この記事では、スパイロメトリー(呼吸能力を調べる機器)で分かる『肺活量』について記載していく。
肺活量について
『肺活量』とは「肺の換気能力を示す数値」を指す。
健康な成人の場合、1回に約400~500mlの空気を出し入れしているが、これを『1回呼吸気量(一回換気量)』と呼ぶ。
さらに、普通に空気を吸ったとき(安静吸気位)から、更に出来るだけ空気を吸ったとき(最大吸気位)までの吸気量を『予備吸気量』と呼ぶ(予備吸気量は約500~2000ml程度)。
一方で、普通に空気を吐いたとき(安静時呼気位)から、更に出来るだけ空気を吐いたとき(最大呼気位)までの呼気量を『予備呼気量』と呼ぶ(これも約500~2000ml程度)。
肺活量(肺気量)とは、前述した『1回呼吸気量(1回換気量)』『予備吸気量』『予備呼気量』の三つを合わせた量で表される。
※『残気量』とは「最大呼気位において肺に残存する肺気量」を指す。
※上記のイラストの様に、
『全肺気量(total lung capacity)=肺活量(肺気量:capacity)+残気量(residual volume)』ということになる。
※年齢や性別、身長、体格、姿勢などによって肺活量は異なる。
臨床との接点
予備吸気量
予備吸気量は①呼吸筋力②コンプライアンスによって決まる。
※呼吸筋力低下では予備吸気量が減少する。
予備呼気量
予備呼気量は①呼吸筋力②コンプライアンス③気道抵抗④呼吸器の形態によって決まる。
※予備呼気量は横隔膜の移動(収縮)よって左右される。
※臥位で減少し、肥満でも減少する。
残気量
残気量は①呼吸筋力②コンプライアンス③気道抵抗によって決まる。
残気量の増加は閉塞性肺疾患、呼吸筋力低下にみられる。
残気率(残気量/全肺気量(%))は全肺気量に対する残量の比であり、閉塞性肺疾患で増加し,加齢によっても増加する。
機能的残気量
機能的残気量は①コンプライァンス②気道抵抗によって決まる。
機能的残気量の増加は閉塞性肺疾患でみられ、低下は拘束性肺疾患、または加齢によるも
のである。
肺活量
肺活量は①呼吸筋力②コンプライアンス③気道抵抗④姿勢(立位>坐位>臥位)に左右
され、年齢・性別・身長に相関する。
ちなみに、健常人では、『肺活量(VC)』と『努力性肺活量(FVC:最大の努力で、早く呼出したときの空気量のこと)』は=(イコール)であるが、閉塞性換気障害があるとVC>FVCとなる。
この記事では「コンプライアンス」という用語を連呼してきたが、コンプライアンスの意味は以下の通り。
肺コンプライアンスとは肺の伸張率(compliance)のこと。
肺組織は伸縮性があり、吸気の際に呼吸筋によりバネのように引き伸ばされるが、呼気時には元の形に戻る。このような肺の「伸びやすさ」を表す指標として用いられる。
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