この記事では、「骨」や「血中カルシウム濃度」に影響を与えるホルモン・ビタミンについて解説している。
関連するホルモン・ビタミンは以下の通り。
- 副甲状腺ホルモン
- カルシトニン
- 成長ホルモン
- 甲状腺ホルモン
- エストロゲン(女性ホルモン)
- アンドロゲン(男性ホルモン)
- 副腎糖質コルチコイド
- ビタミンD
ではでは、これらについて解説してく。
副甲状腺ホルモン
副甲状腺ホルモンは「パラソルモン(PTH)」「上皮小体ホルモン」と同義である。
副甲状腺ホルモンの役割は以下の2つになる。
- 骨に直接作用し骨破壊を行う(⇒血中Ca濃度上昇)
- 腎臓に作用しビタミンD活性化促進(⇒血中Ca濃度上昇)
- 腎臓に作用してカルシウム再吸収促・尿中への排泄抑制(⇒血中Ca濃度上昇)
上記により「血中のカルシウム濃度を一定に保つ働き」を副甲状腺ホルモンは担っている。
特に骨密度に関しては①が重要で、この作用により骨密度は低下する。
カルシトニン
カルシトニンは甲状腺傍濾胞から分泌されるホルモンである。
カルシトニンの作用は以下の通り。
上記の作用により以下が生じる。
- 骨新生(↑↑)
- 骨破壊(↓↓)
- 血中Ca(↓↓)
カルシトニンは骨粗鬆症の予防・改善を目的に、治療として用いられることもある。
成長ホルモン
成長ホルモンは脳下垂体前葉より分泌される。
中枢神経と眼以外の全ての組織の成長を促す。
※骨の成長も促す。
骨では長管骨の成長軟骨に対して、増殖・肥大を促進する。
「成長ホルモンと骨成長」については以下の記事も参考にしてみて欲しい。
⇒『【悲報】成人になってからサプリメントを飲んでも背は伸びない話』
甲状腺ホルモン
甲状腺ホルモンは代謝を亢進させる作用がある。
そして、通常は骨破壊と骨新生では、骨破壊のほうが優位なので、甲状腺機能が亢進すると骨粗鬆症リスクが高まってしまう。
関連記事
⇒『骨新生と骨吸収の違いとは! |+バセドウ病で骨粗鬆症になる理由』
エストロゲン(女性ホルモンの一つ)
エストロゲンは以下の作用を持っている。
サイトカイン(骨破壊↑・骨新生↓の役割を持っている)の抑制
従ってエストロゲンの分泌が減ると骨密度が低下する。
女性では閉経後にエストロゲンが0になってしまい、これが骨密度低下を招いてしまう。
※閉経は40~50代で起こるとされており、そこから骨密度が急激に下がる。
ただし、上記イラストを見てもらうと分かるように、閉経で骨密度が急低下した後に、低下度合いがなだらかになる(男性と平行な下降を示す)。
そして「なぜ閉経後の骨密度急低下が、途中でなだらかになるのか」の理由は、まだハッキリとは分かっていない。
アンドロゲン(男性ホルモンの一つ)
アンドロゲンの作用は以下の通り。
蛋白同化(合成)作用
骨も膠原繊維(コラーゲン)やプロテオグリカンなどの蛋白質成分を含んでいるので、蛋白生成が促進されると、骨密度が高くなる。
副腎糖質コルチコイド
副腎糖質コルチコイドの作用は以下の通り
蛋白異化(分解)作用
つまりは、前述したアンドロゲンと逆の機序(コラーゲン↓・プロテオグリカン↓)により骨密度が低下する。
副腎糖質コルチコイドは「ステロイドホルモン」とも呼ばれ、消炎鎮痛効果も有しているため、積極的に活用される場合がある。
ただし、ステロイドの副作用の一つとして骨粗鬆症がある点も覚えておこう。
関連記事
⇒『ステロイド薬は諸刃の剣!』
ビタミンD
ビタミンDは以下により補給できる。
- 食事(食事により十二指腸から吸収。野菜にはほとんど入っておらず、サーモンなどの魚で吸収しやすい)
- 皮膚からの紫外線の作用により合成
これらが活性化ビタミンDとなり、以下の作用により血中Ca濃度を上昇させる。
- 腸管からのCa吸収促進
- 骨破壊
上記は骨に対して相反する作用となる。
ただし、「②の作用」は骨に対してネガティブ(骨密度を低下させる作用)だが、「①の作用(骨密度を上昇させる)」のほうが優位なため、ビタミンD摂取は骨密度に対してポジティブに働く。
従って「カルシウムを摂取するだけでなく、(カルシウムの吸収を促進するためにビタミンDも合わせて摂取」は正しい。
しかし高齢者は、どうしても食欲が低下して、ビタミンD不足に陥りやすい。
なので、日向ぼっこで多少でも紫外線を浴びることは重要となる。
最近では紫外線のネガティブな側面がクローズアップされているため、若者でも「長袖+日焼け止め」で完全防備している人も見かけるが、日に数分でも良いので肌に日光を浴びてみよう(あるいは紫外線がどうしても嫌なら、サプリメントを推奨している人もいるので試してみても良いかもしれない)。
ちなみに、メンタリストDaigo氏はビタミンDをサプリメントで摂取しているらしい。
以下の書籍でもビタミンDの摂取を推奨している。
どうしてみ紫外線を浴びたくないならサプリメントでの摂取も一考に値する(かもしれない)。
以下は「エストロゲン(ER)」「カルシトニン(CT)」「パラソルモン(PTH)」「ビタミンD(VD3)」の作用を、血中カルシウム濃度を中心に図示したイラストになる。
ここまでの解説をイメージするのに参考になると思う。