越してさっさと転職した方が良いと考える人もいるだろう。

はたまた、「雇用されるという働き方自体」に疑問視する人もいるだろう。

 

以前に『理学療法士・作業療法士の開業権は将来もムリ、メリットも無し!』という記事を書いたが、これは一つの考えに過ぎず、物事を柔軟に考え、時には思考を修正する必要がある。

 

他者にオススメなキャリアデザインが、

自身のキャリアデザインに適しているとは限らない。

 

正解のないキャリアデザインだからこそ、

色々と模索していく必要がありそうだ。

 

 

おすすめ書籍

 

この記事で参考にしたオススメ書籍は以下になる。