例えば「ウォーキング」や「自転車漕ぎ」などの有酸素運動で疼痛が誘発されない(あるいは軽微)であり、実施後も増悪しないのであれば、是非お勧めしたい。

 

それは、上記のよう荷重⇔免荷が繰り返されることで、関節軟骨が養われるためだ。

 

今回は、そんな『荷重⇔免荷の重要性』『有酸素運動』について記載していく。

 

 

目次

閉じる

荷重⇔免荷の重要性

 

関節に力(荷重)がかかると関節軟骨から関節液が染み出す。

 

次に、力が抜ける(免荷)と、関節軟骨に関節液が染み込む。

 

※この感じは、ザックリとスポンジをイメージしてもらえば分かり易いと思う(スポンジほど柔らかくは無いのだが。。)

 

で、この「荷重⇔免荷」が繰り返されると、より多くの関節液が関節軟骨に染み込んでいく。

 

なので、例えばウォーキングなどの有酸素運動は、関節への荷重⇔免荷をリズミカルに繰り返すことになるので、関節軟骨の劣化を予防し、痛みを軽減するのに有効となる。

①⇒力が加わる(荷重)と、関節液が染み出す。

②⇒力が抜ける(免荷)と、関節液が染み込む。

 

 

膝への適度な刺激は重要だよ

 

変形性膝関節症の予防においても、活発な身体運動によって膝へ刺激を加えてあげることは重要となる。

 

変形性膝関節症の初期には『関節軟骨の表層が剥離⇒次第に軟骨の亀裂が生じる⇒亀裂が進行する⇒軟骨が減少する』という負の連鎖が起こる。

 

そんな負の連鎖に対して、身体的運動が活発であれば、軟骨量を維持することが可能(限定的な証拠)で、軟骨欠損が少ない(強い証拠)という結果が得られている。

Urquhart DM, Tobing JF, Hanna FS, et al.: What is the effect of physical activity on the knee joint? A systematic review. Med Sci Sports Exerc 43(3): 432-442, 2001

 

この結果から、変形性膝関節症(の特に初期段階)における活発な運動は軟骨にとっては有益な可能性がある。

 

また、軟骨は滑液に満たされた変形可能な組織なため、適度な刺激によって関節軟骨に変形を与え、軟骨の細胞間質の移動をもたらす。

 

ただし一方で、(高レベルの)スポーツに参加する人は、変形性関節症を発症するリスクが大きいとの意見がある。

 

Saxonらはねじり負荷・急加速・急減速負荷繰り返し衝撃、高レベルでのスポーツ参加に関わる活動で、関節症発症のリスクが増すと結論している。

 

まぁ、ここではアスリートレベルの話をしている訳ではないので、以下だけ覚えておこう。

 

変形性膝関節症の初期において(不動でいるよりも)、荷重⇔免荷が関節に生じる運動(つまり、ウォーキングなどの有酸素運動が有効な場合が多い。

 

ちなみに、不動が関節に与える弊害(末梢感作など)については以下を参照してみてほしい。

⇒『生活不活発病って何?廃用症候群と違うの? 徹底解説します!

 

 

また、(疼痛を伴わない程度の)有酸素運動は爽快感を与え、脳へのも好影響を与えてくれる。

その影響はセロトニンなど内因性疼痛抑制系を賦活させるホルモンを分泌させてくれるため、これによっても鎮痛効果が期待できる。

関連記事⇒『徒手理学療法に重要な内因性疼痛抑制系まとめ

 

 

変形性膝関節症に対する有酸素運動の有用性

 

ウォーキングなどの有酸素運動は『荷重⇔免荷』の繰り返しによりメリットがあるのは前述したとおりである。

 

ただ、これ以外にも有酸素運動のメリットは存在し、それは以下などが挙げられる。

  • 血流が良くなる
  • 余分な脂肪が燃焼する(要するに減量になる)

 

血流が良くなる

 

ウォーキングなどいより下肢の筋収縮・弛緩が為されることにより筋のポンピング作用により血流が良くなる。

 

この「血流改善」は膝周囲を含めた組織の新陳代謝を活性化させ、関節が動きやすくなる。

 

※動かさないことで痛みが増強するといった悪循環を断ち切ることができる。

 

 

余分な脂肪を燃焼する

 

有酸素運度は脂肪を燃焼させ、減量効果があるのは周知の事実である。

 

でもって、減量は変形性膝関節症による疼痛の軽減に対して有用だとするエビデンスがある。

 

つまり、有酸素運動は関節軟骨云々のメリット以外に、余分な脂肪を燃焼させ、膝関節への負担を軽くするといったメリットも期待できるという事になる。

 

 

注意! 荷重⇔免荷の適刺激は個人差がある

 

重複するが、「膝への適度な刺激」は変形性膝関節症の症状緩和に重要なる。

 

そして、変形性膝関節症の進行に伴い「適度な刺激」は変化してくると思われ、(当然のことながら)「変形性膝関節症初期」と「変形性膝関節症末期」では適切な刺激は異なる。

 

そんな『適刺激』は、何も「膝への荷重」あるいは「自動的な運動」のみならず、他動運動も該当する。

 

たとえば臥床傾向が強く、膝への訴える患者の中には、明らかに刺激が不足しているケースがある。

 

その様な際はと生じない範囲での適切な他動運動(あるいは段階的に自動介助運動など)で、即座に荷重痛が軽快し、歩行の能力も改善するケースがある。

「臥床傾向という意味で訪問リハビリで多いケースではある。」

 

あるいは、過活動によって荷重痛が生じているようなケースにおいては「関節モビライゼーションによる膝関節の離開」などが即自的効果に繋がることもある。

関連記事⇒『モビライゼーション(股・膝・足関節)の「方法」と「成功の秘訣」!!

 

あるいは、陸上での歩行で荷重痛が強いのであれば、プールでのウォーキングであったり、(高齢者であれば)リハ室における自転車エルゴメーターを漕いでもらうことなどでも適度な刺激が入力される可能性がある。

 

さらには「キャスター付きバランスボード」の様なものも良いかもしれない。

 

 

いずれにしても「適度な刺激」と簡単に表現してはいても、それぞれ多様性を持っているため、その人に合った刺激を見つけてあげることも重要となる。

 

自動的あるいは他動的関節運動は軟骨に変形を与え、また軟骨の細胞間質での静水圧をつくり間質液の移動をもたらす。

 

 

膝以外へも着目! 運動連鎖にも注意

 

もちろん、単に荷重するだけでなく、加齢とともに膝の一部にメカニカルストレスが加わってしまう様なアライメント(運動連鎖も含めて)を呈してしまう場合があり、それらの配慮も含めてアドバイスをしてあげることが望ましい。

 

例えば高齢者では、膝の変形が重度になる、あるいは本人の運動戦略として股関節・下腿内旋位で荷重しながら歩行する高齢者もいる(主にシルバーカー・歩行器歩行レベルな高齢者に一定する存在する印象)。

 

つまり、つま先が内側に向いた状態で歩行している人達だ。

 

ただ、それで荷重痛が生じるのであれば「つま先を外(っとやや大げさに表現したほうが、理解してもらいやすい)にしながら歩いてみてください」というと今まで加わっていた部分とは別の部分にメカニカルストレスが分散され、良い結果に結びつく場合がある。

 

上記は、超簡単な例だが、この様な試験的治療、アドバイスも試しながら臨床に励んでみてほしい。

関連記事⇒『運動連鎖による理学療法 、これさえ読めばイメージ出来るよ!

 

 

関連記事

 

⇒『変形性膝関節症のリハビリ!『理学療法ガイドライン』を参考に総まとめ