この記事では、パーキンソン病に対する運動療法の一つである『リー・シルバーマン療法(LSVT)』について解説していく。

 

目次

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リー・シルバーマン療法(LSVT)とは

 

リー・シルバーマン療法(Lee Silverman Voice Treatment ; LSVT)は、パーキンソン病患者向けの「LSVT BIG」と「LSVT LOUD」のふたつの治療プログラムが用意されており、世界40カ国以上で実施されている。

 

LSVT BIGは「LSVTにおける運動障害改善プログラム」を指す。

 

内容:

体の部分を大きく動かすことで運動障害の改善を図る。

 

LSVT LOUDは「LSVTにおける発話障害改善プログラム」を指す。

 

内容:

大きく声を出す練習を通じて声量を取り戻し、顔の表情や嚥下機能の改善を図る。

 

 

『Lee Silverman Voice Treatment』という英語からも分かるように、もとは声の大きさに焦点を当てた言語療法(LEVT LOUD)であったが、現在ではその基本的な考えを運動に応用した治療プログラムも開発された(LEVT BIG)。

 

※「LEVT BIG」は「ビッグ体操」や「リーシルバーマン体操」などと呼ばれることもある。

 

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リー・シルバーマン療法(LSVT)の特徴

 

パーキンソン病では発声や動作を小さく行ってしまうようになり、自己修正が難しくなる。

 

例えば、姿勢関して、パーキンソン病特有の姿勢(例えば猫背)になっているという自覚がなく、他人に指摘されて初めて修正できる(で一時的に改善されるが、自己修正できないため、再び元に戻ってしまう)。

 

同様に、自身では大きい声でしゃべっているつもりでも、実際は小声になっており自己修正できない。

で、他人に指摘されて初めて「自分は小声だったのだ」と自覚できるが、再び小声になってしまう。

 

でもって上記が繰り返されると、次第に日常生活における歩行困難や転倒リスク増悪などにつながりかねない。

 

そこで、その誤った感覚情報を自分で修正できることを目的とした再教育プログラムがLAVT(LSVT LOUD・LSVT BIG)である。

 

この治療法をザックリと表現するなら「自分が考えている以上に大きな声を出す、大きく体を動かす、それらを繰り返し練習するという」指導を受ける点にある。

 

 

リー・シルバーマン療法(LSVT)のポイント・注意点

 

リー・シルバーマン療法(LSVT)を実施するにあたってのポイント・注意点は以下の通り。

 

  • とにかく大げさなくらい大きい動作・大きき声で行う

 

  • 腕や足を大きく伸ばすことに加えて、末端の手指までしっかり開いて行うことを意識する。

 

  • バランスが不安定な場合は、固定された手すりなどを持って行うか、座位での運動でも良い(手すりなしで、縮こまった小さい運動を続けるのは効果的ではない⇒運動の量より質を重要視する)。

 

  • (抗パーキンソン病薬が効いていない)オフの状態・体の歪みによって運動痛などが生じる場合は運動を控えるか、回数を減らす。

 

 

リー・シルバーマン療法(LSVT)の実際

 

前述したように、リー・シルバーマン療法(LSVT)は「LSVT BIG」と「LSVT LOUD」が存在するが、ここでは「LSVT BIG」を紹介していく。

 

「LSVT BIG」は以下のような計7つの運動によって構成される。

 

椅子に座って行う「2つ」の運動:

①床から天井の動作(8回)

②横への動作(左右各8回)

 

立って行う「5つ」のステップ運動:

③前方ステップ(左右各8回)

④側方ステップ(左右各8回)

⑤後方ステップ(左右各8回)

⑥前後方向の揺れ動きとリーチ動作(左右各10回)

⑦側方への揺れ動きとリーチ動作(左右交互に10回)

 

 

どの運動も、指先まで集中し、限界近くまで体を動かすことが大切となる。

もちろん痛みの出現しない範囲内であるが、すべて自身で動かせる範囲内での運動(つまりセラピストによるストレッチ、オーバープレッシャーなどは加えない)ので、疼痛誘発リスクは少ない(もともと、疼痛もちでない限りは)。

 

ここに記載されている動き・決められた回数を行うのは結構ハードだが、運動自体は難しいものではないのは観覧してもらえばわかると思う。

 

前述した『LSVTを実施するにあたってのポイント・注意点』も参照しながら実施してみてほしい

 

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運動① 床から天井の動作 (8回)

 

 

手順

  1. 足を開いて、少し浅めの椅子に座る
  2. 体を少し前傾させて両腕を前に押すように伸ばす。
  3. そのまま、かがんで手のひらを床にしっかりつける。
  4. 体を起こし、腕をしっかり上に伸ばす。
  5. 腕を開きながら下げて胸を張り、その姿勢で10数えた後、手を太ももへ戻す(①の状態に戻す)。

 

上記を、繰り返し8回実施する(体験してもらえばわかるが、8回はけっこう大変)。

 

 

運動② 横への動作 (左右各8回)

 

 

手順

  1. 足を開いて片方の腕を横に伸ばす(イラストでは左手を伸ばす)
  2. 腕を反対側(右側)へすくうように大きく伸ばし、体をねじって、足(イラストでは左足)もしっかり伸ばした状態で10秒数えた後、元の位置に戻す。

※猫背にならないよう意識する。

 

上記を、左右各8回繰り返す(実施してもらうとわかるが、体幹回旋筋の様々な箇所が収縮・ストレッチングされているのを実感できると思う。)

 

 

運動③ 前方ステップ (左右各8回)

 

 

手順

  1. まっすぐに姿勢よく立つ
  2. 回数を声に出しながら、膝(イラストでは右膝)を高く上げて片方の足を一歩前に踏み出し、どう維持に両腕を大きく開いて胸を張った状態で一呼吸おく。
  3. 膝(イラストでは右膝)を高く上げながら足をもとの位置に戻す。

 

上記を、左右各8回繰り返す。

 

 

運動④ 側方ステップ (左右各8回)

 

 

手順

  1. まっすぐ姿勢よく立つ
  2. 回数を声に出しながら、膝(イラストでは右膝)を高く上げて片方の足を一歩横へ踏み出し、同時に両腕も前後に大きく開いた状態で一呼吸おく。
  3. 膝(イラストでは右膝)を高く上げてながら足をもとの位置に戻す。

 

上記を、左右各8回繰り返す

 

 

運動⑤ 後方ステップ (左右各8回)

 

 

手順

  1. 両腕を前に伸ばした状態で立つ
  2. 回数を声に出しながら片方(イラストでは左足)の足を一方後ろに踏み出して体を前傾させ、腕も後ろに引いた状態で一呼吸おく。
  3. 足(イラストでは左足)を高く上げながらもとの位置に戻す。

 

上記を左右各8回繰り返す。

 

 

運動⑥ 前後方向の揺れ動きとリーチ動作 (左右各10回)

 

 

手順

  1. 一方の足を前に出して、前後に開く。後ろに引いた足に体重を乗せて片腕を上げた状態から始める。
  2. 回数を声に出しながら、前方に出した足に体重を映しながら、腕を上まで大きく振る。この前後の揺れ(体重移動)をテンポよく行う。

※通常は体重を乗せた足側の腕を上に振り上げるが、左右逆でも構わない。

 

上記を、左右各10回繰り返す。

 

※この運動に関しては、右イラスト(椅子を用いら矢状面からの運動)を参考にした方が運動を理解しやすいと思う。

 

 

運動⑦ 側方への揺れ動きとリーチ動作 (左右交互に10回)

 

 

手順

  1. 足を左右に開いた状態で立つ。
  2. 回数を声に出しながら、腕を横に大きく開いて体をねじる。
  3. 元に戻して、一呼吸おき、反対方向への動作を繰り返す。

 

上記を、左右交互に10回実施する。

 

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動画でLSVT BIGを理解しよう

 

ここまで解説してきたLSVT BIGの一連の運動についての動画も掲載されているので添付しておく。

 

パーキンソン病の重症度にもよると思うが、絶対に覚えておいて損は無い運動だと思うので是非観覧してみてほしい。

 

※イラストの内容と同様なものが画像で見れる

 

で、前述した各運動のポイントを参考にして自身でもやってみて「こういう点が、パーキンソン病に有効な要素なのだろうな」などと考えてみると、そこから新たな発展も可能になるかもしれない。

 

 

 

LSVT BIGの理論(なぜ効果的なのか?)を知りたい方はこちら

 

LSVT BIGの理論(なぜ効果的なのか?)を知りたい方は以下の動画を参照。

 

※英語+通訳(英語+日本語スライド)による動画になります。

 

 

 

LSVT BIGの講習会

 

LSVT BIGを指導するにあたって、研修会や・認定試験も以下のサイトにて開催されているので、本格的に学びたい方は観覧してみてほしい。

 

https://pdcafe.jimdo.com

 

 

~追記~

 

2020年に講習会へ参加してきたので、興味がある方は一緒に観覧してみてほしい。

 

⇒『LSVT BIG認定講習会へ参加した!!コンセプトの概要・方法も紹介

 

 

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