この記事では、基本的肢位解剖学的肢位良肢位機能的肢位・・などについて解説していく。

 

目次

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肢位(position)とは

 

肢位とは以下を指す。

 

身体各部の位置と方向を表現する総称。
 

関節をはさむ身体部位の相対的位置を表す「構え」に類似した用い方をする。

重力方向に対する位置を表す「体位」や、「体位」と「構え」の総称である「姿勢」と混同した使用がなされる場合も多い。

 

肢位としては以下などが有名だ。

  • 関節可動域の測定に使用される肢位
  • 関節拘縮の予防などで使用される肢位

 

今回は、これらの肢位について用語整理していく。

 

基本肢位(基本的立位姿勢+解剖学的立位姿勢)

 

まずは『基本肢位(fundamental position)』について解説していく。

 

基本肢位は基本的立位姿勢解剖学的立位姿勢がある。

 

基本的立位姿勢

基本的立位姿勢は、ザックリ表現すると「気をつけの直立姿勢」を指す。

具体的には「立位で上肢を体側に下垂させ、手掌を体側に向けて、足は平行にし、ややつま先を開いた姿勢」である。

 

解剖学的立位姿勢

解剖学的立位姿勢は、ザックリ表現すると「気をつけの直立姿勢」にて「手のひらを前に向けた姿勢」を指す。

「下肢を基本的立位姿勢と同じにし、上肢を前腕回外位にして、手掌を前方に向けた姿勢」であり、イラストにすると以下になる。

 

ただし、各肢位は立位のみならず臥位なケースも存在するため、「○○立位姿勢」という表現には違和感がある。

 

でもって、以下のように分けている文献もあり、個人的にはこちらのほうが好みだ。

 

・基本的立位姿勢⇒「(機能的)基本肢位

・解剖学的立位姿勢⇒「解剖学的肢位

 

上記に分類した場合、それぞれが単独した用語として存在する。

 

※ただし、いずれにしても定義は「立位姿勢」である。

 

ここから先は、記述を「機能的基本肢位」と「解剖学的肢位」に統一して記載していく。

 

(機能的)基本肢位

 

(機能的)基本肢位は関節可動域測定時の基準となる肢位である。

 

肩関節屈曲・伸展、足関節底屈・背屈、体幹側屈・回旋などなど、関節可動域測定は(機能的)基本肢位を基準に考えていく。

 

関節可動域測定ではneutral zero methodを採用しており、neutral zero starting positionである基本肢位を基準に測定する。

 

ただし以下の例外もあり、これらは「基本肢位とは異なる肢位」で測定する。

  • 肩関節水平屈曲・伸展(肩関節外転90°の肢位)
  • 肩関節外旋・内旋(肩関節外転0°で肘関節90°屈曲位)
  • 前腕の回外・回内(手掌面が矢状面にある肢位)
  • 股関節外旋・内旋(股関節屈曲90°で膝関節屈曲90°の肢位)

 

関連記事

⇒『関節可動域テストを網羅

 

 

解剖学的肢位の目的

 

解剖学的肢位は、解剖学において人体を記述する際に、位置や方向の基本となる姿勢である。

解剖学の教本では解剖学的肢位をベースに表現されている。

 

 

良肢位

 

基本肢位と同じくらい有名な肢位に『良肢位(opimal position)』がある。

 

良肢位は『機能的肢位(functional position)』と同義である。

 

良肢位(機能的肢位)とは

 

良肢位とは以下を指す。

 

関節に拘縮や強直が生じ可動域制限が出現したとしても、日常生活動作を行ううえで機能的に最も支障が少ない肢位。あるいは、できる限り拘縮を作らないような予防的な肢位。

 

骨折や関節の疾患および外傷などの治療では、良肢位で固定される。

 

手関節と手指ではポールを握るような肢位が物の把持動作に便利であり、膝・股関節では軽度屈曲位が歩行や椅子座位に都合が良い。

 

 

各関節の良肢位

 

各関節の良肢位は以下の通り。

 

上肢

  • 肩関節外転20~30度、屈曲・回旋は手が顔に届く角度。
  • 肘関節屈曲90度
  • 前腕回内・回外中間位
  • 手関節背屈20度
  • 手指軽度屈曲
  • 母指対立位

 

下肢

  • 股関節では屈曲20~30度・外旋0~10度・外転10度
  • 膝関節屈曲10~20度
  • 足関節背屈・底屈0度

 

ただし上記は、その人の生活や他の関節の状態によって多少異なる。

 

ちなみに、脳卒中・脊髄損傷・切断術後などの安静期間中における拘縮を予防するための姿勢も良肢位と呼ばれ、体位変換の際に十分考慮する。

 

機能的肢位が誕生した歴史

 

機能的肢位は「骨折などによる関節固定後にもっとも拘縮が生じにくい関節角度」を考えた末に導きだされた肢位である。

 

骨折などにより固定した後は、軟部組織が短縮をきたしやすいが、良肢位で固定することで、以前の関節機能を早期に取り戻しやすいという訳だ。

 

そして良肢位は、後に「(他の肢位に比べ)痛みも生じにくい肢位」ということも判明している。

 

 

色んな「肢位」があるよ

 

ここでは基本肢位・良肢位について解説してきたが、その他にも色々な肢位があり、例えば以下などが挙げられる。

 

開始肢位 starting position

出発肢位と同義。

関節可動域テスト筋力テスト片麻痺機能テストなどの評価時に運動の出発となる基準の肢位。

 

安静位resting position

特に努力をしていないのに、筋肉や靭帯の張力と重力とのバランスのつりあっている状態の姿勢・肢位。

 

関節弛緩肢位(open packed position)

関節を構成する関節包や靭帯が最大に弛緩している肢位。

※前述した「安静肢位」に関節弛緩肢位は含まれる。

※関節固定肢位の対語。

関節拘縮や痛みのある関節への治療を施すのに、この肢位を利用する場合が多い。

関節副運動テスト』もこの肢位が基本となる。

※学派によって様々な呼び方がある。

関連記事⇒『しまりの肢位(CPP)と安静肢位(LPP)を解説

 

禁忌肢位

人工骨頭置換術後の禁忌肢位が有名である。

 

ゼロ肢位(zero position)

肩関節の安定肢位で屈曲155°・回旋中間位・水平屈曲30°の肢位。

関節の回旋・滑動が最小になる肢位。

この肢位は臨床的にも重要であり、上腕骨近位端骨折などの術後固定肢位として利用されている。

関連記事⇒『スキャプラプレーンとゼロポジションを解説

 

中間位neutralposition

屈曲・伸展、回内・回外など、対立する姿勢や肢位の中間の姿勢・肢位。

概念的には「機能的基本肢位」と近いと思う。

 

ファウラー位fowler position

背臥位から上体を45°挙上させ、股・膝関節を軽度屈曲させた肢位。

腹部臓器が下るので横隔膜運動が容易になる。

 

 

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