この記事では十字靱帯損傷に対する整形外科的検査である『引き出しテスト』について解説している。

 

また補足として『ザギング徴候』『ラックマンテスト』についても解説している。

 

目次

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引き出しテスト

 

引き出しテストの方法・陽性所見・解釈は以下になる。

 

方法

引き出しテストには「前方引き出しテスト」と「後方引き出しテスト」がある。

 

でもってポジショニングは、前方・後方引き出しテストともに以下となる。

 

肢位患者を背臥位にし、検者はその足下で足部に向かって腰掛けて安定をはかる。

検査法患側膝を90°屈曲させ、足底をベッドの上につける。足先を正面に向けて下腿回旋中間位とする。検者は両手の母指を膝蓋靭帯の内・外側に当て、他の四指を下腿後上面に当て支持する。

 

この状態で、下腿近位を前方へ引けば「前方引き出しテスト」、後方へ押し込めば「後方引き出しテスト」となる。

 

以下のイラストは「前方引き出しテスト」になる。

 

 

陽性所見

  • 前方引き出しテスト⇒前方に脛骨が過剰に動けば陽性。
  • 後方引き出しテスト⇒後方に脛骨が過剰に動けば陽性。

 

解釈

  • 前方引き出しテスト陽性⇒前十字靭帯損傷
  • 後方引き出しテスト陽性⇒後十字靭帯損傷

 

 

既に移動している場合は、それ以上移動しない

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引き出しテストの中でも、とくに「後方引き出しテスト」を実施する際は「すでに脛骨が後方へ移動し終わっていないか」を確認しておく。

 

すでに後方へ移動し終わっている場合は、そこから「後方引き出しテスト」を実施しても陽性にならない。

 

その様な見落としをしないためにも、側方から膝関節を眺め、脛骨粗面部が健側と比較して落ち込んでいないかチェックする。

 

例えば以下の写真は極端で分かりやすいと思う。

膝屈曲拘縮
札幌スポーツクリニックより画像引用~

 

検査肢位の時点で脛骨が後方に落ち込んでいる場合があり、この現象をサギング(sagging)徴候と呼ぶ。

後方押し込みテストをする際に、最初から脛骨がサギングした状態にあると、(それ以上後方へ移動しないため)後十字靭帯は問題ないと錯覚する可能性がある。

逆に、サギングした状態から前方引き出しテストを行うと、サギングしていた分だけ脛骨が前方に移動するため、あたかも前方引き出しテストが場性と判断してしまうことがある。

 

 

ラックマンテスト

 

余談としてラックマンテストも記載しておく。

 

ラックマンテスト(Lachman test)は、前方引き出しテストと同じ方法で、

膝関節を90°屈曲ができないときに膝関節を20°~30°屈曲位にして行うテストを指す。

 

一方の手で大腿遠位部を保持し、

他方の手で脛骨近位端を保持して前方に引く。

 

前方への引き出しが大きければ前十字靭帯損傷と判断。

 

ラックマンテスト

 

以下はラックマンテストの動画となる。

 

 

 

膝関節の動きと靱帯の緊張について

 

最後に、膝関節の動きと靱帯の緊張について一覧表(Lanzら1959)を掲載して終わりにする。

 

整形外科的テストを実施する際の理屈として、参考にしてみてほしい。

 

  外側側副靭帯 内側側副靱帯 前十字靭帯 後十字靭帯
屈曲
伸展
外旋
内旋 + or - + or -

+:緊張

-:弛緩

※:屈曲の程度によって緊張の度合いが変わる